今回から「社会学と社会システム」に入ります。
心理学理論や社会学理論では,提唱者の名前が数多く出てくるので,勉強するのが苦手だと思う人も多いようです。
しかし,実際には,名前を憶えておかなければ解けないという問題は一部です。
必要なのは,その内容を覚えることです。
さて,今回は機能主義を取り上げます。
機能主義とは,人の行為は社会の発展や変化をもたらすように機能すると考えるものです。
この意味がわからなくても困ることはありません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題15 次の記述のうち,社会現象の性質や働きを機能主義的な考え方で説明しているものとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことを逆機能という。
2 複数の要素が交じりあい,一定量を超えて蓄積されていくことで,元の要素にない新たな性質が生成してくることを創発特性という。
3 あるシステムが存続・発展したり,そこでの目標を達成するために必ず必要とされる働きのことを機能的等価性という。
4 規則は課題を公正かつ効率的に処理するためのものであるはずなのに,それを守ること自体が神聖化されて目的となっていくことを機能的合理性という。
5 急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することを社会淘汰という。
この問題の中で,一番重要なものは「逆機能」です。
それ以外のものは覚える優先度は低いものです。
国家試験では,この問題のようにわけのわからないものが出題されることがありますが,参考書に書かれていないようなものは他の受験者も正解できないので,慌てることはありません。
過去問よりも本試験のほうが難しく感じると思います。
なぜなら,国家試験に出題されると参考書に書かれるので,覚えているかいないかは別として,過去問を解くときは,既視感があるはずです。
国家試験の一定数は,今までに出題されたことのないような問題が出題されます。
そうしないと,実践力がなくても記憶力に優れた人が合格することになってしまいます。それは現場で活躍する社会福祉士を育てる意味では,不適切なことになってしまいます。
ある程度は,難しい問題が出題されることは覚悟しておかなければなりません。
そういった問題は正解できなくても,しっかり勉強した人は合格できるように設計されているのが,近年の国家試験です。何の心配もありません。
それでは解説です。
1 ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことを逆機能という。
ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことは,潜在的機能といいます。
機能主義では,社会システムがうまく機能することは「順機能」,社会システムがうまく機能しないことを「逆機能」といいます。
逆機能の例
・工業化の進展によってCO2の排出が増えて,温暖化が発生する。
・インターネットの普及によってさまざまな情報を入手できるようになったが,情報格差(情報デバイド)が発生する。
・組織のルールを守ることが神聖化されることによって,組織が機能しなくなる。
3つめの状況は「官僚制の逆機能」といいます。
2 複数の要素が交じりあい,一定量を超えて蓄積されていくことで,元の要素にない新たな性質が生成してくることを創発特性という。
これが正解です。
組織の構成要素の相互の働きによって,システムが発展していきます。
その動きのことを創発特性といいます。
3 あるシステムが存続・発展したり,そこでの目標を達成するために必ず必要とされる働きのことを機能的等価性という。
機能的等価性とは,機能が同じものをいいます。
よく例に使われるものとして,ストレスの解消というものがあります。
ドライブとカラオケがストレスの解消を目的とするなら,ドライブとカラオケは同じ機能があると考えられます。
これが機能的等価性です。
4 規則は課題を公正かつ効率的に処理するためのものであるはずなのに,それを守ること自体が神聖化されて目的となっていくことを機能的合理性という。
これは,先述のように「官僚制の逆機能」を述べたものです。
機能的合理性は,システムが発展していくように構成要素が機能することをいいます。
5 急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することを社会淘汰という。
急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することは,デュルケムが論じたアノミーのことを述べたものです。
社会淘汰は,社会進化の過程で,強いものが生き残ることです。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験には,5つの選択肢があります。
試験委員が問題をつくるとき,さまざまなものをちりばめて,正解にたどりにくいようにします。
本試験が難しく感じる要因となります。
近年の国家試験は,かなりこなれてきていることもあり,どんでもなく難易度が高い問題は少なくなってきていますが,こういった問題に負けない強い心を持てるように日々の学習に励んでいきたいものです。