2021年9月23日木曜日

社会集団の種類

社会学における社会集団は,古典的な研究テーマです。

 

そのため,さまざまな人たちがさまざまなことを提唱しています。

 

しかし,社会福祉士の国家試験で重要なのは,誰が提唱したか,ではなく,それはどのようなものか,ということを押さえることです。

 

サムナー 内集団,外集団

マートン 準拠集団

クーリー 第一次集団

 

このような覚え方をしても,国家試験では何の役にも立たないでしょう。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題18 社会集団に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会集団は,成員であることの自己認知とともに他者からの認知があり,また,成員間の相互作用が存在するなどの特徴をもっている。

2 準拠集団は,個人の態度形成や行動の準拠となる集団であり,非所属集団は含まない。

3 第一次集団は,学校,会社,組合などのように,特定の利害関心に基づいて組織された集団である。

4 インフォーマル・グループは,その内部において,短期の目的達成のためのあまり親密ではない対面的接触が多く見られる。

5 将来所属することが確実視される集団の価値や行動様式をあらかじめ学習しておくことを,一次的社会化という。

 

この問題には,人の名前は一切出ていません。

 

国家試験がどのように出題されているかを知らないで覚えるのは非効率的ですし,得点力もつきません。

 

覚え方のミスマッチは怖いです。

 

この問題は,答えがすぐわからないタイプの問題です。

 

つまり,ほかの選択肢を適切に消去することによってのみ,答えが見つかるというタイプの問題です。

 

そのため,一つでも消去できない選択肢があると正解するのはかなり困難です。

 

それでは解説です。

 

1 社会集団は,成員であることの自己認知とともに他者からの認知があり,また,成員間の相互作用が存在するなどの特徴をもっている。

 

これが正解です。

 

社会集団の特質について,ドーンと出題されています。

これを正解だとすぐ思える人は少ないでしょう。

 

答えがわからない時は,冷静に△をつけて,次の選択肢に進みます。

勉強した人なら,ほかの選択肢は消去できるので,結果的にこの選択肢が残ります。

 

2 準拠集団は,個人の態度形成や行動の準拠となる集団であり,非所属集団は含まない。

 

社会集団のうち,今までの国家試験で最も出題回数が多いのは,準拠集団です。

一問丸ごと準拠集団が出題されたこともあります。

 


13回・問題53 準拠集団とは,自分の態度や判断の形成に影響を与える集団のことである。準拠集団に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

1 現在は所属していない団体や組織であっても,将来所属したいと思っている集団等は準拠集団になり得る。

2 家族,友人,知人などの身近な所属集団は,人の価値観や態度に大きな影響を与えるが,準拠集団とはいえない。

3 現在所属している団体が準拠集団なので,将来,その集団に所属したいと思っている団体や組織などは,準拠集団とはいえない。

4 過去に所属したことがあるが,現在は所属していない団体や組織は,準拠集団とはいえない。

5 準拠集団は,将来に向けた態度や判断に影響を与えるだけで,現状に対する不満や剥奪感の形成とは無関係である。


 

この問題は,すごいと思いませんか?

 

準拠集団の意味を設問の中に含んでおり,そこから答えを考えよ,というものです。

 

ここにあるように,準拠集団とは,自分の態度や判断の形成に影響を与える集団のことです。

単純にそれだけのことです。

 

13回の問題の答えは,選択肢1です。

 

1 現在は所属していない団体や組織であっても,将来所属したいと思っている集団等は準拠集団になり得る。

 

ということで,第22回の選択肢2は誤りです。準拠集団は自分に影響を与える集団であり,自分が所属している(あるいは過去に所属していた,将来所属する可能性がある)ことなどは関係ありません。

 

3 第一次集団は,学校,会社,組合などのように,特定の利害関心に基づいて組織された集団である。

 

第一次集団は,対面的な関係の集団です。マッキーバーに重ねると「コミュニティ」に近い概念です。

 

学校,会社,組合などのように,特定の利害関心に基づいて組織された集団は,第二次集団といいます。

 

マッキーバーに重ね合わせると「アソシエーション」に近い概念です。

 

マッキーバーについて,少し補足すると,家族は,コミュニティではなく,アソシエーションに分類されることは覚えておきたいです。

 

4 インフォーマル・グループは,その内部において,短期の目的達成のためのあまり親密ではない対面的接触が多く見られる。

 

インフォーマル・グループは,非公式的グループです。

むしろ親密です。

 

5 将来所属することが確実視される集団の価値や行動様式をあらかじめ学習しておくことを,一次的社会化という。

 

社会化とは,社会に対応するために社会のルールなどを内面化することをいいます。

 

一次的社会化は,人生最初の社会化の段階です。小さな子どものときに社会のルールを学ぶ過程です。

 

二次的社会化は,学校などで学ぶ社会のルールを学ぶ過程です。

 

予期的社会化は,社会に出る最終的な準備の段階です。将来は医師になりたい,アイドルになりたい,教師になりたい,という将来像によって,学ぶべき内容が異なります。

 

ということで,将来所属することが確実視される集団の価値や行動様式をあらかじめ学習しておくことは,予期的社会化に含まれるでしょう。

 

<今日のおまけ>

 

今日の問題では,「社会化」は,人が社会のルールを学び,社会に適応することの意味で使われています。

 

別な意味での「社会化」もあります。

 

あるものが社会全体の問題や社会資源などになるといった意味合いのものです。

 

この意味で使う場合の逆の意味は「個人化」ということになります。

 

最もよく知られたものには,介護保険制度が導入された目的の一つである「介護の社会化」です。

 

介護は,長い間,家族が担い手でした。それを社会サービスとして社会化したのです。

 

かつて使われた言葉には「施設の社会化」というのもあります。

 

これは,入所施設は施設で完結していたことに由来します。現在は,ショートステイなど地域の社会資源として活用されています。これが「施設の社会化」です。

 

どちらも今となっては古臭い使い方です。

次回,社会化を詳しく学びます。

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