たくさんの知識があっても,国家試験で問われないものであったなら,得点することはできないでしょう。
つまり
国家試験に合格できる覚え方
国家試験に出題されるポイントを確実に覚える
国家試験に合格できない覚え方
国家試験に出題されないポイントを覚えようとしている
国試合格に必要なのは,正しい努力です。
今回から,数回にわたって,児童福祉の発展(つまり歴史)を取り上げます。
まずは今日の問題です。
第28回・問題137 日本の児童福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。
2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。
3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。
4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。
5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。
間違った覚え方
石井十次=岡山孤児院
といった単純化したものでは対応できません。
〇〇年に設立
という覚え方もまったく役に立ちません。
もちろんこういったものも出題されないとは限らないので,覚えないよりも覚えた方が良いに決まっていますが,重視するのは,その内容です。
過去問で勉強する意味は数多くありますが,出題のされ方を知ることは,とても重要なことです。
この問題の正解は,
4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。
1933(昭和8)年に作られています。
ほかの選択肢も見てみましょう。
1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。
間違いポイントは,2つ
恤救規則の対象
15歳以下 → 13歳以下
基本は「人民相互の情宜」
2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。
間違いポイント
ベヴァリッジ → バーナード
バーナードのことは知らずとも,ベヴァリッジではないという感性が必要です。
3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。
間違いポイント
18歳未満の者 → 15歳未満の者
これを知らなくても,1911(明治44)年の工場法の時代,15歳なら立派なおとなだろうと思う感性が必要です。
5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。
間違いポイント
児童憲章とジュネーブ宣言はとはかかわりを持ちません。
ジュネーブ宣言は,1924年に当時の国際連盟によるものです。
そんな以前のものを受けることはないでしょう。
<今日の一言>
年号を覚えても正解できる問題はありません。
おおよその時代が分かれば,それで十分です。
恤救規則と救護法を比較すると以下のようになります。
救済の対象
|
児童
|
高齢者
|
恤救規則
|
13歳以下
|
70歳以上
|
救護法
|
13歳以下
|
65歳以上
|
児童はいずれも13歳以下です。
戦前の児童虐待防止法(1933)の児童は,14歳未満とされていました。
戦前では,15歳はもう立派なおとな扱いされていたことがわかります。
現在の児童福祉法は,18歳未満です。
この違いはしっかり押さえておくことが必要です。