国家試験は,6割程度の得点があれば合格できます。
合格率はわずか3割程度ですが,覚えるべきものを確実に覚えることができれば,必ず合格できる3割に入ることができます。
現在の社会福祉士の国家試験は,19科目あります。
このうち,今回取り上げる「就労支援サービス」は,19科目のうち,18番目の科目です。
多くの参考書は,国家試験の順番に作られているので,最後のほうの科目は勉強不足で受験に臨むことを余儀なくされる方が多くいます。
就労支援サービスと更生保護制度の2科目は,4問ずつ出題される科目であることもあり,2科目で1群となります。
この2つの科目は,覚えるべき項目が少ないために,本当は確実に覚えることができれば,点数を稼ぐことができます。
しかし,不合格になる人は,8問中3問の正解といったように得点できないことが多いようです。
ということで,今日の問題です。
第25回・問題146 障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 職場適応援助者の就労支援の対象となる障害者は,障害者手帳を持つ者に限られる。
2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。
3 職場適応援助者の養成研修及び支援スキル向上研修を行っているのは,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構だけである。
4 職場適応援助者による就労支援を受ける障害者は,障害者総合支援法に基づき,それに要する費用について,本人の収入に応じて一部負担が求められる。
5 職場適応援助者の資格要件については,障害者職業カウンセラーと同様,「障害者雇用促進法」で規定されている。
昔っぽい問題の作り方です。
国家試験は,今まで32回実施されていますが,初期の頃は,この問題のように,設問の中に説明されているスタイルのものが見受けられました。
現在なら,問題の文字数は限定されているので,
この問題の設問なら,
職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
と出題されることでしょう。
そうしていないところにこの問題の怖さがあります。
正解は,選択肢2です。
2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。
ジョブコーチには,3類型あります。
配置型:地域障害者職業センターに配置
第1号:社会福祉法人等に配置
第2号:民間企業等に配置
この問題の設問が
障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う
となっているので,勉強不足の人は,第1号と第2号ジョブコーチを知らなければ,この配置型の説明を見て,障害者職業センターに配置されるジョブコーチを想起するので,正解にすることができないのです。
この問題の解説の詳細
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/20171114.html
<今日の一言>
今日の問題は,何ら難しいものではありません。
だからこそ,ミスは許されないものです。
障害者の就労支援は,しっかり勉強すると「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」でも出題されるので,ダブルで得点のチャンスが増えます。
おまけ
現在は,就労支援サービスと更生保護制度の2科目は,国家試験では,2科目で1群となっています。
第37回国試から導入される新しいカリキュラムでは,
就労支援サービスはなくなり,更生保護制度は,「刑事司法と福祉」という科目に移行して,一本立ちします。
そんなことから,今のカリキュラムでは,就労支援は,1つ勉強すれば倍の効果があるので,有利です。
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