(2020/03/20追記)
第32回国家試験の結果
ボーダーライン 88点(前回よりも1点ダウン)
合格率 29.3%(前回よりも0.6%ダウン)
合格率に関しては,第31回国家試験は,合格発表の後で不適切問題が発覚して,追加合格がありました。追加合格前のもともとの合格率は,28.9%でした。それと比べると0.4%アップです。
社会福祉振興・試験センターは,受験生の得点に関するデータは一切発表していません。
しかし,ここからここから推測することができることがあります。
これまで実施された国家試験で実質的に最も合格率が高かったのは,第20回の30.6%です。
(実質的というのは,実際には第15回の31.4%がありますが,この時も不適切問題で追加合格があり,それがなかったもともとの合格率は,29.1%です)
第32回国試のボーダーラインは,88点でした。
1点引き下げて87点にすると,今まで最高だった30.6%を超えた可能性があります。
もし,87点だった場合に,合格が30.7%だったと仮定すると
受験者数39,629人×合格率30.7%=合格者数12,166人
30.7%だった時の合格者数12,166人-29.3%の合格者数11,612人=554人
つまり1点差で泣いた人は,最低でも554人が存在していることになります。
国家試験を実施している社会福祉試験・振興センターが理想としている社会福祉士の国家試験は,
ボーダーライン 90点
合格率 30%
だと推測しています。
第32回は,88点,29.3%なので,同センターが理想としている試験よりも難易度が高かった問題だったと言えるでしょう。
それを踏まえて,第33回はどのような問題が出題されることでしょうか?
知識なしで解ける問題が多くて,誰も解けない問題が少なければ,ボーダーラインが上がります。
知識なしで解ける問題が多くても,誰も解けない問題が同数であれば,ボーダーラインに影響がありません。
国家試験に合格するためには,知識なしで解ける問題や誰も解けない問題以外の中間程度の難易度である問題を確実に正解することが大切です。
(ここまでが追記部分)
現時点(2020年2月)での直近の社会福祉士の国家試験は,第32回のものです。
第33回国家試験は,試験委員メンバーはよほどのことがない限り,ほとんどが留任することでしょう。
第37回の新しいカリキュラムに向けた準備が始まっているように思います。
第32回国家試験の特徴は,科目間のバランスを欠いているように思います。
一つはこんな問題です。
問題21 社会問題は,ある状態を解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立てとそれに対する反応を通じて作り出されるという捉え方がある。このことを示す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会統制論
2 緊張理論
3 文化学習理論
4 構築主義
5 ラベリング論
正解は,選択肢4です。
もう一つは,こんな問題です。
問題134 厚生労働省の介護人材確保対策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護福祉士の資格等取得者の届出制度では,離職した介護福祉士に対し.その再就業を促進し効果的な支援を行うため,都道府県福祉人材センターに氏名・住所等を届け出ることを努力義務としている。
2 介護保険制度の介護報酬における介護職員処遇改善加算では,介護サービス事業所・施設等が特段の届出や要件を問われることなく,介護職員の賃金増額などを図るための加算を取得できることとなっている。
3 福祉・介護人材確保緊急支援事業により,キャリア支援専門員が福祉事務所に配置され,個々の求職者にふさわしい職場を開拓するとともに働きやすい職場づくりに向けた指導・助言を行うこととなっている。
4 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,介護人材の構造転換を図るために,専門性の高い人材を活用する「富士山型」の方策から.基礎的な知識を有する人材を活用する「まんじゅう型」の方策へと転換を図る必要性が示されている。
5 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,中高年齢者等や介護未経験の者に対し,生活支援サービスの担い手養成のための研修の受講を支援するため,介護福祉士等修学資金貸付制度の充実を図るとされている。
今回の国家試験では,今まで見たことのないようなミスプリントがあります。
問題85の設問。
20 07年
2007年でなければなりません。
他にもどこかに同じようなものがあったように思います(今は見つけられません)。
これは,十分に校正する時間がなかったか,時間があっても,しっかりチェックしていなかったことによるものだと考えられます。
試験委員のメンバーが大幅に変わったことが影響しているように思います。
そのためなのか,知識なしでも解ける問題が登場しています。
問題84 社会調査に関する次の記述のうち最も適切なものを1つ選びなさい。
1 貧困の実態調査などの社会調査を基に,社会改良が行われることもある。
2 社会調査は.研究者が個人ではなくて共同で行わなければならない。
3 報道機関が行っている世論調査は,社会調査には含まれない。
4 社会調査は,社会福祉援助技術として有効な方法ではない。
5 社会調査は,数量的データとして結果を提示できなければならない。
あいまい表現に正解多し。
言い切り表現に正解少なし。
の問題です。
このほかにも
問題5 1978年にWHOが採択したアルマ・アタ宣言に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 先進国と開発途上国間における人々の健康状態の不平等について言及している。
2 政府の責任についての言及はない。
3 自己決定権についての言及はない。
4 保健ニーズに対応する第一義的責任は,専門職個人にあると言及している。
5 地域,国家,その他の利用可能な資源の活用についての言及はない。
このように表現がばらついているものは,答えが分かりやすくなる傾向があります。
言及している。
あるいは
言及はない。
で統一された問題だったらとても難しくなります。
「言及はない」(言い切り表現に正解少なし)は正解になりにくいので,消去できます。
残る選択肢から考えると良いことになります。
残る選択肢は,
1 先進国と開発途上国間における人々の健康状態の不平等について言及している。
4 保健ニーズに対応する第一義的責任は,専門職個人にあると言及している。
解答テクニック的に言えば,「第一義」という表現は,間違いである傾向があります。
正解は,選択肢1です。
1 先進国と開発途上国間における人々の健康状態の不平等について言及している。
この逆に,表現をそろえた問題もあります。
問題78 事例を読んで,次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさんは,判断能力が低下している状況で販売業者のU社に騙され,50万円の価値しかない商品をU社から100万円で購入する旨の売買契約書に署名捺印した。U社は,Aさんに代金100万円の支払を請求している。
1 Aさんにおいて,その商品と同じ価値の商品をもう一つ引き渡すよう請求する余地はない。
2 Aさんにおいて,消費者契約法上,Aさんの誤認を理由とする売買契約の取消しをする余地はない。
3 Aさんにおいて,商品が引き渡されるまでは,代金の支払を拒む余地はない。
4 Aさんにおいて,U社の詐欺を理由とする売買契約の取消しをする余地はない。
5 Aさんにおいて,契約当時,意思能力を有しなかったとして,売買契約の無効を主張する余地はない。
「余地はない」で統一されています。
このような問題は難易度が高くなります。
こういった問題の場合は,その内容で違うものを見つけ出すと良いです。
この問題の場合は,取り消しなどではないものが,選択肢1です。
1 Aさんにおいて,その商品と同じ価値の商品をもう一つ引き渡すよう請求する余地はない。
難しそうでも,視点を変えると解ける問題は多いです。
第32回国家試験のボーダーラインがどうなるかは誰もわかりません。
とは言っても,解きやすい問題が多かったことは確かです。
だからと言って,ボーダーラインが上がるということとは別の話です。
なぜなら,解きやすい問題があっても,難しい問題が同じ数あれば,ボーダーラインは変わらないからです。
第33回の話をすれば,
第32回国試が易しければ,難しくなるでしょう。
その逆に難しければ,第33回国試は易しくなるでしょう。
第32回国家試験の試験委員長は,新任の岩崎晋也先生(法政大学教授)でした。
そのためなのか,ミスプリがあるなど,バタついた感じがします。
これからしばらくは岩崎時代が続くことでしょう。第33回国家試験以降は,試験委員が慣れてくるので,第32回国試よりも洗練された問題が出題されると思うので,解きやすいと感じる問題は減るはずです。
<今日の一言>
第33回国家試験を受験される方は,今後,第32回の問題を解くでしょう。
その時には,知識なしでも解ける問題があるので,「国家試験は意外と簡単だ」と思うかもしれません。
しかしそれは危険な思い込みです。第32回国家試験の結果,再受験を目指すことになる人も要注意です。
勉強が不十分でも,ボーダーラインに近い点数が取れた人は特に注意です。
そこからの点数の積み上げは簡単ではありません。
合格できる基礎的な知識をきっちりつけることは,一朝一夕にできるものではありません。
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