更生保護制度は,国試を締めくくる科目です。
67問を1時間45分で解いていきます。
150問を解き終わって,時間が余った場合でも最初に選んだ答えは絶対に変えないようにしましょう。
マークミスがないか,読み間違っているものはないか,2つ選ぶ問題を1つしか選んでいないものはないか,の3点に絞ってチェックしていきます。
ある人は,「最初に選んだ答えを変えると試験の神様の怒りを買う」とよく言っていますが,最初に選んだ答は,今まで勉強してきて右脳が覚えていたものが直感的(ひらめき的)に出てくる現象を指しているのだと思います。
深く考えると言語脳である左脳が働き,右脳よりも優位になります。
今まで見てきたように,国試問題にはたくさんのトラップが巧妙に仕掛けられています。
せっかく右脳が直感的にそっちは危ないよ,こっちが安全だよ,と教えてくれているのに,問題を読み返すことで,最初に抱いた違和感がなくなり,間違っている問題でもすべてが正しく見えてきてしまいます。
今まで努力してきた人は,忘れても忘れてもひたすら繰り返し覚え続けてきたと思います。
その努力は,右脳に刻まれています。
努力を肯定して,国試に臨むことができれば,必ず右脳が働きます。
さあ,声に出して言いましょう!!
私は大丈夫!! 私は合格する!!
もう一度,言いましょう!!
私は大丈夫!! 私は合格する!!
さて,今日も更生保護を取り上げます。
更生保護制度の中心は,保護観察です。
保護観察は,保護観察所に置かれる保護観察官と保護司の協力のもとに,指導監督と補導援護によって行われます。
指導監督は,一般遵守事項が守られているかなど,面接等を通して把握して必要な場合は指導を行います。指導監督は権力的な役割です。
ちなみに,保護司とよく似たものには民生委員があります。
民生委員の役割は超頻出ですが,その中に「指導」という言葉が出てきたら,間違いです。すぐ×を付けましょう。
保護観察のもう一つは,補導援護です。これは指導監督とは違い,さまざまな援助を行います。現在,たくさんの保護観察官の方が社会福祉士の資格を持って活動されています。
更生保護の科目は,現行カリキュラムになって加わった科目です。加わった意味はさまざまありますが,司法領域(法務省)と福祉領域(厚労省)が近くなったことは評価に値すると思います。
話を戻します。
指導監督の中の一般遵守事項は保護観察に付された者すべてが守るべきものです。
特別遵守事項は,必要な場合に保護観察所の長あるいは地方更生保護委員会が定めます。地方裁判所ではないので注意しましょう。
特別遵守事項として行われるものには,専門的処遇プログラムがあります。
専門的処遇プログラムに関する問題
↓ ↓
http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/08/blog-post_10.html
さて,それでは今日の問題です。
第28回・問題147
保護観察に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 少年院からの仮退院者や児童自立支援施設からの退所者には保護観察が付される。
2 少年事件の保護観察を実施する機関は児童相談所であり,そこには保護観察官が配属されている。
3 犯罪をした者及び非行のある少年に対し,矯正施設や社会内において適切な処遇を行うことにより改善更生を助けることが保護観察の目的である。
4 保護観察官が指導監督,保護司が補導援護を行う役割分担を行っている。
5 法務大臣が指定する施設などにおいて,一定期間の宿泊の継続とそこでの指導監督を受けることが特別遵守事項の一つとされている。
この問題は,消去しながらあぶり出す方法で,答えが出てくるタイプのものです。
今は,過去問や参考書などに書かれているので,しっかり勉強してきた人なら,消去法ではなく,「答えはこれだ!!」とすぐ選べるかもしれません。
しかし,実際の国試では,ほとんどの問題は,消去法で答えをあぶり出します。
そのために,最初に紹介した右脳の働きが重要なのです。
保護観察の種類には,1号から5号まであります。
因みに保護観察官の方の話によると5号観察はめったにいないそうです。
保護観察の種類に関連した問題には,以下のようなものがあります。
第27回・問題147 少年に対する保護処分として言い渡される保護観察(以下「1号観察」という。)と,少年院仮退院者に付される保護観察(以下「2号観察」という。)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 1号観察は家庭裁判所が決定するが,2号観察は少年院の長が決定する。
2 対象者が成績良好の場合,1号観察には仮解除や解除といった良好措置があるが,2号観察には良好措置はない。
3 対象者が遵守事項に違反した場合,1号観察も2号観察も地方更生保護委員会の決定により少年院に収容されることになる。
4 1号観察も2号観察も,対象者が成人(20歳)に達した後でも行われることがある。
5 1号観察では一般遵守事項しか付されないが,2号観察では一般遵守事項に加えて特別遵守事項が必ず付される。
この問題を見たら,1号観察について勉強していなかった,「困った」「分からない」と思ったと思った人も多かったと思います。
国試で得点するには,そんな内容でもどこかにヒントがないか,探すことが大切です。
この問題のポイントは,いつものあれです。
いつものあれとは,
あいまい表現に正解多し。
1 決定する。
2 良好措置はない。
3 収容されることになる。
4 行われることがある。
5 必ず付される。
あいまい表現は,4 行われることがある。
です。そしてこれが正解です。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 少年院からの仮退院者や児童自立支援施設からの退所者には保護観察が付される。
この選択肢には間違い選択肢をつくるときの常とう手段が使われています。
それは
「 」や「 」
というものです。
保護観察に付されるのは,少年院からの仮退院者です。
2号観察となります。児童自立支援施設からの退所者には保護観察は付されません。よって間違いです。
保護観察処分の決定 → 地方裁判所
仮退院の決定 → 地方更生保護委員会
合わせて覚えておきましょう。
2 少年事件の保護観察を実施する機関は児童相談所であり,そこには保護観察官が配属されている。
保護観察の実施機関は,保護観察所です。よって間違いです。
3 犯罪をした者及び非行のある少年に対し,矯正施設や社会内において適切な処遇を行うことにより改善更生を助けることが保護観察の目的である。
またまた矯正施設が出てきましたね。保護観察は,社会内処遇です。
よって間違いです。
頻出問題なので,間違いだとすぐ分かりますが,ここでも間違い選択肢をつくるときの常とう手段「 」や「 」が使われていることに着目しましょう。
4 保護観察官が指導監督,保護司が補導援護を行う役割分担を行っている。
保護観察官と保護司は,協力して指導観察と補導援護を行っています。役割分担はありません。よって間違いです。
5 法務大臣が指定する施設などにおいて,一定期間の宿泊の継続とそこでの指導監督を受けることが特別遵守事項の一つとされている。
結果的にこれが正解です。
しかし,特別遵守事項は人によって内容が変わります。一定期間の宿泊の継続とそこでの指導監督を受けることが特別遵守事項になるのかどうかは,この国試を実施された時点で分かる人はほとんどいなかったと思われます。
<今日のまとめ>
選択肢1~4の中に,分かりにくいものがあったら,選択肢5を正解にするのは極めて難しいと思います。
しかしこの問題では,うまく1~4は消去できました。
仮に,1~4の中で消去できなかったものがあったとしたら,正解率は50%,33%と低下していきます。
国家試験の合格基準点は,6割ラインは超えません。「答えはこれだ」と分からない問題でも,正解率33~50%もあれば上々です。
決して悩んで最初に選んだ答えは変えてはいけません。
最後にもう一度言いましょう!!
私は大丈夫!! 私は合格する!!
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