30回って結構すごい歴史だと思います。
1990年 福祉関係八法改正
2000年 社会福祉法
大きな福祉のうねりを経験してきて今があるのだと思います。
私たちが入手できる国家試験問題は,平成3年の第3回が最も古いものになります。
その理由は,第1・2回の問題は,非公開だからです。
初期の問題と現在の問題が全く違うと感じるのは,設問が長いということです。
設問の中に,さまざまな説明を入れているのです。
第3回・問題56
保険と呼ばれる制度は,私的・私営と公的・公営の分類の中間にあって,私的・公営のもの,または公的私営のものまである。これら保険が仕組まれて実施されるためには,いくつかの要件が必要とされるが,その代表的なものに関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
設問を読むだけで面倒になりそうですね。ここに当時の試験委員の苦労を感じます。
1 生活保障(生命保険の場合)又は損害填補(損害保険の場合)の制度としての保険が社会的制度として成り立つためには,支払われた保険料と給付される保険金との間での経済的価値計算が正しくなされるための保険数理が把握されていなくてはならない。
正しい
2 保険は貨幣を長い期間の中で操作して,生活保障や損害填補を最も必要とする者に,最も必要とする時に,できるだけ過不足なく行うための制度であるから,どうしても収支や財政の健全化を図らなければならず,そのために再保険の制度,資金の高率運用に努めるのみならず,すべての保険には最終的な国家の財政保証があるのである。
間違い
3 保険には,間接的には生産性の刺激や向上への効果もあるが,直接的には災害や災難または不幸な事態や好ましからざる事態の発生に備えつつ,結果の事後処理を果たすものである。保険が活用され,この効用を発揮するためには,なんとしても社会並びに個人の拡大再生産的経済余力が存在していなければならない。
正しい
4 いずれの保険であれ,それは一種の長期に亘る約束事とみることができる。所定の条件と内容を事前に示し合い,この所与の条件を満たした時に保険金支払いや保険給付がなされることになる。この関係を,契約を結ぶという手続きによって確定し,明確にしておく必要があり,ここに法律的な要件が濃厚に保険制度に持ち込まれる理由がある。
正しい
5 保険は国民大衆,一般庶民の生活に関わる制度であるといっても過言ではない。しかも保険金支払いや保険給付がなされる時は,それを受ける者の極めて落ち込んだ時期とされるであろう。保険料は人々の生活の切りつめの中から支出される場合が多いことも考え万事に支障が生じては絶対にならない。そこで関係行政当局による厳しい規制,監督・指導・統制等の保険行政が展開される必要がある。
正しい
設問も長ければ,選択肢も長い。最新の国試問題を知っている人なら,なんという周りくどいものなのだろう,と思うことでしょう。
それでは,次は第10回国試です。
第10回・問題3
次の人物と,その働きの場と業績との組み合わせのうち,誤っているものを一つ選ぴなさい。
1 浅賀ふさ--------聖路加国際病院---------医療社会事業
2 留岡幸助--------家庭学校---------------感化事業
3 糸賀一雄--------近江学園-----『この子らを世の光に』
4 片山 潜--------キングスレー館---セツルメント事業
5 小河滋次郎-----岡山県------------------方面委員制度
今度は,文章なし。
単なる組み合わせ問題です。
この時代なら,単語カードに書き込んた知識で対応できたことでしょう。
この時はまだ精神保健福祉士の資格がなかった時代です。
間違いは。選択肢5。岡山県は済生顧問制度。
もう一問
第10回・問題82 ソーシャルワークにおけるスーパービジョンの機能として,教育的機能,管理的機能に加えて強調されるものはどれが。次のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
1 評価的機能
2 相談的機能
3 治療的機能
4 支持的機能
5 モニタリング機能
第30回と比べてみましょう。
第30回・問題115 ソーシャルワークにおけるスーパービジョンに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 スーパーバイジーとは,スーパーバイズする立場の人のことである。
2 意義は,クライエントへのサービスの質,専門性の質などの維持・向上を図るために業務の振り返りを促すことにある。
3 管理的機能とは,スーパービジョン関係を用いて情緒的・心理的な面をサポートすることである。
4 支持的機能とは,専門職としての知識・技術・価値・倫理を習得させることである。
5 教育的機能とは,業務遂行が可能になるように適切な業務量などに目配りすることである。
この問題も近年の国試問題の中では,難易度が低い問題だったと思いますが,第10回のような単語帳に書き込んでその知識で解ける問題ではないことが分かるでしょう。
この辺りが,今の国試は,思考を動かした勉強が大事だと思う根拠です。
第3回国試の問題から一問
第3回・問題81 社会福祉協議会に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 福祉活動指導員は,市町村社会福祉協議会に配属され,地域福祉の推進にあたる。
2 1962(昭和37)年に策定された「社会福祉協議会基本要項」は,社会福祉協議会の運営に関する官民一体の原則を明記した。
3 市町村社会福祉協議会の法制化は,在宅福祉サービスが実体化してきた1975(昭和50)年に社会福祉事業法が改正されて行われた。
4 市町村社会福祉協議会は,法律により,当該市町村区域内の社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加するものでなければならない。
5 日本の社会福祉協議会は,国民の慈善意識の高揚と富国強兵を補完するために,1908(明治41)年,内務省により設立された。
第30回国試でも出題されているものが散見されています。出題されていないものは,福祉活動指導員だけです。
正解は,選択肢4。
いつまでも使える知識は「今」のものではなく,スタンダードなものだと言えるでしょう。
試験問題は,変わるものと変わらないものが組み合わさって出題されています。
しかし,少なくとも3年間の過去問を完璧に覚えて合格できるような試験ではないことは間違いありません。
じっかり最近の試験問題にアジャストして,無駄な勉強をせず,確実な知識にしていってくださいね。
これからまた1年かけてお伝えしていきたいと思います。
第31回国試は,今までの出題の歴史を踏まえて,新しい時代への幕開けとなることでしょう。
新しいことを学べるのは,とても楽しいことです。