今回は,フェミニストアプローチを取り上げます。
フェミニストアプローチ
女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指した援助法。
簡単に言えば,エンパワメントアプローチの女性版です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題100 相談援助のアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 フェミニストアプローチは,女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。
2 解決志向アプローチは,ソーシャルワークを問題解決の過程としてとらえ,クライエント自らが問題を解決することを目指す。
3 行動変容アプローチは,役割理論を導入したもので,条件反射の消去あるいは強化により,特定の問題行動の変容を図る。
4 課題中心アプローチは,短期間の援助を目指したもので,他のソーシャルワークアプローチの影響を受けていない。
5 心理社会的アプローチは,精神分析理論を導入したもので,人は意志を持っていると考え,意志の力を活用した援助を行う。
国試は,
少しずつ重なっていて,少しずつ違う
これを実感する問題です。
勉強不足の人にとっては,かなり難しいものだと思います。
知識なしで,消去できる選択肢は1つしかないからです。
さて,この問題の正解は,選択肢1です。
1 フェミニストアプローチは,女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。
フェミニストアプローチは,エンパワメントアプローチの女性版だと押さえると良いでしょう。
それでは,他の選択肢も見てみましょう。
2 解決志向アプローチは,ソーシャルワークを問題解決の過程としてとらえ,クライエント自らが問題を解決することを目指す。
これは,問題解決アプローチのことを述べたものです。
3 行動変容アプローチは,役割理論を導入したもので,条件反射の消去あるいは強化により,特定の問題行動の変容を図る。
行動変容アプローチは,学習理論をソーシャルワーク実践に導入したものです。
役割理論の影響を受けているのは,問題解決アプローチです。
4 課題中心アプローチは,短期間の援助を目指したもので,他のソーシャルワークアプローチの影響を受けていない。
課題中心アプローチは,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて成立しています。
5 心理社会的アプローチは,精神分析理論を導入したもので,人は意志を持っていると考え,意志の力を活用した援助を行う。
心理社会的アプローチは,精神分析理論をソーシャルワーク実践に導入したものであるのは正しいですが,意志の力を活用した援助を行うのは機能的アプローチです。
<今日の問題>
今日の問題は,フェミニストアプローチをしっかり押さえていれば正解できますが,そうでなければかなり難易度が高いものです。
この問題は,第22回,第25回とつながっていることに気づきましたか?
第22回では,正解はエンパワメントアプローチで,間違いの中の一つに実存主義アプローチが出題されています。
第25回では,正解は実存主義アプローチで,間違いの中の一つにフェミニストアプローチが出題されています。
第27回では,正解はフェミニストアプローチでした。
第27回で初めて出題されたものはありません。
第31回は,どのように出題されたでしょうか?
答えは次回にわかりますが,ゼロから出題しているわけではなく,多くの問題は下敷きになるものがあります。
ただし,同じ表現で出題されないので,丸暗記はやめてください。
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