今回も保護観察を続けていきます。
今回は,保護観察期間です。
対象
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保護観察の期間
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1号観察
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保護観察処分を受けた少年
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20歳まで。
20歳まで2年未満の場合は,2年間。
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2号観察
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少年院から仮退院した少年
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原則として,20歳まで。
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3号観察
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刑事施設から仮釈放された者
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仮釈放期間
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4号観察
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保護観察付き執行猶予者
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執行猶予期間
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5号観察
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婦人補導院から仮退院した者
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補導処分の残期間
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更生保護法に規定さているものは,1~4号観察,5号観察は売春防止法に規定されています。
5種類あって覚えるのが面倒ですが,5号観察は,現在はほとんどいない(まったくいないと言ってよい)ので,国試に出題されることはほぼないと言って良いでしょう。
保護観察の良好措置と不良措置をおさらいします。(5号観察は割愛)
1号観察
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2号観察
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3号観察
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4号観察
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良好措置
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仮解除
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退院
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なし
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仮解除
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不良措置
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少年院送致など
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仮退院の
取消し
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仮釈放の
取消し
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執行猶予の
取消し
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3号観察(刑事施設から仮釈放された者)に良好措置がないのは,より厳密に保護観察を運営するためです。
そのために,良好措置はなく,不良措置のみがあります。
厳密に運営しないと国民感情を逆なでしかねないとも言えます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題147 保護観察に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。
2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。
3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。
4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。
5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。
正解は,選択肢1です。
1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。
この選択肢が正解でなければ,この問題はとても難しいものとなったでしょう。
どこの保護観察所が管轄するかは,勉強していなかったとしても,保護観察の内容を考えたとき,保護観察対象者が居住する地域の保護観察所が行うのが最も効率的だと思えることでしょう。
刑を確定した地方観察所,あるいは保護観察処分にした家庭裁判所の所在する保護観察所では,保護観察対象者がそことはまったく別の場所に帰住することになった場合,距離が遠くて不便です。
それではほかの選択肢も確認しましょう。
2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。
特別遵守事項は,必要な場合,保護観察所,あるいは地方更生保護委員会が定めるものです。
一般遵守事項と合わせて遵守しているかどうかを確認するのが保護観察のなかの「指導監督」です。
遵守されていない場合は,不良措置として,刑事施設などに戻されることもある極めて厳しいものです。
3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。
保護観察処分になった少年の保護観察期間は,20歳までです。20歳までが2年未満の場合は,2年間実施されます。
4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。
刑事施設からの仮釈放者は,3号観察です。
1~4号観察の中で,仮解除等の良好措置がないのは,3号観察のみです。
実は5号観察も良好措置がありません。5号観察に良好措置がないのは,売春防止法に規定される補導処分期間は6か月なので,良好措置を設けるほどの期間がないためです。
5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。
保護処分の不良措置が,退院の措置なら,遵守事項を守る必要がなくなってしまいます。
少年院仮退院者は,2号観察です。2号観察の良好措置は,仮解除,不良措置は,戻し収容です。
<今日の一言>
今日の問題の選択肢5
5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。
は,冷静に考えると不良措置が退院の措置ではないと思えるはずです。
しかし,「更生保護制度」は,国家試験では最後の科目であることもあり,疲れ切ってこの問題まで行きついたと思います。
こんな単純な引っ掛けであっても,疲れ切った頭,そして早く終わりたい気持ちから,問題を読み間違えることもあります。
最後の最後まで集中力を保つことの重要性を教えてくる問題だと言えるでしょう。