前回までは,教育システムや目標管理を含めた人事管理を取り上げました。
OJT,OFF-JTなど専門用語がされていましたね。
目標管理では,考課者に注意すべきものとして,ハロー効果,寛大化,中心化などが出題されていました。
こういったものは,日常生活ではあまり使われることのないものなので,勉強しない人は,得点できないものだと思います。
さて,今回からは,サービスマネジメント論,つまりサービスの質管理を取り上げていきたいと思います。
それでは今日の問題です。
第24回・問題11 福祉サービスの管理運営を考える上で基礎となるサービスマネジメント論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 サービスにとって重要な要素は,人と人とが接する部分であり,施設・設備などの物的要素はサービス水準には影響を与えない。
2 サービスが集合的に提供されていても,同じ場にいる他の利用者が,そのサービスの水準に影響を与える要素にはなりにくい。
3 サービスは,無形性や同時性といった特徴があり,有形の製品と比較して,利用者が質の評価を行うのは難しい。
4 サービスの提供者が適切なスキルを有していれば,状況が変わっても,提供されるサービスの水準が変動することはない。
5 サービスの質を評価する次元のなかに,利用者やその家族の満足を含めることは妥当ではない。
まずサービスマネジメント論という言葉で,ペースが狂わされてはいけません。
サービスマネジメント論は勉強したことがないと思うと焦ります。
しかし,内容は落ち着いて考えることで答えは見えてきます。
国試で焦ることは絶対に避けなければなりません。
この問題の答えは,
3 サービスは,無形性や同時性といった特徴があり,有形の製品と比較して,利用者が質の評価を行うのは難しい。
無形性と同時性というところに引っ掛けポイントはありません。
それもかかわらず,ここが違っているのではないのか,というと間違えます。
国試問題は多くの場合,それほど複雑には作られません。
無形性とは,サービスに形がないということです。
同時性とは,サービスは提供と消費は同時に行われるという意味です。
言われてみれば,「あぁ,そういうことか」と思うでしょう。
しかし,国試会場では教えてくれる人はいません。
すべて自分で考えないといけません。
他の選択肢も見てみましょう。
1 サービスにとって重要な要素は,人と人とが接する部分であり,施設・設備などの物的要素はサービス水準には影響を与えない。
こういったものは,ほかのものと置き換えて考えてみるとよいです。
例えばホテル。
汚いホテルよりも清潔なホテルの方が気持ちが良いです。
例えばレストラン。
汚いレストランよりも清潔なレストラン。
サービスの受け手には,「事前期待」と呼ばれるものがあります。
事前期待は,また改めてお知らせしますが,事前期待が高いと満足する水準は高まり,事前期待が低いと満足する水準が低くなります。
2 サービスが集合的に提供されていても,同じ場にいる他の利用者が,そのサービスの水準に影響を与える要素にはなりにくい。
国家試験の会場は,しーんと静まりかえっていたり,ほかの人が発する音が大きく聞こえたり,普段にはない環境の中で受験しなければなりません。
ほかの人の影響は大きいです。
4 サービスの提供者が適切なスキルを有していれば,状況が変わっても,提供されるサービスの水準が変動することはない。
人的サービスは,サービスの受け手による協力も大きな影響を与えます。
5 サービスの質を評価する次元のなかに,利用者やその家族の満足を含めることは妥当ではない。
サービスの質の評価には,サービスの受け手の満足は重要です。
<今日の一言>
国試会場では,調べ物ができません。
ヒントを教えてくれる人もいません。
すべて自分で考えなければなりません。
国試には,知恵が必要です。
知識は必要十分条件ではありません。
勉強する時も知恵をつけるための訓練が必要です。
知らないものは,自分で考えてみてから,調べることです。
大体の意味さえ合っていれば,OKです。
最新の記事
ノーマライゼーションの国家試験問題
今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。 前説なしで,今日の問題です。 第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。 2...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
バートレットは,ソーシャルワークの共通基盤として 「価値」「知識」「介入(技術)」 を挙げています。 ソーシャルワーカーなら,フィールドが違えど,共通してもっているもの,という意味です。 3 つの中のうち「 価値 」は,「相談援助の基盤と専門職」で中心的...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ノーマライゼーションとは,「ノーマル(普通)」の派生語で「ノーマル化する」という意味です。 「ノーマル化する」のは,障害者の生活です。 世界で最初にノーマライゼーションを提唱したのは,デンマークのバンク-ミケルセンです。 1950年代のデンマークでは,保護の名のもとに...
-
繰り返しになりますが,ソーシャルワークは欧米生まれです。 なじみのない外国語がたくさん使われますが,苦手だと思うととても損です。 さて,今日のテーマは「ジェネラリスト・アプローチとは何だろう?」です。 まずは前回の復習からです。 ソーシャルワークは,ケースワーク,...
-
ソーシャルワーカーは,場面によってさまざまな役割を演じます。 今日は前説なしに,ソーシャルワーカーの役割についての問題です。 第 31 回・問題 107 ソーシャルワークの援助過程におけるソーシャルワーカーの役割に関する次の記述のうち,最も適切なもの...
-
様々なアプローチが第31回国試までに出題された回数を整理すると以下のようになります。 アプローチ名 出題回数 ・心理社会的アプローチ 9 ・機能的アプローチ 4 ・問題解決アプローチ ...
-
国試での出題実績のあるアプローチは以下の12種類です。 出題基準に示されているもの ・心理社会的アプローチ ・機能的アプローチ ・問題解決アプローチ ・課題中心アプローチ ・危...