試験対策の先生は「○○に目を通しておいてください」(○○は法律,白書など)と言います。
どこをどう見ていいのか,多くの人は分からないはずです。
先生は,目を通しておけば,国試で思い出せるのかもしれませんが,多くの人はそういうわけにはいきません。
これから,今年の国試問題の講評などがいろいろ発表されていくと思います。
今までの経験だと,「これは,どこどこに書いてあった」,「これは,第○回に出題されているので,過去問をていねいにやっていれば簡単だった」という講評が多いように感じます。
それはそれで正しいことですが,だからと言って「問題○の難易度は高くない(つまり易しい)」といった講評は,聞いていて気分が良くないなぁ,といつも思います。
先生から見ると易しめに見える問題でも,実際に試験会場で解いた受験生は解けない,という問題もあります。
それは,他の選択肢にいろいろな仕掛けがあるからです。
私たちは,過去問を使いながら,実際にどのように覚えていくのかをお伝えしていきたいと思います。
私たちチームfukufuku21は,第30回国試問題では,以下のような問題が,意外と解けない問題の代表だととらえています。
問題74 医療法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院又は診療所の管理者は,入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
2 市町村は,地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し,地域医療構想を策定することができる。
3 病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能の三つである。
4 一般病床,療養病床を有する病院又は診療所の管理者は,2年に1度,病床機能を報告しなければならない。
5 病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合には,医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。
この問題では,選択肢5が正解ですが,これを正解にするのは,難しいです。消去法で答えをあぶり出すタイプの問題だからです。
それよりも,着目したいのは,選択肢2です。地域医療構想を策定するのは都道府県です。医療に関するものは,基本的に市町村の役割ではない,という基本があります。
これに沿って考えれば,消去できたはずです。そうすると,答えはあぶり出すことができます。
しかし,いかにも選択肢2は正しそうに見えます。しっかり押さえておきたいのは,
医療に関するものは,基本的に市町村の役割ではない!!
覚えるコツは,基本的なものを押さえて,それに合わないものだけを押さえることです。
個別に覚えていると,大事な時に迷います。
試験は,迷うのが普通です。人生と同じですね。
問題96 民生委員法で規定されている民生委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員は,その職務に関して,市町村長の指揮監督を受ける。
2 民生委員には,給与が支給される。
3 民生委員には,定年がある。
4 民生委員の指導訓練は,都道府県知事が実施する。
5 民生委員は,都道府県知事が定める区域ごとに,地域ケア会議を組織する。
民生委員,児童委員が指揮監督を受けるのは,都道府県知事。
専門職の研修は,都道府県。
民生委員は,専門職なのか,と思う人もいるかもしれませんが,歴史的に見ても,かつては保護事務を行う補助機関であったことからも分かりますが,民間人に委嘱されていますが,専門職です。
保護司も同じです。
この問題の答えは,選択肢5が正解です。
私たちは,過去問を使いながら,特に間違いやすいものについて,普遍性のある覚え方をお伝えしていきたいと思います。
<今日のまとめ>
<児童委員>
児童委員は、その職務に関し、都道府県知事の指揮監督を受ける。
市町村長は、児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。
都道府県知事は、児童委員の研修を実施しなければならない。
<民生委員>
民生委員は、その職務に関して、都道府県知事の指揮監督を受ける。
市町村長は、民生委員に対し、援助を必要とする者に関する必要な資料の作成を依頼し、その他民生委員の職務に関して必要な指導をすることができる。
都道府県知事は、民生委員の研修を実施しなければならない。
<保護司>
児童委員・民生委員・保護司の整理
<児童委員>
児童委員は、その職務に関し、都道府県知事の指揮監督を受ける。
市町村長は、児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。
都道府県知事は、児童委員の研修を実施しなければならない。
ここから分かること
・指揮監督を受けるのは,市町村ではない。
・研修事業を実施するのは,市町村ではない。
➡ 市町村は,専門的,かつ高度な判断が求められる業務は行わない。
➡ 市町村は,専門職を対象とする養成研修は行わない。
このような法則をしっかり押さえていくことで,国試本番の得点力となります。
補足
問題96の「民生委員に定年がある」について
これに引っ掛けられた人がいたと思います。
定年が定められているのは,法ではなく通知です。
現場を知っているとこんなところに引っ掛けられます。「根拠法は・・・」といったことが勉強の時に必要なのは,こういうところに意味があります。
この出題は
https://mainichi.jp/articles/20170708/k00/00e/040/277000c
この記事にインスパイアされたのかもしれません。