2019年11月21日木曜日

虐待防止法に規定される通報義務

虐待防止法は,児童,高齢者,障害者を対象とする3法があります。

それぞれの虐待は以下のように規定されています。


児童虐待防止法
・保護者による虐待。
高齢者虐待防止法
・養護者による虐待。
・養介護施設従事者等による虐待。
障害者虐待防止法
・養護者による虐待。
・障害者福祉施設従事者等による虐待。
・使用者による虐待。


対象はバラバラですが,すべてに共通点があります。

対象は異なっていても,すべてに共通するのは,虐待を受けたと思われる者を発見した者には,通報義務(児童虐待防止法の場合は通告)があることです。

虐待があったかどうかの事実には関係なく,「虐待を受けたと思われる」者を発見したら通報しなければなりません。

児童虐待防止法
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
高齢者虐待防止法
養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。

養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
障害者虐待防止法
養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。

障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。

使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならない。



それでは今日の問題です。

第29回・問題135 事例を読んで,高齢者虐待に関するL社会福祉士の対応として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕
 L社会福祉士は,S町にある特定施設入居者生活介護事業所の管理者をしている。ある日,最近入居したMさんについて,複数の入居者から「昨夜,Mさんが廊下を歩き回ってうるさかった」との苦情を受けた。Mさんを担当したA介護職員に状況を聞くと,「夜勤時,Mさんが大声を出して歩き回っていたので,一晩部屋から出られないように鍵をかけておいた」との説明があった。 

1 速やかにS町へ通報をすることとした。

2 閉じ込めたことは,やむを得ない対応と判断した。

3 Mさんの家族に電話で状況を説明し,了解を求めることとした。

4 Mさんの行動について,関係する職員とその要因を分析しつつ,対応方法を検討することとした。

5 外部に情報が広がらないように,ボランティアの受入れを中止することにした。


通報義務があるので,

1 速やかにS町へ通報をすることとした。

は確実に正解でしょう。

もし,これを虐待だと思わないと思うなら,要注意です。

虐待の種類は,ネグレクト及び心理的虐待にあたります。

管理者として行うことは,再発防止です。
つまりもう一つ正解は選択肢4です。

4 Mさんの行動について,関係する職員とその要因を分析しつつ,対応方法を検討することとした。

この問題の正解は2つなので,答えは選択肢1と4ということになりますが,もし正解が1つであったなら,選択肢1を選ばなければなりません。

虐待があったかどうかの事実確認よりも通報(児童の場合は通告)が優先されます。


<今日の一言>

国試が終わったら,各社から解答速報が発表されます。
ところが会社によって答えが割れるものが必ず数問あります。

この問題もその一つです。1を正解にせず,3を正解にした会社があったのです。

人によっては,ドキドキするので自己採点はしない,という方もいます。
ドキドキするような点数ではなく,余裕の点数を取りたいものです。

それはさておき・・・

事例問題での注意点です。

ソーシャルワーク系,しかも初期対応に関する事例問題は,多くの場合,事実確認に関するものが正解になります。

しかし,

虐待に関する事例問題の場合は,最も優先されるのは「通報」です。通報義務があるからです。

虐待事例なのに一般事例と同じように事実確認を優先すると間違います。十二分に気を付けなければなりません。

事例問題のスタイルをとっていても,法の知識が問われているものがあることを忘れないようにしましょう。

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