社会福祉士の国家試験は,19科目あります。
そのうち,午前中に実施される科目を「共通科目」,午後に実施される科目を「専門科目」と呼ぶことがあります。
科目を整理すると以下のようになります。
(精神保健福祉士と合わせたものです)
共通科目 (83問)
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●人体の構造と機能及び疾病
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●心理学理論と心理的支援
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●社会理論と社会システム
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●現代社会と福祉
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●地域福祉の理論と方法
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●福祉行財政と福祉政策
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●障害者に対する支援と障害者自立支援制度
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●低所得者に対する支援と生活保護制度
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●保健医療サービス
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●権利擁護と成年後見制度
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専門科目(社会福祉士) (67問)
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●社会調査の基礎
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●相談援助の基盤と専門職
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●相談援助の理論と方法
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●福祉サービスの組織と経営
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●高齢者に対する支援と介護保険制度
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●就労支援サービス
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●更生保護制度
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専門科目(精神保健福祉士) (80問)
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●精神疾患とその治療
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●精神保健の課題と支援
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●精神保健福祉相談援助の基盤
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●精神保健福祉の理論と相談援助の展開
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●精神保健福祉に関する制度とサービス
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●精神障害者の生活支援システム
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多くの人は,参考書の科目の順番に勉強します。
それはそれでよいですが,気を付けてほしいのは,共通科目に時間をかけて,専門科目にかける時間がなくなることです。
共通科目は問題数が多いので,ここで点数が取れなければ合格は難しいですが,共通科目が正解できても,専門科目で点数が取れなければ合格はもっと難しいです。
専門科目を軽んじている人は,おそらく合格するのは難しいと思います。
専門科目も共通科目と同じように勉強時間をかけるのがおすすめです。
さて,今日の問題です。
第29回・問題146 事例を読んで,障害者就業・生活支援センターのD就業支援担当職員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
障害者就業・生活支援センターのD就業支援担当職員は,登録者の精神障害のあるEさんの就職先である企業の人事担当者Fさんから,職場における合理的配慮の提供について相談を受けた。最近,Eさんから疲労感を覚えたときのために,職場内に専用の休憩室を設置して欲しいとの申出があったが,スペースの確保が難しいため,企業としての対応に悩んでいるという。
1 Eさんからの申出のとおり,休憩室を設置するように助言する。
2 Eさんからの申出は,障害の特性とは関係ないので,断るように助言する。
3 事業所にとって,過重な負担となるので断るように助言する。
4 EさんとFさんとの対立が予想されるので,弁護士に相談するように助言する。
5 Fさんに,必要に応じて自分も同席するので,Eさんと可能な対応について話し合うように助言する。
この問題で正解するためのポイントは,合理的配慮とはどのようなものかを知っていることです。
障害者差別解消法では,以下のように規定されています。
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
この事例では,配慮はしたいのだが,休憩室を設けるスペースがない,というところが担当者の悩みとなっています。
しかし,Eさんが休憩室を設けてほしい理由は,疲労感を覚えることです。
ここに着目せずに,休憩スペースというところに目が向いてしまうと問題の解決は難しくなってしまいます。
ということで,正解は選択肢5です。
5 Fさんに,必要に応じて自分も同席するので,Eさんと可能な対応について話し合うように助言する。
<今日の一言>
この問題の難易度は,決して高くはありません。
なぜなら,合理的配慮を詳しく知らなくても,解けるからです。
そういった意味ではサービス問題だと言えるでしょう。
こういった問題があるから,専門科目は勉強せずとも点数が取れると思う人が出てきます。
しかし,それはほんの数問です。
共通科目も専門科目も勉強不足の人が正解できるような問題は,ほかのみんなが正解できます。
このような問題が多くなると,ボーダーラインが高くなる恐れがあるので,勉強不足の人が合格するのは,難しくなります。
確実に知識を積み重ねた人だけが合格できるのが,この国家試験の特徴です。
それを決して忘れないようにしましょう。