今回も保護観察の方法を取り上げます。
保護観察対象者は,保護観察中に遵守しなければならない事項が更生保護法に明記されています。
一般遵守事項
(すべての保護観察対象者が遵守しなければならないもの)
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一 再び犯罪をすることがないよう,又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること。
二 次に掲げる事項を守り,保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること。
イ 保護観察官又は保護司の呼出し又は訪問を受けたときは,これに応じ,面接を受けること。
ロ 保護観察官又は保護司から,労働又は通学の状況,収入又は支出の状況,家庭環境,交友関係その他の生活の実態を示す事実であって指導監督を行うため把握すべきものを明らかにするよう求められたときは,これに応じ,その事実を申告し,又はこれに関する資料を提示すること。
三 保護観察に付されたときは,速やかに,住居を定め,その地を管轄する保護観察所の長にその届出をすること。
四 前号の届出に係る住居に居住すること。
五 転居又は七日以上の旅行をするときは,あらかじめ,保護観察所の長の許可を受けること。
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特別遵守事項
(必要な場合,個別に具体的に定められる)
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一 犯罪性のある者との交際,いかがわしい場所への出入り,遊興による浪費,過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。
二 労働に従事すること,通学することその他の再び犯罪をすることがなく又は非行のない健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し,又は継続すること。
三 七日未満の旅行,離職,身分関係の異動その他の指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について,緊急の場合を除き,あらかじめ,保護観察官又は保護司に申告すること。
四 医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。
五 法務大臣が指定する施設,保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって,宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること。
六 善良な社会の一員としての意識の涵(かん)養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。
七 その他指導監督を行うため特に必要な事項
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特別遵守事項は,保護観察所の長,あるいは,地方更生保護委員会が,必要に応じて,設定します。必要ではなくなった場合は,変更,取り消し等が行われます。
地方更生保護委員会が設定するのは,保護観察所の長の申し出があった場合です。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題149 保護観察の遵守事項に関する次の紀述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 特別遵守事項は,保護観察の枠組みを決定する重要な条件であるから,司法機関である裁判所の裁判官が決定している。
2 接触の確保や行状の把握が保護観察実施の前提であるから,転居又は7日以上の旅行をするときは,あらかじめ保護観察所長の許可を受けることが一般遵守事項に定められている。
3 特別遵守事項は,遵守されない場合は保護観察の取消し等の不良措置の根拠となり得るので安易に変更されるべきでなく,いったん定められた後の付加・変更はできない。
4 保護観察対象者の改善更生は当事者主体で行われるべきものであるから,遵守事項の決定に当たっては本人の意見を聴取することが義務づけられている。
5 被害が甚大な場合は被害者の謝罪や慰謝が重要であるから,被害者への弁償が特別遵守事項とされる。
正解は,選択肢2です。
2 接触の確保や行状の把握が保護観察実施の前提であるから,転居又は7日以上の旅行をするときは,あらかじめ保護観察所長の許可を受けることが一般遵守事項に定められている。
一般遵守事項は,すべての保護観察対象者が遵守しなければならないものです。
その名には,転居又は7日以上の旅行をする際,あらかじめ許可を受けることが含まれます。
それではほかの選択肢も見てみましょう。
1 特別遵守事項は,保護観察の枠組みを決定する重要な条件であるから,司法機関である裁判所の裁判官が決定している。
特別遵守事項を決定するのは,保護観察所の長,あるいは地方更生保護委員会です。
裁判所の役割としては,保護観察所の長が,保護観察付執行猶予者の特別遵守事項を定めるにあたって,裁判所の意見を聴いて,これに基づいて特別遵守事項を定めることができるという規定があるだけです。
3 特別遵守事項は,遵守されない場合は保護観察の取消し等の不良措置の根拠となり得るので安易に変更されるべきでなく,いったん定められた後の付加・変更はできない。
特別遵守事項は,いったん定められた後,必要でなくなったり,変更が必要な時は,付加・変更することができます。
4 保護観察対象者の改善更生は当事者主体で行われるべきものであるから,遵守事項の決定に当たっては本人の意見を聴取することが義務づけられている。
特別遵守事項は,本人の意向にかかわらず,必要な場合,設定されます。
5 被害が甚大な場合は被害者の謝罪や慰謝が重要であるから,被害者への弁償が特別遵守事項とされる。
基本的な特別遵守事項の中には,被害者の弁償は含まれません。
もし,被害者への弁償が特別遵守事項として定められるとすると,それは本人の更生に必要な場合でしょう。
<今日の一言>
保護観察対象者が遵守事項を遵守しないと,場合によっては「不良措置」として,仮釈放の取消し,戻し収容などの措置が行われます。
これらは,地方更生保護委員会が決定します。