行政処分に対して不服がある場合,行政不服審査法に従って不服申立てを行うことができます。
生活保護法など,個別法に規定がある場合は,個別法の規定に従います。
行政不服審査法は,2016年(平成28年)に改正されて,それまであった異議申立てがなくなり,以下のようになっています。
〈改正前〉
①異議申立
②審査請求
③再審査請求
〈改正後〉
①審査請求
②再調査の請求
③再審査請求
新しくできた「②再調査の請求」は,行政処分とした行政庁に再調査を依頼するものです。
審査請求よりも手続きが簡単です。
しかし,すべての行政処分に対して再調査の請求ができるものではなく,個別法に規定があるものに限られます。
なお,この改正では,不服申立期間は,処分があったことを知った日から60日だったものが,3か月に延長されています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題79
行政処分に対する不服申立てに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 処分庁に上級行政庁がない場合は,処分庁に対する異議申立てをすることができる。
2 審査請求をすることのできる期間は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して10日以内である。
3 審査請求に係る処分に関与した者は,審査請求の審理手続を主宰する審理員になることができない。
4 行政事件訴訟法によれば,特別の定めがあるときを除き,審査請求に対する裁決を経た後でなければ,処分の取消しの訴えを提起することができない。
5 再調査の請求は,処分庁以外の行政庁が審査請求よりも厳格な手続によって処分を見直す手続である。
なかなかの難問です。
それでは,解説です。
1 処分庁に上級行政庁がない場合は,処分庁に対する異議申立てをすることができる。
異議申立ては,2016年(平成28年)の改正によって,廃止されました。
その代わりに規定されたのが「再調査の請求」です。
2 審査請求をすることのできる期間は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して10日以内である。
従来は60日だったものが,現在は3か月以内となっています。
10日ではあまりに短すぎます。
3 審査請求に係る処分に関与した者は,審査請求の審理手続を主宰する審理員になることができない。
これが正解です。
行政処分した者が,審査請求の審理に加わることはできません。当然です。
自分に有利に誘導してしまうことがあり得るからです。
4 行政事件訴訟法によれば,特別の定めがあるときを除き,審査請求に対する裁決を経た後でなければ,処分の取消しの訴えを提起することができない。
生活保護法などは,審査請求に対する裁決があった後でなければ訴訟を提起することはできませんが,現在は,この「審査請求前置主義」をとる法制度は,レアです。
多くのものは,審査請求をせずとも訴訟を提起できるようになっています。
5 再調査の請求は,処分庁以外の行政庁が審査請求よりも厳格な手続によって処分を見直す手続である。
前説のように,再調査の請求は,異議申立てに変わって規定されたものです。
審査請求よりも簡便に行えるものです。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題は,落ち着いて読むと正解できるタイプの問題です。
この問題の場合は,消去法を使うよりも正解できる確率が上がります。
審査請求に係る処分に関与した者は,審査請求の審理手続を主宰する審理員になることができない。
この選択肢が誤りだった場合
審査請求に係る処分に関与した者でも,審査請求の審理手続を主宰する審理員になることができる。
が正解になります。
迷った時は,その文章を正しいものに直して考えてみるという方法も有効です。
この文章なら「正解ではなさそうだ」と推測することが可能になります。
つまり,もともとの文章が正しいと判断できます。
限られた時間の中で,このような思考はできないと思う人も多いと思います。確かにそれは簡単なことではありません。しかし,時間に制約がある中,多くの思考を行うことは,ソーシャルワーク実践に求められるスキルでもあります。
試験で苦労した分,必ずソーシャルワークのスキルアップにつながります。