今回が,緊急更生保護の最終回です。
前説なしで,今日の問題です。
第23回・問題149 事例を読んで,保護観察官が行った更生緊急保護の措置に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
Pさん(34歳,男性,未婚)は,傷害事件により懲役1年執行猶予3年保護観察付きの刑の言渡しを受けたが,住所不定であり,所持金も2千円しかないとして,刑確定前に保護観察所に保護を求めてきた。Pさんには幼少時に被虐待体験があり,家族とは長期間疎遠で,就労技能もなく,過去に頻繁に転職してきた。
1 被虐待体験が精神的外傷となり犯罪の遠因になっていると判断し,今後しばらくの間,定期的にPさんにカウンセリングを行うことにした。
2 Pさんに就労につながる技能や資格がないことが社会適応を難しくしていると判断し,自治体が行っている職業訓練講座の受講を勧めた。
3 長らく家族と音信不通になっているPさんにとっては,生活の再建には家族との再統合が不可欠と考え,家族関係の調整をすることにした。
4 居住場所を確保する必要があると考え,Pさんを更生保護施設に入所できるようにした。
5 生活保護を受給させて早急に生活の安定を図る必要があると考え,Pさんの住民登録がなされているZ市の福祉事務所を紹介した。
事例で来たか~と思います。
制度を問う事例問題の場合は,事例として問題を読むと間違いを引き起こすので注意が必要です。
この問題の場合は「更生緊急保護の措置」を問うものです。
ほかに良い対応があったとしても,「更生緊急保護」に関するものでなければ正解にはなりません。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 居住場所を確保する必要があると考え,Pさんを更生保護施設に入所できるようにした。
これしか更生緊急保護に関する内容の選択肢はありません。
しかし,勉強した人は,逆にこの問題は正解しにくいものです。
なぜなら「懲役1年執行猶予3年保護観察付きの刑の言渡しを受けた」と保護観察付きの刑が言い渡されたとの記述があるからです。
単純に「保護観察は対象にならない」と思って読むと引っ掛けられます。
この問題の場合は,刑確定前で,保護観察中ではないというところです。
ひどいと思いませんか?
一応,ほかの選択肢も確認します。
1 被虐待体験が精神的外傷となり犯罪の遠因になっていると判断し,今後しばらくの間,定期的にPさんにカウンセリングを行うことにした。
カウンセリングは,緊急更生保護の内容には含まれません。
2 Pさんに就労につながる技能や資格がないことが社会適応を難しくしていると判断し,自治体が行っている職業訓練講座の受講を勧めた。
職業訓練講座の受講は,緊急更生保護の内容には含まれません。
3 長らく家族と音信不通になっているPさんにとっては,生活の再建には家族との再統合が不可欠と考え,家族関係の調整をすることにした。
家族関係の調整は,緊急更生保護の内容には含まれません。
5 生活保護を受給させて早急に生活の安定を図る必要があると考え,Pさんの住民登録がなされているZ市の福祉事務所を紹介した。
福祉事務所を紹介するのは,緊急更生保護の内容には含まれません。
<今日の一言>
事例は,意外と正解できないものです。
専門科目は事例があるから共通科目よりも楽だと思っていると失敗します。
事例問題は事例問題を正解するためのコツが存在します。
それは,先述のように事例として読まないということです。
設問に合ったものを見つけることが必要です。
なぜそのように問題が作られているかというと,人によって優先順位が異なるようなものだと,不適切問題になるおそれがあるからです。
正解選択肢は,確実に正解。
間違い選択肢は,確実に間違い。
このようにしなければなりません。
誰から指摘されても,〇〇といった理由だから,これが正解である,と言えるものでなければならないのです。
ここに気がつくようになると,事例問題の得点力は上がります。