今回は,ナラティブアプローチを紹介したいと思います。
ナラティブアプローチは,クライエントが語るストーリーを重視して,新たな意味の世界を創り出すことを援助するものです。
伝統的なアプローチ=モダニズム(モダン)系アプローチを批判して登場したという背景があります。
それでは今日の問題です。
第23回・問題94 ナラティブ・アプローチの成立の背景に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 伝統的な科学主義・実証主義に対する批判として誕生した経緯があり,主観性と実存性を重視し,現実は人間関係や社会の産物であり,それを人々は言語によって共有しているとする認識論の立場に立つ考え方である。
2 診断主義アプローチへの批判として誕生した経緯があり,自我心理学から強い影響を受けている。
3 アメリカにおいて人種差別問題や貧富の差が生じた時代に誕生し,主体的な存在としての人間を強調し,苦悩を必須のものとする考え方に理論的基盤を持つ。
4 精神分析の理論から強い影響を受けたソーシャルワークへの批判から生まれ,学習理論を基盤とした方法である。
5 ライフモデルから影響を受け,社会相互作用の過程で生じる力に着目し,差別と抑圧という力動を強調する。
ナラティブアプローチがわかっていないとまったく見当もつかない問題でしょう。
これだけ難しい言葉が並んでいると読むのも嫌になる人がいると思います。
国試問題の文章はすべての意味が正確にわからなくてもよいです。
わからないと解けないと思うと,迷いの森に入り込むので注意が必要です。
さて,この問題の正解は,選択肢1です。
この問題のつくり方があまり良くないと思うのは,この選択肢は他の選択肢に比べて長いことです。
試験委員が問題を作る時に力が入りすぎるのか,正解の選択肢は他よりも長いものがあります。
そういったものは答えのヒントになるので,近年は選択肢の文字数をそろえる傾向がありましたが,第31回国試ではまた文字数にばらつきが出てきています。覚えておくと良いでしょう。
それではほかの選択肢も確認しましょう。
2 診断主義アプローチへの批判として誕生した経緯があり,自我心理学から強い影響を受けている。
診断主義アプローチ(診断主義派ケースワーク)への批判として誕生したのは「機能主義派ケースワーク」です。
3 アメリカにおいて人種差別問題や貧富の差が生じた時代に誕生し,主体的な存在としての人間を強調し,苦悩を必須のものとする考え方に理論的基盤を持つ。
これは何を意味しているのかわかりにくいですが,エンパワメントアプローチだと言えます。
「苦悩」とは,抑圧された状況を意味していると考えられるからです。
4 精神分析の理論から強い影響を受けたソーシャルワークへの批判から生まれ,学習理論を基盤とした方法である。
学習理論と言えば,行動変容アプローチです。
5 ライフモデルから影響を受け,社会相互作用の過程で生じる力に着目し,差別と抑圧という力動を強調する。
これは何を意味しているのかわかりにくいですが,エンパワメントアプローチだと言えます。
差別と抑圧というエンパワメントアプローチにつながるものが含まれているからです。
<今日の一言>
今の国試ではここまで難解な問題は少ないと思いますが,難解な問題でも,答えがわかるような仕掛けがあります。
真面目にすべてを理解しようと思うと,せっかくの仕掛けも見えなくなってしまうので,要注意です。
点数が伸びない人の傾向として,不適切な深読みがあります。
そのような傾向に気がついている人への注意点としては,問題の作られ方を注意してみることをお勧めします。深読みする必要はないことに気づくことでしょう。
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