今回は,医療観察法を取り上げます。
以下,厚生労働省のホームページ「医療観察法制度の概要について」から転載します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sinsin/gaiyo.html
医療観察法の概要
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)は、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、 強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度です。 |
それでは今日の問題です。
第30回・問題150 事例を読んで,医療観察中にD社会復帰調整官がEさんに対して行うことのできた業務として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
保護観察所のD社会復帰調整官は,医療観察の対象者であるEさんを担当して,指定入院医療機関に入院中の生活環境の調整に始まり,関係機関との連携を図るケア会議を開催した。その後,Eさんは退院し,入院によらない医療を受けながら自宅での生活を行った。その間,精神科病院への一時的入院もあったが,法定期間満了前に処遇の終了を迎えることができた。
1 Eさんの生活環境の調整を保護司に委ねた。
2 Eさんの精神保健観察中に「守るべき事項」を決定した。
3 開催されたケア会議において,Eさんの退院許可の決定を行った。
4 入院によらない医療を受けているEさんに対して,「精神保健福祉法」の規定による入院を行うための調整をした。
5 Eさんの指定通院医療機関による医療の終了を決定した。
(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
事例の内容を少し説明すると,「入院によらない医療を受けながら」ということは,「精神保健観察」中であることがわかります。
法定期間は,3年(36か月)なので,満了前ということなので,3年より前ということになります。
ただし,最大で2年間の延長ができます。
精神保健観察は,保護観察所に配置される社会復帰調整官が担います。
定期的に面接を行って,医療の継続及び生活状況を把握したうえで,適切な支援を行います。
それでは解説です。
1 Eさんの生活環境の調整を保護司に委ねた。
保護司は,更生保護制度の中の役割を担っています。医療観察制度にはかかわりません。
2 Eさんの精神保健観察中に「守るべき事項」を決定した。
精神保健観察中の守るべき事項というのは,保護観察対象者すべてが守らなければならない一般遵守事項と同じように,すべての人が同じように守るものであって,個別に決定されるものではありません。
3 開催されたケア会議において,Eさんの退院許可の決定を行った。
退院許可の決定を行うのは,地方裁判所です。
4 入院によらない医療を受けているEさんに対して,「精神保健福祉法」の規定による入院を行うための調整をした。
これが正解です。医療観察法の対象者であっても,必要なら精神保健福祉法が適用されます。
5 Eさんの指定通院医療機関による医療の終了を決定した。
これも地方裁判所の役割です。