様々なアプローチは,全部で12種類が出題されています。
そのうち,最も出題頻度が高いのは,問題解決アプローチと課題中心アプローチの11回です。
ターナーが著した『ソーシャルワーク・トリートメント』には,29種類が示されていますが,国試では12種類しか出題されていません。
12種類すべてしっかり覚えておきたいですが,最低でも,問題解決アプローチと課題中心アプローチは完璧にしておきたいところです。
課題中心アプローチは,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチの影響を受けて成立した折衷アプローチです。
そのため,それぞれの基礎理論の上に成り立っています。
具体的に言うと
心理社会的アプローチ → 精神分析理論
問題解決アプローチ → 役割理論,コミュニケーション理論
行動変容アプローチ → 学習理論
課題中心アプローチの重要ポイントは,短期処遇であることです。
クライエントとワーカーが共同で,課題を明確にして,達成可能な目標を設定して,期限を定めて課題解決に向けて取り組んでいきます。
これだけ押さえておけば,課題中心アプローチに関する問題はほとんどクリアできます。
それでは今日の問題です。
第25回・問題102 課題中心アプローチに関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。
2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。
3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。
4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。
5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。
「魔の第25回国試」の問題ですが,課題中心アプローチの基本を押さえることができるとてもよい出題です。
ただし,注意しなければならないのは,正解を2つ選ぶ問題である点です。
正解は,選択肢1と5です。
1 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。
5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。
課題中心アプローチは,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチの折衷アプローチですが,これらと違う点は,短期処遇である点です。
心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどは,時間がかかるのです。
それではほかの選択肢も確認しましょう。
2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。
課題中心アプローチは,ワーカーとクライエントによって,明らかにした問題(課題)をターゲットにします。
クライエントの気付きがないと課題を設定できません。
3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。
様々なアプローチを折衷したというのは正しいですが,基礎理論となっているのは,精神分析理論,役割理論,コミュニケーション理論,学習理論などです。
システム理論が影響を与えたのは,ソーシャルワークの統合化,そしてエコロジカルアプローチなどです。しかし,システム理論は影響を与えているだけで,システム理論が基礎理論と言えるものはありません。
4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。
問題の原因の除去を援助の目標とするのは医学モデルです。
<今日の一言>
課題中心アプローチは,効果測定することが容易です。
なぜなら,達成可能な目標を期限を決めて設定するからです。
例えば,勉強が進まないという課題があれば,●日までに「相談援助の理論と方法」を一通り終えるという目標を設定します。
●日になったら,相談援助のの理論と方法を一通り終えることができたか否かを評価します。
これが課題中心アプローチ的勉強法だと言えるでしょう。
最新の記事
障害者総合支援法における相談支援
今日のテーマは,「障害者総合支援法における相談支援」です。 同法に規定される相談支援機関の中心は,基幹相談支援センターです。 〈基幹相談支援センターの業務〉 ・総合的・専門的な相談の実施 ・地域の相談支援体制強化の取組 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
診断主義は,1920年代に登場して,現在は,心理社会的アプローチに発展しています。 機能主義は,機能主義の批判的な立場で,1930年代に登場して,現在,機能的アプローチに発展しています。 それでは,今日の問題です。 第32回・問題101 ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
模擬試験を受験するとその場で解答をもらえることが多いので,すぐ自己採点する人も多いことと思います。 しかし,ここで気を付けなければならないのは,模擬試験は,実際の国家試験よりも点数が取りにくい傾向にあることです。 そこを押さえておかないと「あれだけ勉強したのに点数が取れな...
-
社会保障制度審議会は,かつて内閣総理大臣の諮問機関として,社会保障制度を審議していたもので,現在は廃止されています。 国家試験に出題されている同審議会の勧告は,1950年勧告,1962年勧告,1995年勧告の3つです。 〈1950年勧告〉 1950年勧告は,社会保障の範囲と方法を...