第15回
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91
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第16回
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85
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第17回
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83
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第18回
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80
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第19回
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81
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第20回
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87
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第21回
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85
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第22回
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84
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第23回
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81
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第24回
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81
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第25回
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72
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第26回
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84
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第27回
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88
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第28回
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88
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第29回
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86
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第30回
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99
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第31回
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89
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回によって上下しているのがわかります。
受験される方は,何点取ったらよいかわからないのが頭の痛いところでしょう。
しかし,国試を実施している社会福祉振興・試験センターは,「合格基準は6割程度」だと公表しています。
それにもかかわらず,点数が上下しているのは,国試問題の難易度によって補正しているからにほかなりません。
覚えるべき内容,量ともに変化しているわけではありません。
6割程度の得点ができる実力があれば,国試は突破できます。
試験センターが目指している理想の国試は
受験者の上位30%が90点以上の得点になること
第26回国試以降は,この理想の国試を追い求めていることをうかがい知ることができます。
微調整がうまくいかず,第30回では99点という極めてハイレベルなものになりましたが,試験センターでは,最も低かった72点と最も高かった99点の国試のデータを取ることができたのは,大きな収穫だったと言えます。
どの程度の問題を出題すれば,どのくらいの人が正解できるのか,といった予測をより正解にするための基礎データを蓄積できたと考えられます。
国試は,とても難しい問題と多くの人が正解できる問題が混在しています。
とても難しい問題は,誰もが正解できないので,解けなくてもよい問題です。
多くの人が解ける問題は,多くの人が正解できるので,正解できないと上位30%に入ることができません。
チームfukufuku21が推測しているのは,すべての問題の正解率をはじき出して,その数値から合格基準点を補正しているのではないかということです。
第30回の例では,合格基準点は99点だったのは,すべての問題の平均正解率が66%だったことから,90点に1.1をかけて99点となったのではないかという推測です。
合格率のこともあるので,実際にはこれほど単純ではないとは思います。
しかし,合格基準点の設定を科学的根拠に基づいて行うなら,このやり方は有効だと考えます。
さて,ここからが本題です。
誰にも解けない問題とは,教科書や参考書に書かれておらず,解答テクニックや一般常識では解けない問題です。
この手の問題は,国試では必ず出題されます。
正解率0%の問題があっても,正解率100%の問題が同数あれば,平均の正解率は相殺されるので,何ら問題が生じません。
実際には正解率0%の問題も正解率100%の問題も存在しません。
正解率が低い問題であっても,マーク式なので正解できる人はいます。
正解率が高い問題であっても,つまらないミスや見落としなどで,正解できない人はいます。
国試合格のためには,つまらないミスや見落としなどが致命的になる理由はここにあります。
多くの問題は,やや簡単,やや難しい問題です。
国試は,ここで大きな差が生じます。
勉強した人は解ける
勉強が足りない人は解けない
直近3年間の過去問を完璧にするだけで合格できる試験であってはなりません。
第31回国試の心理学理論と心理的支援です。
問題8 次の記述のうち,内発的動機づけによる行動として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 観衆から拍手を受けることが楽しくて,駅前での演奏活動を毎週続けた。
2 おこづかいをもらえることが嬉しくて,玄関の掃除を毎日行った。
3 出席するたびにシールをもらえることが楽しくて,ラジオ体操に毎朝通った。
4 絵を描くことが楽しくて,時間を忘れて取り組んだ。
5 成功すれば課長に昇進できると言われ,熱心に仕事に取り組んだ。
問題9 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 体制化における閉合の要因は,錯視の一つである。
2 形として知覚される部分を地,背景となる部分を図という。
3 仮現運動は,知覚的補完の一つである。
4 大きさの恒常性とは,網膜に映し出されたとおりに大きさを知覚することである。
5 圧刺激によって光を感じ取る場合,この刺激を適刺激という。
問題10 記憶に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 手続き記憶とは,覚えた数個の数字を逆唱するときに用いられる記憶である。
2 感覚記憶とは,自転車に乗ったり楽器を演奏したりするときの技能に関する記憶である。
3 展望的記憶とは,「いつ」,「どこで」,「何をしたか」というような,個人の経験に関する記憶である。
4 エピソード記憶とは,「明日の3時に友人と会う」というような,将来の予定や約束に関する記憶である。
5 意味記憶とは,「日本の都道府県の数は47である」というような,一般的な知識に関する記憶である。
問題11 防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 父から叱られ腹が立ったので弟に八つ当たりした。これを置き換えという。
2 攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。これを補償という。
3 苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。これを投影という。
4 飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。これを合理化という。
5 失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。これを昇華という。
問題12 ストレス対処法(コーピング)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 試験の結果が悪かったので,気晴らしのため休目に友人と遊びに出掛けた。これは,問題焦点型コーピングである。
2 食事介助がうまくいかず落ち込んだが,先輩職員に具体的な方法を教えてもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
3 事例検討会で発表することになったが,うまくできるか心配になったので深呼吸をした。これは,問題焦点型コーピングである。
4 残業が続き自分一人ではどうにもならなくなったので,上司に仕事の配分の見直しを依頼して調整してもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
5 利用者との面接がうまくいかなかったので,新しいスキルを身につけるため研修会に参加した。これは,問題焦点型コーピングである。
問題13 心理検査に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 MMPIでは,単語理解のような言語性の知能を測定する。
2 PFスタディでは,欲求不満場面での反応を測定する。
3 TATでは,インクの染みを用いた知覚統合力を測定する。
4 WAISでは,抑うつの程度を測定する。
5 CMIでは,視覚認知機能を測定する。
問題14 心理療法に関する次の記述のうち,行動療法に基づく技法に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントが即興的にドラマを演じ,自発性や創造性を高める。
2 問題が起きなかった例外的な状況に関心を向けることで,クライエントの問題解決能力を向上させる。
3 自由連想法を使用し,クライエントの無意識の葛藤を明らかにする。
4 不安喚起場面に繰り返し曝すことで,クライエントの不安感を低減させる。
5 課題動作を通じ,クライエントの体験様式の変容を図る。
この問題の下敷きになっているのは,第27回国試です。
第27回
問題8 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 目や耳などの感覚器には,光や音以外にも「眼球をおすと光が見える」などの感覚を生じさせる刺激があり,こうした刺激を適刺激という。
2 網膜像から対象物の形を知覚するには,認識対象の形を背景から浮き立たせる「図と地の分離」が必要である。
3 錯視は感覚器の生理学的な構造の影響で生じており,脳の中枢での推論過程などの影響や,刺激の物理的要素による影響はない。
4 網膜に映る大きさが同じであれば同じ大きさに見えることを,大きさの恒常性という。
5 パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。
問題9 パーソナリティに関する次の記述のうち,特性論の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の一つの証拠となっている。
2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。
3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。
4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。
5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。
問題10 防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 あるつらい体験をした。その後,その体験に関する記憶があいまいになった。これを退行という。
2 飛行機事故をいつも心配していた。しかし,事故の確率は極めて低いと考え,不安な気持ちを静めた。これを取り入れという。
3 自分の欲しかったものが手に入らず悔しかった。それで,あんなものは大した価値がないと思い気持ちを落ち着けた。これを抑圧という。
4 競争心が高まりライバルを攻撃したくなった。しかし,それは不適切だと感じ,ボクシングの練習で気持ちを解消した。これを昇華という。
5 ある友人に批判的な気持ちになった。しかし,そんな気持ちは不適切だと思い,逆に優しい言葉をかけた。これを合理化という。
問題11 ストレスとストレス対処法(コーピング)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ある友人との人間関係が悪化して悩んでいたが,機会をとらえ,仲直りし,悩みが解消した。これは問題焦点型コーピングである。
2 音楽の発表会であがりそうになったが,課題曲を思い浮かべ演奏のリハーサルをしていたら気分が楽になった。これは情動焦点型コーピングである。
3 試験前に緊張したが,深呼吸をして,試験が終わった後の楽しい旅行のことを思い浮かべたら,落ち着いてきた。これは問題焦点型コーピングである。
4 仕事量が多く心身の調子が悪くなったので,上司に相談し仕事量を軽減したら回復した。これは情動焦点型コーピングである。
5 仕事で小さいミスをして気分が落ち込んでいたので,ある友人とカラオケに行ったら元気が出てきた。これは問題焦点型コーピングである。
問題12 人格検査に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 P-Fスタディは,愛着に対する特徴的な反応様式や攻撃に対する傾向を知るのに役立つ。
2 TAT(主題統覚検査,絵画統覚検査)は,提示された絵を見て作った物語の内容から,隠された欲求やコンプレックスの存在を明らかにする。
3 ロールシャッテストは,被検査者の視覚・運動ゲシュタルト機能を通して人格特徴の把握及び理解を目的とする。
4 東大式エゴグラム(TEG)は,抑圧・不安・達成の三つの自我状態で構成され,各自我状態のバランスから性格分析を行う。
5 内田クレペリン精神検査は,積木構成課題結果の心的活動の調和・均衡の様態から,種々の場面で適切な行動を示すことができるかどうかについて見立てる。
問題13 来談者中心療法におけるクライエントの「感情の明確化」を用いた力ウンセラーの応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。(以下CIはクライエント,Coはカウンセラーとする。)
1 CI:「会社を解雇されたのですが,次に何の仕事を探せばよいのかが分からない…」
Co:「この町にはハローワークがあります。一度行ってみてはいかがでしょうか…」
2 CI:「当たり前の仕事を当たり前にして,普通に生きればよいということが分かってきたんです…」
Co:「うーん,なるほど…」
3 CI:「私の思春期は今お話したとおり最悪でした。先生の思春期はいかがでしたか?」
Co:「私にも思春期はありましたが,ここではあなたの思春期についてお話したいと思います」
4 CI:「母親のことを思い出すと,涙が止まりません…」
Co:「よろしければそれについて,もう少し具体的にお話いただけませんでしょうか?」
5 CI:「私はもう何も信じられません…会社を辞めたいとも思うのですが…」
Co:「まだ心の整理がつかず,つらい-思いをしておられるんですねえー」
問題14 心理療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自立訓練法では,身体感覚への特有の能動的注意集中を通して,心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度を作っていく。
2 森田療法では,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止め,心身の不調や症状が回復したのちに目の前にある作業に取り組む。
3 認知的再体制化を中心とした認知行動療法では,クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し,その認知的枠組みや信念を修正する。
4 箱庭療法は,言葉では言い尽くせないような象徴的表現が可能であり,強い認知体験を伴って適度の意識化を促し,治療を進展させることができる。
5 来談者中心療法では,クライエントの建設的なパーソナリティ変化が起こる,セラピスト側の条件として分析的眼差しが挙げられる。
7問中4問が同じ範囲の問題です。
多くの人が手にする3年間の過去問(この場合は,28・29・30回)よりも1回前の第27回が下敷きになっているところがポイントです。
<今日の一言>
国試は,やや簡単,やや難しいという問題が大半です。
しかし,これらは参考書等で対応可能です。
参考書は,国試に出たものを中心にまとめられます。
今年度の参考書はまだ発売されていません。
参考書の今年度版と昨年度版の違いは,今年の国試に出題されたものを加えることと数値を新しくすることです。
しかし,国試は
2年連続で出題されるものは少ない。
という傾向があります。
加わった部分の多くは必要ないものだと言えます。
2年連続で出題されるとしたら,3年も4年も連続して出題されています。
数値は,細かくは出題されません。
1位と2位が年度によって入れ替わるような問題も出題されません。
最新の法制度は,すぐは出題されるものは極めて少数です。
しかも法は,成立してから施行されるまでは時間があります。
これらの理由から,昨年版の参考書でも十分対応可能です。
今なら,ネットで昨年版が多く出回っています。
最新版で勉強しましょう,という人は,国試を知らない,あるいは出版社の息がかかった人と言えるでしょう。
6割ラインを超えるためには,確実に点数を取りたい問題で,確実に点数を取ることが大切です。
どうしても動向が気になる,という人もいるでしょう。
そういう人は,模擬試験で十分対応可能です。
今手元にある参考書を7~8割程度押さえられれば,国試では合格基準点を超える知識量になります。