2020年4月2日木曜日

新カリキュラムの概要~⑲福祉サービスの組織と経営


新カリキュラムの国家試験に関する検討委員会はまだ動き出していないみたいですが,科目数は,19科目で変化はないのかもしれません。

ということで,今回が最後の科目「福祉サービスの組織と経営」です。

福祉サービスの組織と経営30時間)
ねらい(目標)
①ソーシャルワークにおいて必要となる、福祉サービスを提供する組織や団体の概要について理解する。
②社会福祉士に求められる福祉サービスの組織と沿革、経営の視点と方法を理解する。
③福祉サービスの組織と運営に係る基礎理論、労働者の権利等について理解する。
④福祉サービスに求められる福祉人材マネジメントについて理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①福祉サービスに係る組織や団体の概要と役割
1 福祉サービスを提供する組織
・社会福祉施設の現状や推移
・各種法人の特性
・非営利法人、営利法人
・社会福祉法人、NPO法人、一般社団法人、株式会社
・福祉サービスと連携するその他の法人
・法人格を有しない団体(ボランティア団体)等
2 福祉サービスの沿革と概況
・福祉サービスの歴史
・社会福祉基礎構造改革
・社会福祉法人制度改革
・公益法人制度改革
3 組織間連携と促進
・公益的活動の推進
・多機関協働
・地域連携、地域マネジメント
②福祉サービスの組織と運営に係る基礎理論
1 組織運営に関する基礎理論
・組織運営の基礎
・組織における意思決定
・問題解決の思考と手順
・モチベーションと組織の活性化
2 集団の力学に関する基礎理論
・チームアプローチと集団力学
・チームの機能と構成
3 リーダーシップに関する基礎理論
・リーダーシップ、フォロワーシップ
・リーダーの機能と役割
③福祉サービス提供組織の経営と実際
1 経営体制
・理事会、評議会等の役割
・経営戦略、事業計画
・マーケティング
2 福祉サービス提供組織のコンプライアンスとガバナンス
・社会的ルールの遵守
・説明責任の遂行
・業務管理体制、内部管理体制の整備
・権限委譲と責任のルール化
3 適切な福祉サービスの管理
・品質マネジメントシステム
PDCASDCA管理サイクル
・リスクマネジメント体制
・権利擁護制度と苦情解決体制
・福祉サービスの質と評価
4 情報管理
・個人情報保護法
・公益情報保護法
・情報公開、パブリックリレーションズ
5 会計管理と財務管理
・財務諸表の理解、財務規律の強化
・自主財源、寄付金、各種制度に基づく報酬
・資金調達、ファンドレイジング
・資金運用、利益管理
④福祉人材のマネジメント
1 福祉人材の育成
OJTOFF-JTSDS
・職能別研修と階層別研修
・スーパービジョン体制
・キャリアパス
2 福祉人材マネジメント
・目標管理制度
・人事評価システム
・報酬システム
3 働きやすい労働環境の整備
・労働三法及び労働関係法令
・育児休業、介護休業 等
・メンタルヘルス対策
・ハラスメント対策


随所に新しいものが散見されますが,その中でとりわけ注目すべきものは,資金調達です。

ファンドレイジングは,「資金集め」と訳されます。

歴史をさかのぼればわかりますが,福祉実践は制度の中にあったものではなく,制度が後から追いついてきたものです。

制度が先にあるものではない,そしてこれからは,制度をあてにするものではない,と言えます。

32回国試では,例のごとく,既に出題されています。

32回・問題39 地域福祉推進のための財源に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008年(平成20年))では,住民の地域福祉活動の資金は原則として公的財源によるとされている。

2 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))では,地域の課題を地域で解決していく財源として,クラウドファンディングやSIB(Social Impact Bond)等を取り入れていくことも有効であるとされている。

3 社会福祉法の改正(2016年(平成28年))では,社会福祉法人は,収入の一定割合を地域における公益的な取組の実施に充てなければならないとされた。

4 「平成29年度特定非営利活動法人に関する実態調査」(内閣府)によれば,NPO法人の収入は,「会費」,「寄附金」が大半を占めている。

5 共同募金実績額の推移をみると,年間の募金総額(一般募金と歳末助けあい募金の合計)は,1995年(平成7年)から2017年(平成29年)までの約20年間,一貫して増加している。



「地域福祉の方法と理論」で出題された問題です。

正解は,選択肢2です。


<今日の一言>

ソーシャルインパクトボンドが何かであるかの答えを示すことは簡単ですが,自分で調べてみましょう。

ファンドレイジングは,むしろ地域福祉の方が現実感があるように思います。

しかし,施設系サービスであっても,国がいつまでもサービスを提供できる報酬を確保できるかはわかりません。

知恵が求められているように思います。


おまけ

制度はあとからつくられる

第26回・問題138 我が国の児童福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 高木憲次は,愛知県北西部から岐阜県下にかけて大きな被害をもたらした濃尾大震災の孤児を救済するために,光明学校を設立した。

2 留岡幸助は,少年教護法の制定後,非行少年の教護事業を目的とした家庭学校を東京巣鴨に設立した。

3 石井亮一は,アメリカの発達保障の理論を持ち帰り,近江学園を設立した。

4 山室軍平は,イギリスのバーナード(Barnard,T.)が建てたビレッジ・ホームを模した小舎制のキングスレー館を設立した。

5 野口幽香は,貧困家庭の子ども等,不幸な境遇にある子女に対して幼児教育を行うために,二葉幼稚園を設立した。


正解は,選択肢5です。

5 野口幽香は,貧困家庭の子ども等,不幸な境遇にある子女に対して幼児教育を行うために,二葉幼稚園を設立した。


着目したいのは,

2 留岡幸助は,少年教護法の制定後,非行少年の教護事業を目的とした家庭学校を東京巣鴨に設立した。


今の人たちの感覚だとこれは正しく思えるかもしれません。

今までの話の流れで,法は後からつくられることは何となく理解できることでしょう。

池上雪枝や留岡幸助などが感化院をつくったことで,感化法ができます。

この問題が良心的なのは,感化法(1900年)ではなく,少年教護法(1933年)で出題していることです。

現在の児童自立支援施設は,感化院→教護院→児童自立支援施設 と変遷しています。

留岡幸助が家庭学校を設立したのは,1899年のことです。もし感化法と出題していれば,1年違いになってしまいます。

1年刻みの歴史を出題するほど,国家試験は意地悪ではありません。

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