多くの受験生は,人名と歴史が苦手です。
国試は,上位30%が合格できる試験です。
多くの人が苦手だと思っている領域が得意になると,ほかの受験生に差をつけられることになるのは間違いありません。
今日の問題は,人名問題のように見えて,人名が答えになっていない問題です。
それでは今日の問題です。
第30回・問題100 ソーシャルワーク実践理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 グループワークを体系化したのは,リッチモンド(Richmond,M)である。
2 治療モデルを確立したのは,タフト(Taft,J)とロビンソン(Robinson,V)である。
3 生活モデルを提唱したのは,ピンカス(Pincus,A)とミナハン(Minahan,A)である。
4 ジェネラリスト・ソーシャルワークは,ソーシャルワーク理論の統合化により発展した。
5 ナラティブ・アプローチは,専門性に基づく支援者の知識に着目した。
人名として,リッチモンド,タフトとロビンソン,ピンカスとミナハンが提示されている問題です。
人名が苦手だと思っている人にとっては,嫌な感じがする問題だと思います。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 ジェネラリスト・ソーシャルワークは,ソーシャルワーク理論の統合化により発展した。
ソーシャルワークの統合化は「相談援助の基盤と専門職」で学びました。
第29回・問題94 アメリカにおけるソーシャルワークの統合化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。
2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。
3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。
4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。
5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。
この問題の正解は選択肢4です。
「相談援助の基盤と専門職」は理論的なものが多いので苦手だと思っている人も多いですが,「相談援助の理論と方法」よりもむしろ重要なものを学ぶ科目です。
得意になるのは難しくても,苦手意識は払しょくしたいです。
それでは,ほかの選択肢も確認してみましょう。
1 グループワークを体系化したのは,リッチモンド(Richmond,M)である。
リッチモンドは,ケースワークを体系化し,「ケースワークの母」と呼ばれました。
2 治療モデルを確立したのは,タフト(Taft,J)とロビンソン(Robinson,V)である。
タフトとロビンソンが確立したのは,機能的アプローチです。
治療モデルは,伝統的なソーシャルワークモデルです。発祥はリッチモンド,確立したのは,診断主義派ケースワークを提唱した,ハミルトン,トールです。
3 生活モデルを提唱したのは,ピンカス(Pincus,A)とミナハン(Minahan,A)である。
ピンカスとミナハンが提唱したのは,一般システム理論の下位概念である4つのシステムです。
5 ナラティブ・アプローチは,専門性に基づく支援者の知識に着目した。
ナラティブ・アプローチでは支援者は,クライエントに教えてもらう「無知」の立場をとるのが特徴です。
<今日の一言>
これで「様々なアプローチ」を終えますが,整理できましたか?
様々なアプローチは必ず出題されています。
正解できないのはあまりにもったいないです。
勉強方法には,様々なやり方があると思いますが,覚え方が不適切だと,まじめに勉強しても得点にはつながらないので注意が必要です。
国試では,決して深掘りもしませんし,応用力も必要な問題は出題されません。
得点するのに,応用力が必要だと思うのなら,それは覚え方自体が適切なものではないと言えるでしょう。
問われるポイントは,いつも同じだからです。
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