2019年11月16日土曜日

地域包括支援センターの役割

介護保険が導入された時は,国自身が「走りながら考える」と宣言して始まりました。

そのため,改正がある度に,新しいサービスや事業が加わって現在に至ります。

2005年の改正では,地域支援事業が創設されました。

現在は,以下のようになっています。

介護保険法における地域支援事業
地域包括支援
センター事業
護予防ケアマネジメント業務
要支援者(予防給付を利用しない場合),基本チェックリスト該当者に対する訪問型サービス,通所型サービス,その他の生活支援サービス等の実施。
総合相談・支援業務
高齢者の相談受付・支援等。
権利擁護業務
高齢者の権利擁護の支援,虐待防止等。
包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
社会資源を活用したケアマネジメント体制の構築。
地域の介護支援専門員の資質向上のための後方支援。
在宅医療・介護連携推進事業
高齢者などが医療機関を退院する際における医療関係者と介護関係者の連携の調整や相互の紹介など。
生活支援体制
整備事業
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)及び生活支援サービスの提供主体による情報共有・連携強化の場としての協議体の設置。
認知症
総合支援事業
認知症初期集中支援チーム編成と認知症地域支援推進員の配置。
地域ケア会議
推進事業
地域包括ケアシステム構築に向けた多職種で協働し地域課題を地域づくりや政策形成などを行う地域ケア会議を推進する事業。

国家試験の流れを見てみると,近年は介護給付よりも地域支援事業の出題の方が多いです。

地域支援事業は,確実に覚えることが大切です。

今回取り上げるのは,地域包括支援センターです。

誕生したのは,2005年の法改正です。

それ以来10年以上経ちますが,いまだに社会福祉士が必置になっているのは,地域包括支援センターのみです。

国家試験で,地域包括支援センター以外で「〇〇は社会福祉士でなければならない」という出題があった場合は,すべて間違いです。

さて,今日取り上げる問題は,不適切問題となったもので,第15回以来2回目の追加合格を発生させた要因となったものです。

第31回・問題133 地域包括支援センターに関する介護保険法の規定についての次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 市町村は,地域包括支援センターを設置しなければならない。

2 地域包括支援センターの設置者は,包括的支援事業に関して,都道府県が条例で定める基準を遵守しなければならない。

3 地域包括支援センターの設置者若しくはその職員又はこれらの職にあった者は,正当な理由なしに,その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

4 都道府県は,定期的に,地域包括支援センターにおける事業の実施状況について,評価を行わなければならない。

5 地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことにより,その事業の質の向上に努めなければならない。


この問題が不適切になったのは,

地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことにより,その事業の質の向上に努めなければならない

これは正しくは

地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことその他必要な措置を講ずることにより,その事業の質の向上を図らなければならない

間違いポイントは2つです。

①「その他必要な措置を講ずることにより」が抜けていたこと。
②「図らなければならない」なのに「努めなければならない」になっていたこと。

①については,文字数の規定で省いたとしても,この部分が抜け落ちたことは,法の適用を考えた場合は,極めて不適切です。

試験委員長が変わりましたが,この責任もあったのではないかと思います。

受験者の立場で考えたとき,これよりも重要だったのは,

市町村は,地域包括支援センターを設置しなければならない。

で間違った人が多かったのではないかということです。

本来,試験センターが正解として設定していたのは,

3 地域包括支援センターの設置者若しくはその職員又はこれらの職にあった者は,正当な理由なしに,その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
5 地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことにより,その事業の質の向上に努めなければならない。

選択肢5が正解にならなかったので,不適切問題となり,すべての人に加点することになりました。

地域包括支援センターの設置は,任意なのです。

ここを間違った受験者が多かったために,思った以上に追加合格が出たと考えています。


ほかの選択肢も一応解説しておきます。


2 地域包括支援センターの設置者は,包括的支援事業に関して,都道府県が条例で定める基準を遵守しなければならない。

これはちょっと整理しておきたいです。

障害者総合支援法の地域生活支援事業は,市町村と都道府県が実施するものがあります。

しかし,介護保険法の地域支援事業は,市町村が実施するものしかありません。
基準を定めるのは,市町村です。


4 都道府県は,定期的に,地域包括支援センターにおける事業の実施状況について,評価を行わなければならない。

評価を行うのは,市町村です。

地域包括支援センターは,市町村が自ら設置するか,委託して設置します。
評価を行うのは,設置者であることを覚えておきたいです。


<今日の一言>

この問題が不適切問題にならなければ,この問題はとても重要なものになっていたはずです。

そういった意味ではとても残念でなりません。

それはさておき,地域包括支援センターは必ず押さえておきたいです。

なぜなら,社会福祉士が必置なのは,現在のところ,地域包括支援センターしかないからです。

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