「社会保障」が苦手だという人は多いようです。
ソーシャルワークには,ミクロレベルもマクロレベルも両方の視点が必要です。
対クライエントのミクロレベルは重要ですが,制度全体を俯瞰することで見えてくることもあります。
そういった意味で,「社会保障」が苦手だというのは,もったいないように思います。
第32回の介護福祉士の国家試験の問題です。
問題8 2015年度(平成27年度)以降の社会保障の財政に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 後期高齢者医療制度の財源で最も割合が大きいものは,後期高齢者の保険料である。
2 社会保障給付費の財源では,税の占める割合が最も大きい。
3 生活保護費の財源内訳は,社会保険料と税である。
4 国の一般会計予算に占める社会保障関係費の割合は,30%を超えている。
5 社会保障給付費の給付額では,医療費の構成割合が最も大きい。
社会福祉士の国試問題だと言われても違和感がないでしょう。
答えは,選択肢4です。
国の一般会計予算の中で最も大きな割合を占めているのが社会保障関係費です。
これだけ大きな比重を占めているわけですから,国民の関心も高いのは当然のことでしょう。
福祉の専門家として,よく知らないでは済まされないように思います。
それでも,国際的にみると,日本が社会保障に使っているのは,それほど多い方ではありません。これは,国民医療費も同じです。
ほかの選択肢も確認してみましょう。
1 後期高齢者医療制度の財源で最も割合が大きいものは,後期高齢者の保険料である。
後期高齢者医療制度は,国民健康保険から切り離されて独自の制度として,2008(平成10)年に誕生しました。
自己負担分を除くと
保険料 1割
後期高齢者支援金 4割
公費負担 5割
後期高齢者医療制度は,現役世代の医療保険制度から「後期高齢者支援金」を拠出してもらって,支えられていることが特徴です。
2 社会保障給付費の財源では,税の占める割合が最も大きい。
最も大きいのは,社会保険料です。
再び言いますが,日本の社会保障制度は,社会保険制度が中心なので,公費(税)が社会保険料を上回るようには制度は作られないのです。
3 生活保護費の財源内訳は,社会保険料と税である。
生活保護制度は,税負担である社会扶助制度なので,保険料の拠出があるわけないです。
社会保険の特徴は,リスクの分散です。
社会保険は,将来自分も必要になるかもしれない,というリスクがあるから国民の納得を得られます。
そういった意味で,生活保護受給者が増えているとは言っても,現在の保護率は1.7%程度なので,社会保険には向かないと言えます。
5 社会保障給付費の給付額では,医療費の構成割合が最も大きい。
かつては医療が最も多かった時代もありますが,現在の割合は,「年金:5」,「医療:3」,「福祉その他:2」となっています。
<今日の一言>
社会保険制度を中心に作られる社会保障制度を俗に「ビスマルク型」といいます。
一方,社会扶助制度(税財源)を中心に作られる社会保障制度を俗に「ベヴァリッジ型」といいます。
日本は,その分け方によれば,「ビスマルク型」となるのでしょう。
しかし,これらの分け方は,その国の社会保障制度全体を表わしたものではないので,国家試験に出題されることはないと思います。