障害者雇用促進法に基づく事業,職名は,詳しく分からなくても何となく内容が想像できるものが多いのが特徴です。
そういうところが障害者に配慮しているところなのかなぁ,と思ったりもします。
どんなに勉強しても知らないものも出題されます。
例えば,障害者職業生活相談員です。
5人以上障害者を雇用している事業所では障害者職業生活相談員を選任することになっています。
業務は,障害者の職業生活に関する相談を行うことなどです。
過去には,障害者の雇用を促進するのがその役割である,と出題されたことがありますが,雇用促進と生活相談は何ともしっくりこないですね。
障害者職業生活相談員が分からなくて焦ると,試験委員が仕掛けたトラップにかかってしまうことになります。
とにかく落ち着くことが大切です。
今日の問題もそんなヒントがある問題です。
第28回・問題145
障害者就業・生活支援センターに関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 公共職業安定所(ハローワーク)に代わり,職業紹介業務を行っている。
2 就業支援を担当する者と生活支援を担当する者が配置されている。
3 「障害者総合支援法」に基づき設置されている。
4 2015年(平成27年)5月現在,全国で21か所設置されている。
5 在職中の障害者は,支援対象とならない。
障害者就業・生活支援センターは,「なかぽつ」と呼ばれています。
障害者就業・生活支援センターとは?
障害者の就業面の支援と生活面の支援を行います。
就業面では,就職準備支援,就職活動支援,職場定着支援等を行っています。
生活面では,日常生活の自己管理への助言,生活設計に関する助言などを行います。
それぞれを担当する職員が配置されています。
それでは詳しく見て行きましょう。
1 公共職業安定所(ハローワーク)に代わり,職業紹介業務を行っている。
就業支援&生活支援ですから,職業紹介業務は対象外です。よって間違いです。
2 就業支援を担当する者と生活支援を担当する者が配置されている。
就業支援&生活支援ですから,それらを担当する職員がいるだろうと想像できるでしょう。もちろんこれが正解です。
3 「障害者総合支援法」に基づき設置されている。
またまた根拠法が出題されました。
障害者総合支援法と障害者雇用促進法の整理
就労移行支援,就労継続支援(A型・B型) ➡ 障害者総合支援法
就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外 ➡ 障害者雇用促進法
障害者就業・生活支援センターは,「就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外」です。根拠法は,障害者雇用促進法です。よって間違いです。
4 2015年(平成27年)5月現在,全国で21か所設置されている。
これが最も想像しなければならないものです。
全国で21か所というのが,中途半端な印象があります。47か所,あるいは都道府県に1か所ずつという感じなら,ちょっと分からなくなってしまうかもしれませんね。
平成29年度では,337か所が指定されています。
よって間違いです。
5 在職中の障害者は,支援対象とならない。
職場定着支援は重要です。在職中の障害者ももちろん対象となります。
よって間違いです。
<今日の一言>
分からない時は,あきらめずに,日本語的に読んでみることをおすすめします。
漢字は表意文字です。そのため漢字の意味を考えてみると何となく見えてくることもあります。
国試で,一番避けたいのは,「分からない」「答えられない」といった結果から,投げやりで,答えを選んでしまうことです。
結果的に,そういったこともあるかもしれません。しかし,考えながら,想像しながら答えを選び出すことは,選択肢をいくつか消去できることにつながります。
ただし,一度選んだ答えは絶対に変えないことが大切です。
最新の記事
児童手当法と児童手当
今回は児童手当法と児童手当を学びます。 児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。 児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...