2019年11月1日金曜日

地域密着型サービスとは

ILO102号条約(1951年)を知っていますか?

ILO(国際労働機関)による社会保障に関する最低保障を定めたものです。

日本は,1976年に批准しています。

条約の内容は,

①医療給付
②傷病給付
③失業給付
④老齢給付
⑤業務災害給付
⑥家族給付
⑦母性給付
⑧廃失給付
⑨遺族給付

介護給付は含まれていません。

介護は,1951年の時点では想定されていなかったからです。

そういった意味で,介護は新しい福祉ニーズだと言えます。

古典的な福祉ニーズは,貧困です。
ニーズの充足のためには,金銭給付が有効です。

介護は,新しい福祉ニーズです。
金銭給付(現金給付)だけでは,ニーズは充足しません。
なぜなら,サービスが必要だからです。

お金は必要ですが,提供されるサービスがなければニーズは充足しません。

社会の変化によって,福祉ニーズは変化します。
10年後には,あるいは5年後には,今は想像もつかない福祉ニーズが生じているかもしれません。

新カリキュラムでは,これを「ニューニーズ」と表現しています。
ニュービーズではなく,ニューニーズです。

さて,現在国が目指しているのは,以下に要介護状態にさせないか,です。

試験委員は,様々な問題を作っていると思いますが,それを選ぶのは,試験委員ではありません。国試を実施する社会福祉振興・試験センターです。

そのため,国試には国の思惑が反映されます。

ありきたりの話ですが,そこを意識すると,得点力は確実にアップすることでしょう。
ぜひ意識してみてください。


それでは今日の問題です。

第26回。問題13 地域密着型サービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域密着型サービスは,事業所が存在する市町村の住民を対象としているため,他の市町村の住民は利用することはできないとされている。

2 地域密着型サービスの費用の財源は,国及び地方公共団体の公費負担のほか,第1号被保険者の保険料が充てられており,第2号被保険者の保険料は充てられていない。

3 市町村は,厚生労働大臣が定める基準により算定した額に代えて,その額を超えない額を,当該市町村の地域密着型介護サービス費の額とすることができる。

4 小規模多機能型居宅介護とは,通所介護,短期入所,訪問介護及び訪問リハビリテーションの4つのサービスを提供する事業である。

5 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは,夜間の巡回訪問により,介護その他の生活上の世話をするものである。



地域密着型サービスは,2005年の法改正によって創出されたもので,現在は以下のものがあります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護
夜間対応型訪問介護
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
複合型サービス

地域密着型サービスの特徴は,事業所の指定権限は市町村がもっている点です。

話を戻して,問題の答えは選択肢3です。

3 市町村は,厚生労働大臣が定める基準により算定した額に代えて,その額を超えない額を,当該市町村の地域密着型介護サービス費の額とすることができる。

いかにも地域密着型サービスという感じです。
介護保険にかかわる事務は,自治事務です。

それでは,ほかの選択肢もみてみましょう。


1 地域密着型サービスは,事業所が存在する市町村の住民を対象としているため,他の市町村の住民は利用することはできないとされている。

市町村間で提携されていれば,利用することができます。


2 地域密着型サービスの費用の財源は,国及び地方公共団体の公費負担のほか,第1号被保険者の保険料が充てられており,第2号被保険者の保険料は充てられていない。

介護給付には,第1号被保険者と第2号保険者の保険料が使われます。


4 小規模多機能型居宅介護とは,通所介護,短期入所,訪問介護及び訪問リハビリテーションの4つのサービスを提供する事業である。

小規模多機能型居宅介護は,2種類以上のサービスを提供するものです。


5 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは,夜間の巡回訪問により,介護その他の生活上の世話をするものである。

夜間の巡回訪問により,介護その他の生活上の世話をするのは,「夜間対応型訪問介護」です。


<今日の一言>

介護保険サービスの種類は多くて覚えるのは大変です。
しかし,出題される時にはそれほど複雑な内容にはなっていません。

今日の問題でわかるように,やっぱり問われるのは,社会保障制度の根幹です。

最新の法制度を押さえなければ得点できない問題は,ほとんどありません。

もしそういった知識がなくても,消去法で正解できるような道筋を立てて問題が作られます。

これが今の国試問題の作り方のトレンドです。スタンダードな内容のものをひたすら覚えていくことで,得点力は必ず上がります。


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