社会福祉士の勉強は,長く辛いものです。
決して簡単に取得できない資格だから,価値のあるものだと言えます。
国家試験は,19科目(18科目群),150問で実施されます。
科目数が多いので,1科目1点ずつアップするのと,1点ずつダウンするのでは,実に38点もの差が生まれます。
国家試験に合格できるだけの知識が足りないのは問題外ですが,知識を国家試験で得点できるものであることが求められます。
さて,今回は,パーソナリティ(人格)を例に出します。
パーソナリティと聞くと,理論には類型論と特性論があったことがすぐ頭に浮かぶでしょう。
類型論は,パーソナリティをタイプ分けするものです。
特性論は,パーソナリティはいくつかの特性の組み合わせによって,成り立っていると考えます。
それでは今日の問題です。
第32回・問題9 パーソナリティの理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。
2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。
3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。
5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。
外国人の名前を覚えるのが苦手な人にとっては冷や汗が出るような問題でしょう。
正解は,選択肢です。
2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。
しかし,この問題は決して簡単ではありません。
<理由その①> たった2文字の違い
1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。
「特性論」ではなく,「類型論」です。
たった2文字違いです。
<理由その②> 覚えにくいところを変えている
3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
2つに分けたところは合っていますが,「生物学的特性」と「個人的特性」ではなく,「共通特性」と「個人的特性」です。
実にいやらしい感じですね。
5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。
ビッグファイブの内容が変えられています。
正しくは,「外向性」「神経症傾向」「誠実性」「調和性」「開放性」です。
これもいやらしい感じですね。
<今日の一言>
問題を読む力
知識があることは大前提です。
今日の問題のパーソナリティで言えば,類型論と特性論の特徴を正しく押さえておくことでしょう。
そこを考えながら,問題を解いていくと,イージーミスは防ぐことができるでしょう。
最新の記事
消費者契約法
契約を取り消すことができる制度として,クーリング・オフ制度があります。 しかし,利用できるのは,訪問販売や電話に勧誘などによって契約したものに限られます。 消費者契約法は,以下のような場合に取り消すことができます。 出典:消費者庁「知っていますか? 消費者契約法―早わかり!消費...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
平成元年度の改正カリキュラムでは,当初はあったものの,平成19年度のカリキュラム改正でなくなったものがいくつか復活しています。 その1つがコミュニティワーク(地域援助技術)です。 地域共生社会の実現に求められる社会福祉士を養成するためには,コミュニティワークが必要だからでしょう。...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
ソーシャルワークにおけるネットワーキングとは,福祉課題を解決するために様々な機関,住民たちが連携することをいいます。 誰かが「それは良いことだ,やろう」と思っても,人を動かすのは,決して簡単なことではありません。 社会福祉士が連携の専門家だとしたら,ネットワーキングは,社会福祉士...
-
今回は,福祉ニードを取り上げたいと思います。 ニーズは,ニードの複数形ですが,明確な使い分けはなされていないようです。 どちらも同じ意味だととらえて良いでしょう。 ブラッドショーは,ニーズを以下のように類型化しています。 ...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...