社会福祉士の国家試験の受験対策本は,多くの種類が発売されています。
かなり以前の話で恐縮ですが,その昔は今のように種類はなく,主だったものは,現存する「受験ワークブック」(中央法規出版)と現存しない「必携 社会福祉士」(筒井書房)の2種類でした。
「必携 社会福祉士」は,国家試験の出題スタイルの変化に対応することができず,迷走して,販売数が低迷し,最後には会社自体が倒産してしまいました。
主だった参考書が2つしかなかった時代に受験した人は,「受験ワークブック」をすすめると思います。
受験ワークブックは,老舗中の老舗なので,信頼感は高いと思います。
だからと言って,受験ワークブックが唯一無二のものではありません。
ある程度,ボリュームのあるものなら,どこのものでも十分だと思います。
あとは,覚えやすいかどうかです。
ボリュームの少ないものの方が良い
というアドバイスをする人もいますが,ボリュームの少ないものは,ほかのもので知識を補充しなければならないので,中心的に使う参考書としては向かないと言えます。
重要なのは,何を使って勉強するか,ではなく,どのように勉強するか,です。
おそらく,受験ワークブックは,今までも最も多くの受験生が使っているでしょう。
しかし,別の見方をすれば,「不合格になる人も最も多く生み出している」と言えます。
社会福祉士の国家試験に合格できるのは,わずか上位30%です。
なぜそのラインにこだわっているのかはわかりませんが,それ以上の人を合格させてくれないのが現実です。
このように書くととても難しい試験のように思うかもしれませんが,合格基準は6割程度とされているので,決して高い基準ではありません。
学校の成績で言えば,オール3のレベルです。オール5やオール4は必要とされません。
それにもかかわらず,約30%しか6割ラインを超えられないのは,勉強の仕方に理由があるように思います。
つまり「どのように勉強するか」です。
「暗記するのが苦手です」という人がいます。
そのために英単語を覚えたときのように単語帳を作って勉強する人もいるかもいるでしょう。
しかし,実際の国試では単語帳レベルの情報で通用するのはごくわずかな問題です。
法制度は,単語帳では対応するのは難しいです。
私たちがおすすめするのは,勉強の過程で気がついたことや感じたことを参考書のすきまにどんどん書き込むことです。
例えば,指揮監督についてです。
民生委員が指揮監督を受けるのは,都道府県知事です。
保護司が指揮監督を受けるのは,保護観察所の長です。
福祉事務所の長が指揮監督を受けるのは,設置者です。つまり都道府県福祉事務所なら,都道府県知事,市町村福祉事務所なら市町村長です。
福祉事務所の現業員が指揮監督を受けるのは,福祉事務所の長です。
これらの情報は,おそらく多くの参考書ではそれぞれに関連する科目に掲載されているはずです。
そのため,覚えにくいと思います。
このように並べてみると,何かの法則を感じませんか?
何でもよいのです。
そういったものを参考書に書き込んでいきます。
第32回・問題38 民生委員・児童委員についての法律上の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員は,市町村内の小学校区ごとに1名配置する。
2 主任児童委員は,児童虐待の早期発見と介入のため児童相談所に配属される。
3 民生委員協議会は,民生委員の職務上必要があるときに関係各庁に意見することができる。
4 民生委員は,職務上知り得た特定の要援護者個人の情報を広く地域住民と共有してもよい。
5 民生委員は,その職務に関して市町村長の指揮監督を受ける。
正解は,選択肢3です。
第32回・問題67 福祉事務所の組織及び設置に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉事務所の現業を行う所員(現業員)の定数については,生活保護法で定めている。
2 市が設置する福祉事務所の社会福祉主事は,生活保護法の施行について,市長の事務の執行を補助する。
3 福祉事務所の指導監督を行う所員(査察指導員),現業を行う所員(現業員),事務を行う所員はいずれも社会福祉主事でなければならない。
4 福祉事務所の長は,厚生労働大臣の指揮監督を受けて,所務を掌理する。
5 福祉事務所に置かれている社会福祉主事は,25歳以上の者でなければならない。
正解は,選択肢2です。
第32回・問題149 保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護司の職務に,犯罪予防を図るための啓発及び宣伝の活動は含まれない。
2 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。
3 保護司は,検察官の指揮監督を受けて職務に当たる。
4 保護司は,保護観察対象者の居住先を訪問することは禁じられている。
5 保護司は,「平成30年版犯罪白書」(法務省)によると,40~49歳までの年齢層が最も多く,過半数を超えている。
正解は,選択肢2です。
これらの問題は決して難易度が高いものではありません。
しかし,あいまいに覚えていると,正解するのは難しいです。
あいまいになりがちな勉強法は,丸暗記です。
思考を動かしていないからです。
書いて覚えるというのも危険です。書いて覚えるのも書くことが目的になってしまって,思考を動かしていない恐れがあります。
<今日の一言>
先ほどの指揮監督についてですが,市町村福祉事務所の長以外は,市町村長の指揮監督を受ける者はいないことに気がつきましたか?
法則的に言えば,
市町村長の指揮監督を受けるのは,市町村長が設置した機関の長のみ
ということになります。これは都道府県も同様です。
ナンセンスなのは,「市町村福祉事務所の現業員は,市町村長から指揮監督を受ける」といったものです。組織を考えるとあり得ないことです。
同じように,
福祉事務所の長は,厚生労働大臣の指揮監督を受けて,所務を掌理する。
これも組織を考えるとあり得ないことです。
国家試験に合格に必要なのは,SDGsやニッポン一億総活躍プランなどを勉強することではありません。
本来確実に正解しなければならない問題に対応できる知識をきっちりつけることです。
考えながら覚えていくことは,面倒なことかもしれませんし,時間もかかることかもしれません。
しかし,本来勉強とはそういうものです。
これからの時期は,中古市場で,参考書などが出回ります。
国試合格には,必ずしも新しい参考書はいらないので,こういったものを購入することも一つの手です。
そこで浮いたお金を模擬試験をもう一つ多く受験することに使うなどもできるでしょう。
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