年々,国試問題の文字数が少なくなっています。
文字数が少なくなるということは,引っ掛けポイントも少なくなることを意味します。
余計な言い回しがない分,知識がストレートに得点につながる問題だと言えます。
以前は,知識があっても得点できない国試だったことから考えると,今は基礎力をしっかりつけた人はぞの努力は報われる国試になってきたと言えます。
一見得点できそうですが,勉強不足の人は得点できない問題は実は多いです。
第30回・問題42 現行の地方公共団体の事務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の事務は,機関委任事務,法定受託事務,自治事務の3つに分類される。
2 社会福祉法人の認可事務は,自治事務である。
3 生活保護の決定事務は,法定受託事務である。
4 児童扶養手当の給付事務は,自治事務である。
5 養護老人ホームへの入所措置は,機関委任事務である。
この問題は「福祉行財政と福祉計画」で出題されたものです。
答えは,選択肢3です。
この問題は多くの人が思うほど,簡単ではあまりません。
なぜならこの問題は,直近3年間の過去問に類似問題がないからです。
こういうところに基礎知識の違いが出てきます。
類似問題は,旧カリ時代までさかのぼらなければなりません。
第20回・問題70 次の記述のうち,地方公共団体が行う自治事務として正しいものを一つ選びなさい。
l 就学に関する事務。
2 生活保護の決定と実施に関する事務。
3 精神障害者に対する本人の同意によらない入院措置に関する事務。
4 「感染症予防法」に基づき行われる健康診断及び就業制限に関する事務。
5 一般旅券(パスポート)の発給に関する事務。
答えは2です。第30回と一緒ですね。
まず基礎知識とは,地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務しかないということです。
過去問解説を見ると,団体委任事務がどうのこうの,機関委任事務がどうのこうの,とか書かれているので,混乱しますが,自治事務と法定受託事務しか現在はありません。
勉強不足の人は,第30回国試の問題では,
混乱したまま
機関委任事務が含まれた選択肢を選びがちになります。
2年連続で出題されることは少ないので,次に出題されるのは数年先ということになると思いますが,ここで覚えておきたいのは,
生活保護の自立の助長に関する指導は,自治事務に当たります。
機械的に,生活保護に関する事務は,法定受託事務である,と覚えていては引っ掛けられます。
最新の記事
児童手当法と児童手当
今回は児童手当法と児童手当を学びます。 児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。 児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...