今,一度更生保護制度の目的を復習します。
(目的)
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第一条 この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。
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更生保護制度の目的は,何度も何度も繰り返して出題されています。
法の目的は出題されやすいものですが,更生保護制度の目的の出題頻度は群を抜いています。
しかし法は覚えにくいので,以下のように分解します。
法の目的
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対象
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犯罪をした者及び非行のある少年。
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方法①
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社会内処遇(社会内において適切な処遇を行うこと)
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方法②
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①再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくすこと。
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②これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けること。
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その他
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①恩赦の適正な運用を図ること。
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②犯罪予防の活動の促進等を行うこと。
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③社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進すること。
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これで,かなり覚えやすくなったのではないでしょうか。
恩赦は,今の天皇陛下の即位に伴い,実施されたので,第32回国試に出題されるのでは,とうわさされましたが,今まで一度も出題されたことがありません。
それでは今日の問題です。
第23回・問題147 更生保護制度の概要に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 更生保護は,社会の保護を目的とすることから,社会福祉とは方法は異なっても対象とする者は全く同じである。
2 更生保護の対象者のうち18歳未満の者は,児童福祉法が該当する児童に該当するから,基本的には児童相談所が主務庁となる。
3 更生保護とは,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることである。
4 更生保護は,刑事司法の一翼を担うが,脱施設化の社会的趨勢の中で,地方公共団体が行う法定受託事務とされている。
5 更生保護は,犯罪をした者及び非行のある少年が,再び犯罪をすることを防ぎ又はその非行をなくし,善良な社会の一員として自立し,改善更生することを助けるものである。
正解は,選択肢5です。
5 更生保護は,犯罪をした者及び非行のある少年が,再び犯罪をすることを防ぎ又はその非行をなくし,善良な社会の一員として自立し,改善更生することを助けるものである。
この問題でも,制度の目的が出題され,しかも正解です。
本当に重要であることがわかるでしょう。
ほかの選択肢も簡単に解説します。
1 更生保護は,社会の保護を目的とすることから,社会福祉とは方法は異なっても対象とする者は全く同じである。
更生保護の対象は「犯罪をした者及び非行のある少年」です。
社会福祉は,福祉を必要とする国民すべてが対象です。
2 更生保護の対象者のうち18歳未満の者は,児童福祉法が該当する児童に該当するから,基本的には児童相談所が主務庁となる。
非行少年については,改めて詳しく紹介する機会があると思いますが,犯罪少年,虞犯少年,触法少年の3種類があります。
このうち,刑事罰を受ける可能性があるのは,犯罪少年のみです。
犯罪少年,虞犯少年,触法少年が家庭裁判所に送致された場合,保護処分を受けることがあります。
保護処分には,
①保護観察
②少年院送致
③児童自立支援施設送致・児童養護施設送致
の3種類があり,児童相談所が主務庁となるのは,
③児童自立支援施設送致・児童養護施設送致
です。
①保護観察と②少年院送致は,保護観察所が主務庁となるので,児童相談所はかかわりません。
3 更生保護とは,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることである。
これは,「更生保護制度」の科目のもう一つの重要な法制度である医療観察法の目的です。
医療観察法は,後日改めて詳しく学んでいきます。
4 更生保護は,刑事司法の一翼を担うが,脱施設化の社会的趨勢の中で,地方公共団体が行う法定受託事務とされている。
更生保護は,国の制度です。
法定受託事務でも自治事務でもありません。
法で規定されている地方公共団体の役割はわずかに以下しかありません。
(国の責務等)
第二条 国は、前条の目的の実現に資する活動であって民間の団体又は個人により自発的に行われるものを促進し、これらの者と連携協力するとともに、更生保護に対する国民の理解を深め、かつ、その協力を得るように努めなければならない。
2 地方公共団体は、前項の活動が地域社会の安全及び住民福祉の向上に寄与するものであることにかんがみ、これに対し必要な協力をすることができる。
3 国民は、前条の目的を達成するため、その地位と能力に応じた寄与をするように努めなければならない。
市町村は,第一号法定受託事務として,以下の事務があります。
応急の救護に要した費用をその者あるいは家族から徴収する際,保護観察所の長は,徴収を市町村に嘱託することができます。
これは,費用の徴収であって,実際の更生保護に関する市町村も含めて,地方公共団体は協力する役割があるだけです。