第37回の国家試験から新しいカリキュラムによって実施されます。
現時点(2021年9月)では,第22回から実施されている平成19年度改正の旧カリキュラムの国家試験は,残り3回ということになります。
できるだけその間に合格したいものです。
「現代社会と福祉」という科目は「社会福祉の原理と政策」という科目に生まれ変わります。
「社会福祉の原理と政策」の科目の概要
内容をザーッとみる限りでは,以前の「社会福祉原論」に近いような感じです。
ある程度難しい内容の出題が予測されるでしょう。
今日の問題のような出題です。
第22回・問題22 福祉制度及び福祉政策に関連する諸概念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障制度審議会は,「1950年の勧告」で,社会保障制度とは,疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講ずることであると規定した。
2 社会保障制度審議会は,「1950年の勧告」で,社会福祉を,公的年金を受給している者,身体障害者,児童その他援護育成を要する者を対象として,必要な生活指導,更生補導その他援護育成を行うことと規定した。
3 社会保障制度審議会は,「1995年の勧告」において,「1950年の勧告」当時の社会保障の理念は最低限度の生活の保障であったが,現在では広く国民に健やかで安心できる生活を保障することが社会保障の基本的理念であるとした。
4 イギリスにおけるソーシャルポリシー(社会政策)は,所得保障,医療保障及び教育保障から構成されている。これに対してドイツを中心に発達した社会政策は当初,教育・就業上の事故を対象とする社会保険を内容とするものであった。
5 ティトマス(Titmuss,R.)の「福祉の社会的分業」の考え方によれば,福祉制度,財政福祉,社会福祉,市民福祉及び企業福祉の4つに分けられ,第二次世界大戦後は社会福祉から市民福祉へと変化しつつあるとされた。
(注)1 「1950年の勧告」とは,「社会保障制度に関する勧告」のことである。
2 「1995年の勧告」とは,「社会保障体制の再構築に関する勧告―安心して暮せる21世紀の社会を目指して―」のことである。
この問題でも出題されように一般的には「制度・政策」というような言い方をします。
しかし,本来は,「政策」が先にあって,それが具現化されるものが「制度」です。
「政策・制度」では,ゴロが良くないので「制度・政策」と表現するのでしょう。
福祉政策は,どのように制度を設計するのか,の設計図です。
福祉政策のもとになるのが,福祉哲学でしょう。
こういったことを学ぶのが,令和元年改正のカリキュラムだということになるでしょう。
国家試験の問題数がどうなるのかはわかりませんが,勉強せずとも正解できるような現代社会の問題を切り取ったような出題は少なくなるのではないかと思います。
そういった意味で,覚悟が必要だと思うのです。
それでは解説です。
1 社会保障制度審議会は,「1950年の勧告」で,社会保障制度とは,疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講ずることであると規定した。
50年勧告は,社会保障制度の範囲とその方向性を示したものです。
社会保障制度の範囲(50年勧告)
社会保障制度とは,疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子その他困窮の原因に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生及び社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。 |
具体的には
・社会保険
・公的扶助
・公衆衛生
・社会福祉
の4つを示しています。
問題文には,公衆衛生と社会福祉が抜け落ちています。
これをみて「あれっ」と思った人もいるでしょう。
「狭義の社会保障は,5つではなかったのか」と思う人はすごいです。
現在は,上記の4つ「老人保健」を加えて5つになっていますが,この当時は人生50年の時代です。老人保健を考えなければならないほど長生きする時代ではなかったのです。
2 社会保障制度審議会は,「1950年の勧告」で,社会福祉を,公的年金を受給している者,身体障害者,児童その他援護育成を要する者を対象として,必要な生活指導,更生補導その他援護育成を行うことと規定した。
50年勧告では,社会福祉を定義しています。
社会福祉の定義(50年勧告)
社会福祉とは,国家扶助の適用をうけている者,身体障害者,児童,その他援護育成を要する者が,自立してその能力を発揮できるよう,必要な生活指導,更生補導,その他の援護育成を行うことをいうのである。 |
日本の社会保障制度を3つに分けると以下のようになります。
・社会保険制度
・社会福祉制度
・生活保護制度
問題の「公的年金を受給している者」は,社会保険制度の対象です。
3 社会保障制度審議会は,「1995年の勧告」において,「1950年の勧告」当時の社会保障の理念は最低限度の生活の保障であったが,現在では広く国民に健やかで安心できる生活を保障することが社会保障の基本的理念であるとした。
これが正解です。
95年勧告は,21世紀に向けた新しい時代の社会保障制度のあり方を示したものです。
その中には,介護保険の創設が提言されています。
4 イギリスにおけるソーシャルポリシー(社会政策)は,所得保障,医療保障及び教育保障から構成されている。これに対してドイツを中心に発達した社会政策は当初,教育・就業上の事故を対象とする社会保険を内容とするものであった。
社会保険はドイツが発祥ですが,最初は疾病保険(医療保険),労災保険,年金保険から始まりました。
イギリスの社会保障は,所得保障,医療保障及び教育保障もありますが,これだけにとどまりません。
5 ティトマス(Titmuss,R.)の「福祉の社会的分業」の考え方によれば,福祉制度,財政福祉,社会福祉,市民福祉及び企業福祉の4つに分けられ,第二次世界大戦後は社会福祉から市民福祉へと変化しつつあるとされた。
ティトマスは,財政福祉,社会福祉,企業福祉の3つがあると述べています。
これを知らないとしても,市民福祉,つまりボランタリーなものが中心になるということは考えにくいと言えるでしょう。