今回は,質的調査です。
グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)
グレイザーとストラウスによって開発されたものです。
GTAの手順は,インタビューや観察などで得られたものを文字化します。
そのポイントだと思われるものを書き出します。
似たようなものをまとめて,そのかたまりをコード化します。
それが「オープン・コーディング」です。
いくつかのかたまりをまたまとめていきます。そして,全体にタイトルをつけます。
それが一回目です。
もう一回,元のデータに戻って同じ作業を繰り返します。
そうすると,最初には気づかなかったものが見えてきます。
また繰り返します。
そうして,繰り返すうちに,これ以上新しいものが出てこなくなった状態を「理論的飽和」といいます。
グレイザーとストラウスは,共同してGTAを提唱しましたが,手法がちょっと違います。
ストラウス派は,まとまったものを再コード化する過程があり,それを軸足コーディングと呼びます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題90
調査の情報の整理と分析に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一のカテゴリーと複数のサプカテゴリーを関連づける方法である。
2 プリコーディングとは,自由記述や事前に数値化が困難な回答に対して,調査者が後からコードの割当てをすることをいう。
3 会話分析の関心は,調査対象者がどのように日常的な相互行為を秩序立てて生み出すのかを解明するために,会話内容ではなく,会話の形式や構造に向けられる。
4 ミックス法は,質問紙などの量的調査とインタビューなどの質的調査を組み合わせる方法である。
5 インタビューデータの分析において,対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをオープン・コーディングという。
軸足コーディングは,何度も出題されてきているところを見ると,日本ではもしかすると,グレイザー派よりもストラウス派のほうが主流なのかもしれません。
それでは解説です。
1 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一のカテゴリーと複数のサプカテゴリーを関連づける方法である。
これが1つめの正解です。
軸足コーディングが出題され,しかも正解となっています。
2 プリコーディングとは,自由記述や事前に数値化が困難な回答に対して,調査者が後からコードの割当てをすることをいう。
「プリ」は「前に」という意味です。
後からコードを割り当てるのは,アフターコーディングです。
3 会話分析の関心は,調査対象者がどのように日常的な相互行為を秩序立てて生み出すのかを解明するために,会話内容ではなく,会話の形式や構造に向けられる。
会話分析という聞いたこともないものが出題されていますが,会話内容も改割形式や構造にも着目します。
4 ミックス法は,質問紙などの量的調査とインタビューなどの質的調査を組み合わせる方法である。
これが2つめの正解です。
ミックス法という名前から,何かを合わせることであると推測できそうです。
5 インタビューデータの分析において,対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをオープン・コーディングという。
対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることは,インビボコーディングです。
オープン・コーディングは,質的データに最初にコーディングしていくものです。
〈今日の注意ポイント〉
間違う人はそれほどいないかもしれませんが,選択肢3に着目します。
会話分析の関心は,調査対象者がどのように日常的な相互行為を秩序立てて生み出すのかを解明するために,会話内容ではなく,会話の形式や構造に向けられる。
とても回りくどいと思いませんか?
この内容が正しければ,
会話分析の関心は,会話の形式や構造に向けられる。
で良いはずです。そうなっていないのは,引っ掛けるための仕掛けだからです。