行動変容アプローチは,学習理論に基づいたものです。
学習理論は「心理学理論と心理的支援」で詳しく学びますが,レスポンデント条件づけ,オペラント条件づけ,試行錯誤学習,洞察学習,観察学習など,様々な理論があります。
これらの学習理論を活用して,クライエントの行動変容を図るのが行動変容アプローチということになります。
行動変容アプローチを活用したものには「社会生活技能訓練(SST)」がありますが,SSTは観察学習を応用したものです。
それでは今日の問題です。
第28回・問題101 行動変容アプローチに最も大きな影響を及ぼした理論として,正しいものを1つ選びなさい。
1 エリクソン(Erikson,E.)の心理社会的発達理論
2 フロイト(Freud,S.)の精神分析理論
3 スキナー(Skinner,B.)の学習理論
4 ホワイト(White,M.)の物語理論
5 ゴフマン(Goffman,E.)の役割理論
勉強が足りない人にとっては,「ナニコレ?」と思う問題でしょう。
しっかり勉強した人は,すぐ答えがわかることでしょう。
正解は,選択肢3
3 スキナー(Skinner,B.)の学習理論
スキナーが提唱した学習理論は「オペラント条件づけ」です。
オペラント条件づけとレスポンデント条件づけの違いは,レスポンデント条件づけは,刺激がそのまま反応に変わるのに対して,オペラント条件づけは,自発的な行動に賞罰が伴い,行動が変わることです。
心理学理論と心理的支援では,何度も出題されているのでしっかり押さえておきたいです。
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
1 エリクソン(Erikson,E.)の心理社会的発達理論
心理社会的発達理論が大きな影響を及ぼしたのは,危機介入アプローチです。
危機には,「発達における危機」と「状況における危機」があります。
「危機」というと自然災害などの「状況における危機」のイメージが強いですが,もう一つの危機として発達課題に対する「発達における危機」があるのを覚えておきましょう。
2 フロイト(Freud,S.)の精神分析理論
精神分析理論が大きな影響を及ぼしたのは,心理社会的アプローチです。
4 ホワイト(White,M.)の物語理論
物語理論が大きな影響を及ぼしたのは,ナラティブアプローチです。
クライエントの語りを通して,新しい意味づけをしていきます。
状況は変わらなくても,クライエントのとらえ方が変わることで,問題から決別できるようにかかわります。
5 ゴフマン(Goffman,E.)の役割理論
役割理論が大きな影響を及ぼしたのは,問題解決アプローチです。
クライエントが,問題解決者としての役割を動機づけられていることが問題解決アプローチを適用する要件となります。
<今日の一言>
今日の問題でわかるように,様々なアプローチで問われるポイントの一つとして,基礎理論があります。
それらを整理しておくことが必須です。
アプローチ名
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影響を与えた主な理論など
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・心理社会的アプローチ
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精神分析理論
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・機能的アプローチ
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意志心理学(自我心理学の一派)
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・問題解決アプローチ
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役割理論,コミュニケーション理論
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・課題中心アプローチ
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精神分析理論,役割理論,学習理論
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・危機介入アプローチ
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発達理論,危機理論
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・行動変容アプローチ
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学習理論
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・エンパワメントアプローチ
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ソーシャルアクション
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・ナラティブアプローチ
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物語理論
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・解決志向アプローチ
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短期療法(ブリーフセラピー)
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・フェミニストアプローチ
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女性主義(フェミニズム)
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・実存主義アプローチ
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実存主義
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・エコロジカルアプローチ
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システム理論
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一応,12種類を挙げてみましたが,エンパワメントアプローチ,フェミニストアプローチ,実存主義アプローチ,エコロジカルアプローチは基礎理論について問われたことはありません。
赤字で示したものはしっかり押さえましょう。