社会福祉調査の対象は,
ミクロレベル
メゾレベル
マクロレベル
があります。
そのうち,今日のテーマである社会踏査(social survey)は,社会改良を目指す実践的調査なので,マクロレベルだと言えるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題84
社会調査に関する次の記述のうち最も適切なものを1つ選びなさい。
1 貧困の実態調査などの社会調査を基に,社会改良が行われることもある。
2 社会調査は,研究者が個人ではなくて共同で行わなければならない。
3 報道機関が行っている世論調査は,社会調査には含まれない。
4 社会調査は,社会福祉援助技術として有効な方法ではない。
5 社会調査は,数量的データとして結果を提示できなければならない。
社会福祉調査を苦手とする受験生は多いと思います。しかし,このような問題もあるので,必要以上に不安になったり,心配したりしないことが大切です。
どんな科目でも必ず突破口はあります。
それでは,解説です。
1 貧困の実態調査などの社会調査を基に,社会改良が行われることもある。
これが正解です。
貧困の実態調査などの社会調査が,今日のテーマの社会踏査(social survey)です。
有名なものには,イギリスで行われた,ブース,ラウントリーらの貧困調査があります。
これらの貧困調査によって,貧困に陥る理由が道徳的なものだと考えられていたものが,資本主義による社会の構造によるものであるという考え方に変わっていきます。
そして,20世紀になり,ナショナルミニマム(国家による最低生活保障)という考え方が生まれていきました。
貧困調査は,まさしく社会改良のさきがけとなりました。
2 社会調査は,研究者が個人ではなくて共同で行わなければならない。
社会福祉調査は,多くの場合,集団で行っていますが,個人で行ってはならないという決まりはどこにも存在しません。
3 報道機関が行っている世論調査は,社会調査には含まれない。
世論調査ももちろん社会福祉調査に含まれます。
4 社会調査は,社会福祉援助技術として有効な方法ではない。
平成19年度カリキュラムでは,事例検討の方法は,「相談援助の理論と方法」に含まれていました。
そのために,このような出題がなされたのでしょう。
令和元年度カリキュラムでは,事例検討の方法は,「社会福祉調査の基礎」に含まれています。
そのために,今後はもうこのような出題はされないと思いますが,社会福祉調査には,
ミクロレベル(インターベンションの効果に関する調査など)
メゾレベル(地域住民の生活環境の改善など)
マクロレベル(社会問題の改善のための要求の基礎データとすることなど)
のものがあります。
それぞれ,ソーシャルワークに密接にかかわります。
5 社会調査は,数量的データとして結果を提示できなければならない。
社会福祉調査の方法には,量的調査と質的調査があります。
そのうち,数量的なデータとして分析できるのは,量的調査です。
観察,面接などからデータを得る質的調査は,それぞれの質的データ自体に意味があります。
質的調査で取り扱うデータが多ければ,数量的データにもできますが,それだと,質的データが持つ個々の貴重な意味がなくなります。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題は,社会福祉調査のイメージとして,量的調査の印象が強い人が多いために,そこを突くように作られたものです。
社会福祉調査には,量的調査と質的調査があることを忘れないことが大切です。