生活保護法では,被保護者に対する「指導及び指示」が規定されています。
指導及び指示
第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。 2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。 3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。 |
また,必要な場合は,被保護者に対して検診命令を出すことができます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題66
事例を読んで,福祉事務所の生活保護現業員が行う業務として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Hさん(70歳,男性)は生活保護を受給し,アパートで一人暮らしをしている。糖尿病を患っており,主治医からの検診書によると働くことは困難な状況である。趣味がなく,友人との付き合いもなく,一日の大半をアパートでテレビを観て過ごしており,食生活も不規則である。親族としては遠方で暮らす妹のみであるが,Hさんは妹とは20年以上音信不通が続いており,所在を知らないと言っている。
1 稼働能力の活用を図るため,公共職業安定所(ハローワーク)へ行って求職活動を行うよう,指導・指示を行う。
2 自立支援プログラムに参加するよう,指導・指示を行う。
3 生活保護受給者等就労自立促進事業を利用するため,公共職業安定所(ハローワーク)へ支援要請を行う。
4 面接相談を通して本人の意向を把握した上で,社会生活自立や日常生活自立に向けた支援の方法を検討する。
5 扶養義務者である妹に対して,回答期限を付して書面による扶養照会を行う。
この問題は,福祉事務所の生活保護現業員が行う業務の事例として出題されていますが,ソーシャルワークの方法を問うものになっています。
正解は圧倒的に,選択肢4です。
4 面接相談を通して本人の意向を把握した上で,社会生活自立や日常生活自立に向けた支援の方法を検討する。
この選択肢だけが本人の意向を確認したものとなっています。
しかし,一応ほかの選択肢も確認します。
1 稼働能力の活用を図るため,公共職業安定所(ハローワーク)へ行って求職活動を行うよう,指導・指示を行う。
3 生活保護受給者等就労自立促進事業を利用するため,公共職業安定所(ハローワーク)へ支援要請を行う。
Hさんは,働くことは困難です。
2 自立支援プログラムに参加するよう,指導・指示を行う。
自立支援プログラムは,本人の同意に基づいて実施されます。
5 扶養義務者である妹に対して,回答期限を付して書面による扶養照会を行う。
妹は扶養義務者ですが,つながりはありません。
〈今日の注意ポイント〉
保護の実施機関は,扶養義務者に対して,保護の開始の決定をしようとするときは,書面による扶養照会を行います。
しかし,すべての場合に適用されるものではありません。
この事例のように,扶養義務者がいても,つながりがない場合などには行われません。