事例問題は,事例にある情報だけで答えを考えることが大切です。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題76
事例を読んで,医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行う退院支援に関する次の記述のうち,この段階における対応で,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
先天性代謝異常の疾患に罹患しているMちゃん(生後8か月)は呼吸器を装着し頻回の吸引が必要でありバルーンカテーテル,経管栄養を使用している。出生以来,NICU(新生児集中治療室)に2か月,小児病棟に6か月入院してきたが,主治医からの退院許可を受け,自宅での生活の準備を始めることになった。出生以来,Mちゃんの見舞いを欠かさずしてきた両親は,初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた。一方で病院から離れることに不安を感じ,これまで相談に乗っていた医療ソーシャルワーカーに不安を打ち明けた。
1 医療的ケア児等コーディネーターとの連携を検討する。
2 両親に特別障害者手当を申請するよう勧める。
3 訪問看護ステーションと両親を交えたカンファレンスを実施する。
4 両親に医療型障害児入所施設の空き状況を伝える。
5 これまでも同様の患者がいたことを伝え,心配する必要はないと両親を励ます。
この問題に登場する 医療的ケア児等コーディネーターは,その名のとおり,医療的ケア児等の支援を行います。
相談内容は,Mちゃんと一緒に生活することに喜びを感じているものの病院から離れることへの不安です。
このニーズを満たすことができるのは,
1 医療的ケア児等コーディネーターとの連携を検討する。
3 訪問看護ステーションと両親を交えたカンファレンスを実施する。
の2つしかありません。
5 これまでも同様の患者がいたことを伝え,心配する必要はないと両親を励ます。
これが絶対に正解にならないのは,ケースワークの原則の個別化の原則に外れるためです。
2 両親に特別障害者手当を申請するよう勧める。
特別障害者手当は,20歳以上の在宅で生活する重度障害者に給付するものです。
4 両親に医療型障害児入所施設の空き状況を伝える。
両親は,
初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた。
という情報があります。
それにもかかわらず,入所施設を紹介するのは不適切です。
それよりもこれが絶対に正解にならない理由は,医療型障害児入所施設は,重症心身障害児などを対象とする施設だからです。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題は,事例問題ですが,社会資源の知識も同時に求められています。この問題の場合は,両親のニーズが明確なので正解しやすいと言えます。
しかし,社会資源の知識がなければ正解できない事例問題も存在します。
それと当時に覚えておきたいのは,事例は事例の情報だけを手掛かりに考えることです。
事例の中には書かれていないけれど,「きっとこうだろう」と思うと間違えます。
今日の問題では,
初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた。
という重要な手がかりが示されていますが,余計なことを考えると,その情報が薄れていってしまって,選択肢4の「入所施設」を選んでしまうようなミスをします。
意外とやりがちです。