現時点(2020年4月)の時点で,次の年(第33回国家試験)を受験予定の人が本格的に国試勉強をしている人はかなり少ないでしょう。
多くの人は,国家試験の科目の順番で勉強していきます。
それはそれで悪くはないと思いますが,学習ペースが思うように進まなくて,最後の方の科目が勉強できなかったということでは,点数を稼がなくてはならない専門科目がボロボロになります。
専門科目には事例問題が多いので,そこで点数が取れると思っている人もいますが,知識なしで得点できる事例問題は,ほんの数問です。
しかも,そのような問題は,誰もが正解できる問題なので,点数を稼ぐことにつながりません。
逆に,正解できないことで,不合格になる要因となります。
合格に必要なのは,どの科目も同じように勉強することです。
それでは今日の問題です。
第22回・問題144 Hさん(45歳,男性)は,工業系大学を卒業後,Z社の工場部門でエンジニアとして勤務してきたが,一昨年製造第一課長に就任後間もなく,脳卒中で倒れ,右半身麻痺(2種4級)となった。リハビリテーションにより日常生活はほぼ自力でできるようになったが,言語障害がかなりあることや移動能力に相当程度の制約があることに加え,軽度の認知症状が見られたことなどから,退職せざるを得なくなった。Hさん自身は再就職を強く望んでいる。
次のうち,Hさんが再就職するに当たって利用する就労支援サービスとして,最も適切なものを一つ選びなさい。
1 就労継続支援事業
2 職業準備支援
3 就労移行支援事業
4 障害者就業・生活支援センター事業
5 公共職業訓練
事例問題は,下手に作ると不適切問題だと指摘されるために,確実に,正解は正解,不正解は不正解にする必要があります。
この問題は,現在のカリキュラムの第1回の国試である第22回のものであるため,そういう部分では少し甘い感じがしますが,消去することで正解が残るように作られた問題です。
各事業を知らないと消去できないので,正解することは,偶然以外にはほぼ不可能です。
この問題のキーワードは,再就職です。
リハビリテーションにより日常生活はほぼ自力でできるようになったが,言語障害がかなりあることや移動能力に相当程度の制約があることに加え,軽度の認知症状が見られたことなどから,退職せざるを得なくなった。
Z社での仕事は,できないかもしれませんが,Hさんは能力の高い人なので,仕事の内容によっては,活躍することが期待できます。
この選択肢で最も不適切なのは,就労継続支援事業です。
雇用型のA型であっても,非雇用型のB型であっても,Hさんは,福祉的就労ではなく,一般就労が望めます。
就労移行支援は,どうなのか,と思う人もいるでしょう。
それは,現場を知らない人です。
中途障害の場合は,一般就労を希望する場合は,障害者総合支援法の就労移行支援を利用するよりも,障害者雇用促進法の地域障害者職業センターの職業リハビリテーションを受けるほうが現実的です。
Hさんの場合は,エンジニアという特別な能力を持っているので,それを活かすことを考えます。
そういったことで,正解は,公共職業訓練で,障害があっても仕事ができる能力をつけることが適切だと言えるでしょう。
職業準備支援は,障害に合った仕事を見つけ出すことがメインの事業です。
Hさんは,エンジニアという特別な能力を持っているので,方向性は見えています。
ということで,正解は,選択肢5の公共職業訓練が適切であるということになります。
<今日の一言>
事例問題は難しい
事例問題は,決して簡単ではありません。
「現場経験があるから,大丈夫」と思っていると,合格するのは,かなり難しいと言えます。
社会福祉士の国家試験は,上位30%しか合格できない試験です。
事例問題は,多くの人が思っているほど正解するのは簡単ではありません。
多くの事例問題は,事例問題のスタイルですが,実は知識を問う問題だからです。
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