今回は,量的調査を取り上げます。
量的調査には,全数調査と標本調査があります。
標本調査は,適切に標本を抽出しないと母集団の性質を調べることができません。
標本の抽出方法には,無作為抽出法(確率抽出法)と有意抽出法(非確率抽出法)があります。
母集団の性質を正しく調べることができるのは,無作為抽出法です。
無作為抽出法で最も抽出制度が高いのは単純無作為抽出法です。
しかし,全数調査ではないので,母集団の性質とは少しずれます。これを標本誤差といいます。
標本誤差は,標本抽出である限り避けることができません。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題86
調査対象者の抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 標本抽出方法の確率抽出と非確率抽出では,非確率抽出の方が母集団に対する代表性が高い方法である。
2 適切に抽出された標本調査であれば,標本誤差は生じない。
3 調査対象者の多段抽出は,単純無作為抽出に比べて母集団の特性を推定する精度が高い。
4 系統抽出法は,抽出台帳に一定の規則性がある場合には,抽出した標本に偏りを生じることはない。
5 スノーボール・サンプリングは,非確率抽出法の一つである。
この問題には元ネタがあります。
それは後で述べるとして,解説です。
1 標本抽出方法の確率抽出と非確率抽出では,非確率抽出の方が母集団に対する代表性が高い方法である。
母集団に対する代表性が高い方法は,確率抽出(無作為抽出)です。
2 適切に抽出された標本調査であれば,標本誤差は生じない。
標本誤差を生じないのは,全数調査です。
どんなに精度の高い標本調査であっても標本抽出である限り,標本誤差は生じます。
3 調査対象者の多段抽出は,単純無作為抽出に比べて母集団の特性を推定する精度が高い。
最も精度が高い標本抽出法は,単純無作為抽出法です。
ほかのどれと比較したものが出題されても,単純無作為抽出法の方が抽出精度が高いものとなります。
4 系統抽出法は,抽出台帳に一定の規則性がある場合には,抽出した標本に偏りを生じることはない。
系統抽出法は,すべての標本に番号を振って,最初に抽出する標本だけを無作為に選び,そのあとは,等間隔で標本を抽出する方法です。
そのため,抽出台帳に何らかの規則性があった場合は,抽出した標本に偏りが生じることがあります。
5 スノーボール・サンプリングは,非確率抽出法の一つである。
これが正解です。
スノーボール・サンプリングは,標本数を増やすための方法です。標本となった人から協力してくれる人を紹介してもらうことで標本数を増やします。そのため有意抽出法です。
スノーボール・サンプリングのスノーボールは,雪玉を転がしていくことで,大きな雪玉になる様子から名付けられたものです。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題には,下書きとなった元ネタが存在します。
第29回・問題86
量的調査における標本抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。
2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。
3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。
4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。
5 機縁法は確率標本抽出の一種である。
今となっては,こんなに古い過去問を入手するのは,一般人にはかなり困難でしょう。
私たちチームfukufuku21は,問題が非公表だった第1・2回国試を除いて,すべての問題を持っています。阪神淡路大震災で再試験が行われた第7回の問題もあります。この豊富なデータを使って,情報を提供しています。
それはさておき,この問題の正解は選択肢2です。
2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。
過去問を解く勉強法をしても,正解を選ぶだけで終わっていると,今日の問題のように出題されるとミスします。
4 系統抽出法は,抽出台帳に一定の規則性がある場合には,抽出した標本に偏りを生じることはない。
系統調査法が正解だったという弱い記憶では,この文章を読むと「見たことある」と脳が認識して,これに引き込まれます。
知識がしっかりあったとしても,あわてんぼうの人は,こういった最後の最後に誤りポイントがある問題ではミスしがちです。