更生保護制度は,新しいカリキュラムでは「刑事司法と福祉」という科目になりました。
国家試験では,第37回から登場します。
これまでにはない内容として,以下の部分があります。
②刑事司法 |
1 刑法 |
・刑法の基本原理 ・犯罪の成立要件と責任能力 ・刑罰 |
2 刑事事件の手続き、処遇 |
・刑事手続 ・刑事施設内での処遇 |
今までにない刑事施設内での処遇が含まれます。
それに対して,更生保護制度は,社会内処遇です。
更生保護法
(目的) 第一条 この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。 |
赤字で示したところが「社会内処遇」です。
更生保護制度の中心は,社会内処遇である「保護観察制度」です。
保護観察官と保護司が,指導監督と補導援護という方法で保護観察を行います。
すべての保護観察対象者は,一般遵守事項を守らなければなりません。
必要な場合は,特別遵守事項が付されます。
このように社会内で生活しながら更生を図っていきます。
それでは今日の問題です。
第30回・問題147 更生保護制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 更生保護制度を基礎づけている法律は,更生保護法である。
2 更生保護制度は,刑事政策における施設内処遇を担っている。
3 更生保護の対象者は,保護観察に付されている者に限る。
4 更生保護に関する事務は,家庭裁判所が所掌している。
5 保護観察所は,更生保護を実施するための第一線の機関である。
社会福祉士の国家試験では,更生保護制度は最後の科目です。
午前中から試験が始まり,4時間近くが経過した最後にこの問題を解くことになります。
疲れ切って,頭は正常に動かなくなっていることでしょう。
「早く終わりたい」という気持ちが頭の中でいっぱいになっていることでしょう。
落ち着いて問題を読むとそれほど難しい問題は出題されていないのですが,それができないのが国家試験の怖いところです。
それでは解説です。
1 更生保護制度を基礎づけている法律は,更生保護法である。
これが1つめの正解です。
更生保護法は,犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法を統合して,2008年(平成20年)に施行された比較的新しい法制度です。
2 更生保護制度は,刑事政策における施設内処遇を担っている。
更生保護制度は「社会内処遇」です。
これまでに何度も何度も出題されています。
3 更生保護の対象者は,保護観察に付されている者に限る。
保護観察が更生保護制度の中心ですが,社会に出てから困ることのないように刑事施設にいる時から生活環境の調整を行います。
4 更生保護に関する事務は,家庭裁判所が所掌している。
更生保護に関する事務を所掌しているのは
・中央更生保護審査会
・地方更生保護委員会
・保護観察所
です。
家庭裁判所が更生保護制度に関連するのは,少年に関する審判です。
5 保護観察所は,更生保護を実施するための第一線の機関である。
これがもう1つの正解です。
保護観察所が保護観察を実施しています。
現在,保護観察所は,医療観察法の精神保健観察も担っています。医療観察法は別の機会に詳しく紹介したいと思います。