今まで30回行われた社会福祉士国試を振り返る~新しいスタートに向けて
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過去は未来につながっている~第20回国試から
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社会福祉士国試は,少しずつ重なり合いながら少しずつ形を変えながら進化していることが分かったでしょう。
社会福祉士の国家試験問題は,大きく分けると理論系の問題と法制度に関する問題があります。
理論系科目の代表は,「心理学理論と心理的支援」,そして「社会理論と社会システム」です。
知識がそのまま実力になりにくい問題が多く出題されてきました。
なぜなら同じような内容でありながら,言い回しを変えて出題されるからです。
しかし,昨今の国試問題は,問題文がどんどん短くなっているので,基礎をしっかり押さえれば,得点しやすい傾向の出題に変わってきています。
現在は,問題のプール制というものを採用しています。
旧カリキュラム時代は,その年に作成して出題されなかったもの問題はすべて破棄していました。
今は,破棄せずに保存されています。それも使いながら,国試問題を作ります。これが問題のプール制です。
過去に非常に似た問題がありますが,もしかすると,そういう問題は,同じ試験委員が一緒に作成したもので,一つは以前に出題して,一緒に作った類似問題が出題されているのかもしれません。
問題のプール制を採用している現在は,十分にあり得ますし,また,プールされている問題も膨大なものになっているはずです。
第30回・問題11 集団における行動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会的ジレンマとは,集団的な討議を行うことによって,より安全志向な結論が得られやすくなることをいう。
2 ピグマリオン効果とは,集団において多数派の意見や期待に合わせて,個人の意見や行動が変化することをいう。
3 傍観者効果とは,緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されることをいう。
4 同調とは,他者の存在によって作業の効率が向上することをいう。
5 コーシャス・シフトとは,集団のメンバーの多くが個人的利益を追求した行動をとることで,集団全体にとって不利益な結果となることをいう。
第22回・問題9 社会的な行動に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 緊急の援助を必要としている人がいる場面で,目撃者が多数いることによって援助の手が差し伸べられにくくなる現象をピグマリオン効果という。
2 教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象を傍観者効果という。
3 周囲で見ている人がいると作業が早くなるなど,個人の作業成績が向上する現象を同調という。
4 集団の成員の多くが個人の利益を追求することで,集団全体として大きな不利の結果が生じることを社会的ジレンマという。
5 集団の多数派の意見や期待に影響されて,同じ意見や行動をとることを社会的促進という。
とてもよく似ていますね。
第30回は,「傍観者効果」が正解。
第22回は,「社会的ジレンマ」が正解。
傍観者効果は,どの参考書にも掲載されていますが,現行カリキュラムで出題されているのは,このたった2回しかありません。
つまり,過去3年間の問題の知識だと,この問題は解けないことになります。
過去3年間の過去問の中からももちろん出題されます。
第26回・問題10 集団の機能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会的促進は,未学習で複雑な課題については,動因水準が高まるほど,顕著に生じる。
2 PM理論によれば,どのような集団でも,PとMの両機能が低いpm型リーダーが,片方の機能だけ高いPm型やpM型よりも優れている。
3 内集団ひいきは,初対面の人々を,何かの好みのようなささいな基準でその場で2グループに分けた即席の集団間では生じることがない。
4 集団のサイズはある大きさまでは同調を促進させるが,あるサイズ(課題や被験者によって異なる)以上では差が生じないか,あるいは減少をもたらす。
5 集団思考(groupthink)は,集団の凝集性が高ければ高いほど生じにくい。
内集団バイアスは,内集団ひいきと同じで,自分が属している集団を好ましく思うことを言います。
第28回・問題11 個人と集団の関係に関する次の記述のうち,内集団バイアスの説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 各個人が,自分が属する集団の大多数と自分の意見が違う場合に,自分の意見を変えて多数の意見に従うこと。
2 各個人が,自分が属する集団の成員のことを,それ以外の集団の成員よりも好意的に評価すること。
3 各個人の意見が,集団内で発せられる極端な意見に影響されて,極端な方向に動いてしまうこと。
4 各個人が,自分が属している集団に魅力を感じていること。
5 各個人が,自分が属している集団の成員が共有する,規範や思考様式をもつこと。
第26回国試を押さえていれば,第28回国試のこの問題は,正解は2だと分かるでしょう。
第28回の問題は,
1 同調
2 内集団バイアス(内集団ひいき)
3 無難な方向に動く場合 ➡ コーシャスシフト 危険な方向に動くこと ➡リスキーシフト
4 凝集性
5 集団規範
第30回の問題
1 社会的ジレンマ
2 ピグマリオン効果
3 傍観者効果
4 同調
5 コーシャス・シフト
重なっているのは,同調及びコーシャス・シフトです。
しかもいずれも間違い選択肢です。消去はできますが,1~3は,過去3年間の過去問の知識では選べません。
これが「少しずつ重なっている」の意味です。
少しずつ重なっていますが,正解選択肢は出題されていません。
第26回と第28回といった関係にある問題もありますが,それは本当にわずかです。
過去3年間の過去問で合格できる,ということをアドバイスするなら,完璧にその証拠を示してもらいたいです。
国試問題は,
少しずつ重なって出題されて,少しずつ形を変えて出題されます。
それに対応するためには,過去問を分析して作られている参考書です。
現行カリキュラムの過去問で出題された内容は押さえられています。
過去問で,合格するためには,同じ分量の過去問が必要です。
しかし,理論系科目はそれで対応できますが,法制度は対応できません。
もし,学校で新しい法制度に修正して,過去問を提供してくれているなら,それは使えます。積極的に活用しましょう!!
私たちは,国試問題のデータを豊富に持っています。
過去問をよく知っていると
3年間の過去問を3回解けば合格できるよ
といったことは,恐ろしくて,口に出すことはできません。
第30回・問題11は,過去問だけの知識で正解するためには,第22回・問題9の知識が必要です。