キャプランによる予防モデルは,国家試験では,メインティッシュになることはありませんが,かなり効果的なサイドメニューのような位置づけで出題されています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題73
「地域における保健師の保健活動に関する指針」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域住民に対して,生活習慣病の三次予防に重点を置いた指導を行う。
2 地域住民に対して,保健師が主体となって地域の健康づくりを促進する。
3 産後に抑うつ状態の可能性が高いと判断される養育者に対して,受療指示を行う。
4 担当地域の市町村地域防災計画を策定する。
5 地域診断を実施し,取り組むべき健康課題を明らかにする。
(注) 「地域における保健師の保健活動に関する指針」とは,「地域における保健師の保健活動について」(平成25年4月19日健発0419第1号厚生労働省健康局長通知)で示された指針のことである。
選択肢1に三次予防が出題されています。
これが明確に理解していないと,ここに引っ掛かって正解することができません。
これが「効果的なサイドメニュー」と表現した理由です。
予防モデル
一次予防 |
問題を発生させないこと。 |
二次予防 |
問題を早期に発見して,早期に対応すること。 |
三次予防 |
問題を進行させない,問題を再発させないこと。 |
それでは解説です。
1 地域住民に対して,生活習慣病の三次予防に重点を置いた指導を行う。
生活習慣病を予防モデルをあてはめると以下のようになります。
〈一次予防〉
生活習慣病にならないこと。
〈二次予防〉
生活習慣病を早期発見,早期治療すること。
〈三次予防〉
生活習慣病を悪化させないこと。
地域における保健活動は,住民全体を対象とした一次予防のための保健指導です。
2 地域住民に対して,保健師が主体となって地域の健康づくりを促進する。
健康づくりの主体は,住民本人です。
保健師は,それを支援する役割を担います。
3 産後に抑うつ状態の可能性が高いと判断される養育者に対して,受療指示を行う。
受療指示を行なえるのは,生活保護で現業員が被保護者に対するものしか思い当たりません。保健師は,このような権限をもちません。
4 担当地域の市町村地域防災計画を策定する。
市町村地域防災計画を策定するのは,市町村です。
5 地域診断を実施し,取り組むべき健康課題を明らかにする。
これが正解です。
保健師が行う地域診断とは,さまざまな調査や統計資料などからその地域住民の生活実態を明らかにして,保健指導に役立てる活動です。
〈今日の注意ポイント〉
地域診断は,地域アセスメントともいいます。
ソーシャルワークでは,診断という医療用語はなじまないためなのか,地域アセスメントを使います。
ソーシャルワークにおける地域アセスメントも保健師の地域診断と同じように,その地域の課題を明らかにするものです。
保健師と異なるのは,保健師は身体面に焦点をあてるのに対し,ソーシャルワークでは社会面に焦点をあててアセスメントすることです。
ソーシャルワークにおける地域アセスメントは,コミュニティワークの活動に含まれます。
コミュニティワークも住民主体なので,その点では,地域の保健師活動とコミュニティワークは親和性が極めて高い活動だと言えるのかもしれません。