更生保護制度は,順番では最後の科目になるので,おそらく多くの人は最も勉強に時間をかけない(かけていられない)科目かもしれません。
就労支援サービスと更生保護制度は,2科目で1群となり,8問中1点得点出来れば,いわゆるドボンは免れます。
しかし,更生保護は,出題される法律は,基本的には,更生保護法と医療観察法しかなく,極めて覚えるアイテムは少ないので,1点どころか3点,あるいは4点(満点)を取ることも可能だと思います。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題147
更生保護制度の概要に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい 。
1 更生保護は,社会の保護を目的とすることから,社会福祉とは方法は異なっても対象とする者は全く同じである。
2 更生保護の対象者のうち18歳未満の者は,児童福祉法が該当する児童に該当するから,基本的には児童相談所が主務庁となる。
3 更生保護とは,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることである。
4 更生保護は,刑事司法の一翼を担うが,脱施設化の社会的趨勢の中で,地方公共団体が行う法定受託事務とされている。
5 更生保護は,犯罪をした者及び非行のある少年が,再び犯罪をすることを防ぎ又はその非行をなくし,善良な社会の一員として自立し,改善更生することを助けるものである。
知らないといやだなぁ,と思うような内容ですが,知っているととてもシンプルな問題です。
というか,勉強した人なら,消去法ではなく,「答えはこれだ」と思えた問題化もしれません。
それでは,詳しく見て行きましょう。
1 更生保護は,社会の保護を目的とすることから,社会福祉とは方法は異なっても対象とする者は全く同じである。
おかしな問題です。
更生保護は,犯罪者,非行少年が対象です。社会福祉の対象はすべての国民です。
よって間違いです。
2 更生保護の対象者のうち18歳未満の者は,児童福祉法が該当する児童に該当するから,基本的には児童相談所が主務庁となる。
18歳未満の者は,児童福祉法の対象です。そのため主務庁は児童相談所です。
しかし,保護観察となった児童(更生保護の対象者)は保護観察所が主務官庁となります。
よって間違いです。
更生保護は,児童福祉法による児童相談所の事務の範囲外です。シンプルに考えてみると良いでしょう。
3 更生保護とは,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることである。
心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることを目的としているのは,更生保護ではなく,医療観察制度です。
4 更生保護は,刑事司法の一翼を担うが,脱施設化の社会的趨勢の中で,地方公共団体が行う法定受託事務とされている。
更生保護制度は,国の責任で行うものです。法定受託事務には成り得ません。
よって間違いです。
5 更生保護は,犯罪をした者及び非行のある少年が,再び犯罪をすることを防ぎ又はその非行をなくし,善良な社会の一員として自立し,改善更生することを助けるものである。
これが正解です。
更生保護は,社会内処遇です。国試では何度も矯正施設でとか別なものが出題されていますが,「社会内処遇」です。しっかり覚えておきましょう。
<最終チェック~更生保護に関する類似問題>
http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/08/6.html
http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/08/20170808.html
最新の記事
児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者(児発管)とは,障害児通所支援及び障害児入所支援で,個々のこどもや家族のニーズに応じた一連のサービス提供プロセスを管理する支援提供の責任者です。 業務には,個別支援計画があります。 障害者総合支援法に規定されるサービス管理責任者(サビ管)に相当します。 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ソーシャルワークは,外国生まれです。 これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。 しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか? ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語は...
-
国家試験では,内容が重複しないように問題を構成します。 ほかの問題がヒントになってしまうためです。 これまでの社会福祉士の国家試験でもそのように出題されてきました。 ところが第37回では,同じ内容のものが複数の問題に出題されました。 試験を実施する社会福祉振興・試験センターが最終...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
歴史が苦手な人は多いですが,イギリスの歴史は覚えておきたい歴史の代表です。 今回のテーマは,ブース,ラウントリーの貧困調査です。 第34回国家試験までの出題回数を調べてみると ブース 12回 ラウントリー 16回 どちらの出題頻度も高いですが,ラウントリーのほうがより出題頻度が...