これまで,保護観察は,3回にわたって紹介してきましたが,少しは理解が進みましたか?
今回は,前説なしで,今日の問題に入ります。
第28回・問題147 保護観察に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 少年院からの仮退院者や児童自立支援施設からの退所者には保護観察が付される。
2 少年事件の保護観察を実施する機関は児童相談所であり,そこには保護観察官が配属されている。
3 犯罪をした者及び非行のある少年に対し,矯正施設や社会内において適切な処遇を行うことにより改善更生を助けることが保護観察の目的である。
4 保護観察官が指導監督,保護司が補導援護を行う役割分担を行っている。
5 法務大臣が指定する施設などにおいて,一定期間の宿泊の継続とそこでの指導監督を受けることが特別遵守事項の一つとされている。
正解は,選択肢5です。
5 法務大臣が指定する施設などにおいて,一定期間の宿泊の継続とそこでの指導監督を受けることが特別遵守事項の一つとされている。
特別遵守事項
(必要な場合,個別に具体的に定められる)
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一 犯罪性のある者との交際,いかがわしい場所への出入り,遊興による浪費,過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。
二 労働に従事すること,通学することその他の再び犯罪をすることがなく又は非行のない健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し,又は継続すること。
三 七日未満の旅行,離職,身分関係の異動その他の指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について,緊急の場合を除き,あらかじめ,保護観察官又は保護司に申告すること。
四 医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。
五 法務大臣が指定する施設,保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって,宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること。
六 善良な社会の一員としての意識の涵(かん)養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。
七 その他指導監督を行うため特に必要な事項。
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それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
1 少年院からの仮退院者や児童自立支援施設からの退所者には保護観察が付される。
少年の保護処分には以下の3種類があります。
保護観察
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少年院送致
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児童自立支援施設送致・児童養護施設送致
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保護観察に付された者は,「1号観察」と呼ばれます。
少年院送致に付されたものが仮退院されると「2号観察」と呼ばれます。
少年の保護観察は,この2つの種類しかありません。
つまり,児童自立支援施設からの退所者は,保護観察には付されません。
2 少年事件の保護観察を実施する機関は児童相談所であり,そこには保護観察官が配属されている。
少年も成人も保護観察を実施する機関は,保護観察所です。
3 犯罪をした者及び非行のある少年に対し,矯正施設や社会内において適切な処遇を行うことにより改善更生を助けることが保護観察の目的である。
保護観察は,社会内処遇です。
施設処遇ではありません。
4 保護観察官が指導監督,保護司が補導援護を行う役割分担を行っている。
保護司は,「保護観察官で十分でないところを補う」と規定されています。
保護観察官と保護司の役割分担はありません。
<今日の一言>
保護観察は,保護観察所が実施します。
保護観察所には,更生保護法に規定される保護観察官と医療観察法に規定される社会復帰調整官が配置されています。
保護観察の種類
対象
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良好措置
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不良措置
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1号観察
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保護観察処分を受けた少年
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仮解除
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少年院送致など
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2号観察
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少年院から仮退院した少年
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退院
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仮退院の取消し
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3号観察
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刑事施設から仮釈放された者
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なし
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仮釈放の取消し
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4号観察
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保護観察付き執行猶予者
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仮解除
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執行猶予の取消し
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5号観察
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婦人補導院から仮退院した者
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なし
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仮退院の取消し
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このように,1~5号までありますが,すべて保護観察所が保護観察を実施しています。
なお,1~4号観察は,更生保護法,5号観察は,売春防止法に規定されているものです。
現在,5号観察はほとんどない(まったくない)ので,更生保護法に含めなかったらしいです。