今回は,分散と標準偏差を取り上げます。
分散は,データが平均値からどのくらいばらついているのかを示すものです。
標準偏差は,分散の正の平方根の値です。
標準偏差はよく知らなくても,偏差値というのは聞いたことがあるでしょう。
偏差値の計算法
(個人の得点-平均点)÷標準偏差×10+50」
偏差値を計算するのに,標準偏差が用いられています。
つまり,偏差値を計算するために,標準偏差が必要です。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題89
量的調査の集計と分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 質問紙調査のデータを集計する際に,全体的な回答の分布を見たい場合に,度数分布表を用いることはない。
2 データの分布を代表する値として平均値を用いておけば,中央値や最頻値は見なくてもよい。
3 標準偏差は,調査データが全体としてどれぐらい平均値から離れて散らばっているのかを表す指標の一つである。
4 推測統計とは,収集されたデータそのものの特徴を記述するための方法である。
5 オッズ比は,分布の左右対称性に関する指標である。
知識がなくても消去できそうな選択肢があります。
それでは解説です。
1 質問紙調査のデータを集計する際に,全体的な回答の分布を見たい場合に,度数分布表を用いることはない。
度数分布表は,回答の分布を調べるときに用います。
〈例〉
得点 |
人数 |
103 |
1 |
100 |
5 |
95 |
2 |
90 |
10 |
89 |
8 |
87 |
3 |
このような表を作成して,ヒストグラムのようにデータを見える化します。
2 データの分布を代表する値として平均値を用いておけば,中央値や最頻値は見なくてもよい。
データの代表値には
平均値
中央値
最頻値
などがあります。平均値は,簡単に計算できるのでよく用いられますが,いわゆる外れ値があると,その集団の様子を正しく表わさないために,中央値や最頻値などと合わせて示します。
3 標準偏差は,調査データが全体としてどれぐらい平均値から離れて散らばっているのかを表す指標の一つである。
これが正解です。
分散,標準偏差ともにデータのばらつきを示す指標です。
4 推測統計とは,収集されたデータそのものの特徴を記述するための方法である。
収集されたデータそのものの特徴を記述するための方法は,記述統計です。
推測統計は,その集団の特徴を推測するための方法です。
5 オッズ比は,分布の左右対称性に関する指標である。
オッズ比は,起きる確率と起きない確率の比です。
分布の左右対称性に関する指標は,歪度(わいど)といいます。
〈今日の注意ポイント〉
標準偏差は,分散の正の平方根です。
平方根とは,ルートのことですが,わざわざこの計算をするのは,分散を計算する際に,一度2乗しているので,それを小さな数字に戻すためです。