国家試験が終わったあと,受験者の行動は2つに分かれます。
一つは,①解答速報ですぐ自己採点する。
もう一つは,②合格発表まで,国家試験のことは忘れる。
不合格が内定取り消しにつながる新卒学生は,①の行動をとります。
②は,合否が仕事に直結しない社会人に多いようです。
②のタイプの人は,現時点(第32回国家試験直後)には,この記事は見ることはないと思います。
①の行動の人は,解答速報の答えが割れている問題に対して,ドキドキします。
発表直後は正確性を欠くことが多いようです。
例年では,時間が経つにつれて修正していくので,だんだん答えはそろっていく傾向にあります。
落ち着いて経緯を見守りましょう。
第32回国家試験の問題の中で話題になっているのは,これらの問題です。
問題23 「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年(平成28年)6月閣議決定)の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域資源の活用や自然環境を活用した第4次産業革命を実現すべきとした。
2 一億総活躍社会を実現するのは,次世代の役割であるとした。
3 地方創生は,一億総活躍社会を実現する上で最も緊急度の高い取組の一つであるとした。
4 一億総活躍社会は,政府に頼らず社会の側の責任において実現すべきとした。
5 「成長」か「分配」かという論争に終止符を打ち,「成長」に重点を置いた施策を推進するとした。
問題27 「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年(平成30年)12月,外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域における外国人の活躍と共生社会の実現を図る地方公共団体の主体的で先導的な取組のために,社会福祉法人からの寄附金を募る。
2 災害時に避難所等にいる外国人被災者への情報伝達を支援する「災害時外国人支援情報コーディネーター」の養成研修を実施する。
3 外国人への行政•生活情報の提供において,個人情報保護の観点からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用は極力避ける。
4 公営住宅法に基づき,外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録や住宅情報の提供,居住支援等を促進する。
5 外国人への情報提供及び相談を行う一元的な窓口として,厚生労働省の地方厚生局に「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮)」を設置する。
問題28 国際連合が掲げている「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 2000年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)の目標を破棄し,それに代わる目標を掲げている。
2 経済成長,社会的包摂,人口増加抑制策の調和が,持続可能な開発を達成するために求められている。
3 持続可能な開発の達成には,政府の手を借りることなく民間セクターによる行動が必要とされている。
4 貧困に終止符を打つとともに,気候変動や環境保護への取組も求めている。
5 目標実現に向けた進捗状況のフォローアップと審査の責任は国際連合にあるとし,独立した国際的専門機関を設置している。
これらはすべて「現代社会と福祉」の問題です。
こんな問題が出題されると「勉強不足」を実感するかもしれません。
先生方は「社会の動きにも気を配りましょう」と言います。
確かに知識があった方がよいですが,知識がなければ必ずしも解けないという問題ではありません。
問題28を見てみましょう。
1 2000年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)の目標を破棄し,それに代わる目標を掲げている。
多くの場合,目標は,前のものを踏まえて作られます。目標が達成されなければ,達成するための方策を考えることになるでしょう。
2 経済成長,社会的包摂,人口増加抑制策の調和が,持続可能な開発を達成するために求められている。
社会的包摂は,西ヨーロッパで広まってきたものです。先進国では重要かもしれませんが,世界規模で考えた場合,優先される問題ではなさそうな気がします。
3 持続可能な開発の達成には,政府の手を借りることなく民間セクターによる行動が必要とされている。
これは正解ではなさそうだ,と判断できそうです。
4 貧困に終止符を打つとともに,気候変動や環境保護への取組も求めている。
これが正解です。
5 目標実現に向けた進捗状況のフォローアップと審査の責任は国際連合にあるとし,独立した国際的専門機関を設置している。
国際的な専門機関が設置されたのであれば,どこかで聞く機会もあるでしょう。
これらの問題は,必ずしも正解できなくても,ほかの問題が正解できるように勉強していけば必ずボーダーラインは越えます。
「現代社会と福祉」は,現代の問題を取り上げるので,問題が難しくなる傾向があります。
しかし,それはすべての受験生に同じ条件です。
知識が足りなかったのかどうかを見極めるバロメーターとなる問題があります。
問題44 「平成31年版地方財政白書」(総務省)における民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額のうち,民生費は教育費に次いで多い。
2 都道府県の目的別歳出では,生活保護費の割合が最も高い。
3 都道府県の性質別歳出では,扶助費の割合が最も高い。
4 市町村の目的別歳出では,児童福祉費の割合が最も高い。
5 市町村の性質別歳出では,人件費の割合が最も高い。
正解は4です。
合格する実力を持つ人は,こういった問題を確実に正解します。
<今日の一言>
第33回国家試験を受験する人が,第31回と第32回国試を解いたとき,出題内容に大きな変化を感じないでしょう。
国家試験は,実際に受験した人が感じる難しさがあります。
これは今回だけに限ったことではなく,これまでの国家試験を受験した人すべてが体験しています。
知識が足りなければ合格できませんが,知識だけでは合格するのに十分ではありません。
再受験を目指すことになったとき,「知識不足だった」という現実認識だけでは,次回もあと数点で泣くことになります。
どのような知識が必要なのかを今後も追いかけていきます。ご期待ください。
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