社会福祉士のカリキュラムは,大学では令和3(2021)年から導入されます。
この年度の入学生が受験する時に,新しいカリキュラムによる国家試験となります。
教育課程
年度
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大学等
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短大等
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一般養成施設等
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短期養成施設等
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2020年度
(令和2)
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現行
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現行
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現行
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現行
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2021年度
(令和3)
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新カリ
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↓
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↓
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↓
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2022年度
(令和4)
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↓
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新カリ
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↓
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↓
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2023年度
(令和5)
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↓
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↓
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新カリ
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↓
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2024年度
(令和6)
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↓
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↓
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↓
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新カリ
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2024(令和6)年度 第37回国家試験
新カリキュラムによる国家試験
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さて,今回は「⑱保健医療と福祉」を取り上げます。
この科目は,現在の「保健医療サービス」の後継となる科目です。
しかし,大きく異なるのは,共通科目から専門科目へ移行することです。
それでは内容を見てみましょう。
保健医療と福祉(30時間)
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ねらい(目標)
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①ソーシャルワーク実践において必要となる保健医療の動向を理解する。
②保健医療に係る政策、制度、サービスについて理解する。
③保健医療領域における社会福祉士の役割と、連携や協働について理解する。
④保健医療の課題を持つ人に対する、社会福祉士としての適切な支援のあり方を理解する。
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教育に含むべき事項(内容)
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教育に含むべき事項
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想定される教育内容の例
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①保健医療の動向
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1 疾病構造の変化
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・感染症の減少
・生活習慣病の増加
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2 医療施設から在宅医療へ
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・社会的入院
・在宅医療の役割と課題
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3 保健医療における福祉的課題
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・依存症、認知症、自殺企図、虐待防止
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②保健医療に係る政策・制度・サービスの概要
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1 医療保険制度の概要
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・医療サービス
・医療費の自己負担や保険料の減免制度、高額療養費制度、無料低額診療事業
・労災保険、傷病手当金、特定疾患医療費助成制度
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2 診療報酬制度の概要
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・診療報酬制度の体系
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3 医療施設の概要
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・病院(特定機能病院、地域医療支援病院等)、診療所
・病院や病床の機能分化
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4 保健医療対策の概要
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・保健所の役割
・地域医療の指針(医療計画)
・5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)
・5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)
・薬剤耐性(AMR)対策
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1 自己決定権の尊重
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・インフォームド・コンセント、インフォームド・アセント
・意思決定支援、アドバンスケアプランニング
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2 保健医療に係る倫理
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・医療倫理の4原則
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3 倫理的課題
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・高度生殖医療、出生前診断、脳死と臓器移植、尊厳死、身体抑制
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④保健医療領域における専門職の役割と連携
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1 保健医療領域における専門職
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・医師、歯科医師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士
等
・介護福祉士、精神保健福祉士
・介護支援専門員、居宅介護従事者
等
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2 保健医療領域における連携・協働
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・院内連携
・地域医療連携(病診連携、病病連携)
・地域包括ケアシステムにおける連携
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⑤保健医療領域における支援の実際
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1 保健医療領域における社会福祉士の役割
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・医療ソーシャルワーカーの業務指針
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2 保健医療領域における支援の実際(多職種連携を含む。)
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・疾病及びそのリスクがある人の理解
・入院中・退院時の支援
・在宅医療における支援
・終末期ケア及び認知症ケアにおける支援
・救急・災害現場における支援
・家族に対する支援
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この科目でも随所に新しいものが加わっていますが,特に着目したいのは,以下の部分です。
①保健医療の動向
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1 疾病構造の変化
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・感染症の減少
・生活習慣病の増加
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2 医療施設から在宅医療へ
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・社会的入院
・在宅医療の役割と課題
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3 保健医療における福祉的課題
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・依存症、認知症、自殺企図、虐待防止
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③保健医療に係る倫理
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1 自己決定権の尊重
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・インフォームド・コンセント、インフォームド・アセント
・意思決定支援、アドバンスケアプランニング
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2 保健医療に係る倫理
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・医療倫理の4原則
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3 倫理的課題
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・高度生殖医療、出生前診断、脳死と臓器移植、尊厳死、身体抑制
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感染症はたしかに減っていますが,今の状況では,とても嫌味っぽいです。
インフォームド・アセントとは,治療を受ける子どもに対して,説明することです。
「児童権利条約」で保障する児童の能動的権利につながるものでしょう。
さて,この科目でも新カリキュラムを先取りした問題が出題されています。
「保健」という部分です。
第32回・問題73 「地域における保健師の保健活動に関する指針」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域住民に対して,生活習慣病の三次予防に重点を置いた指導を行う。
2 地域住民に対して,保健師が主体となって地域の健康づくりを促進する。
3 産後に抑うつ状態の可能性が高いと判断される養育者に対して,受療指示を行う。
4 担当地域の市町村地域防災計画を策定する。
5 地域診断を実施し,取り組むべき健康課題を明らかにする。
(注) 「地域における保健師の保健活動に関する指針」とは,「地域における保健師の保健活動について」(平成25年4月19日健発0419第1号厚生労働省健康局長通知)で示された指針のことである。
正解は,選択肢5です。
5 地域診断を実施し,取り組むべき健康課題を明らかにする。
保健活動における地域診断とは,地域の健康問題を分析して,それに合わせた保健活動を行うことをいいます。
今までも保健医療サービスという科目名称なので,保健は出題されても良かったのだと思いますが,医療が中心でした。
新カリキュラムに変わるまでにも保健に関するものは,出題されてくると予測できます。
<今日の一言>
新しいカリキュラムでは,「自殺」が大きなテーマになっており
「社会学と社会システム」
「社会福祉の原理と政策」
「地域福祉と包括的支援体制」
「保健医療と福祉」
の4科目にわたって,組み入れられています。
自殺者数は減少していますが,若者の自殺はむしろ増えている傾向にあるからでしょう。