精神疾患の診断基準には,世界保健機関(WHO)によるICDとアメリカ精神医学会によるDSMがあります。
社会福祉士の出題基準では,このうち,DSMが示されています。
DCMは,現在,第5版である「DSM-5」が使われています。
ICDは,現在,第11版である「ICD-11」が出ていますが,現時点(2021年9月)ではまだ日本語訳が出ていません。
ICDはもともと出題基準に示されていませんし,最新版の日本語訳が出ていないということもあり,国家試験では,DSM-5に絞って勉強するだけでよいと言えます。
さて,今日のテーマは,「DSM-ⅣからDSM-5への変更」です。
DSM-Ⅳでは多軸診断が取れ入れられていましたが,DSM-5では,多軸診断が廃止されて,多元的診断(ディメンション診断)が採用されました。
DSM-Ⅳで採用されていた多軸診断は,5つの軸(Ⅰ軸からⅤ軸)から診断するものでした。
DSM-5の多元的診断とは,重症度をパーセントで示すものです。
多軸診断では重症度の低いものは見えてきませんでしたが,多元的診断では見えるようになります。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題7 DSM-Ⅳ(精神疾患の診断・統計マニュアル第4版)に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 世界保健機関(WHO)によって作成された。
2 Ⅰ軸からⅥ軸までの多軸診断を行う。
3 Ⅴ軸では心理テストの所見を記載する。
4 大うつ病エピソードの診断には,「抑うつ気分」あるいは「興味または喜びの喪失」が重要視されている。
5 統合失調症と診断するには,障害の持続的な徴候が,少なくとも2週間存在することが必要である。
DSM-Ⅳの内容は,もう出題されないと思いますが,DSM-5との違いを知る面では必要です。
それでは,解説です。
1 世界保健機関(WHO)によって作成された。
世界保健機関(WHO)によって作成されたのは,ICD(国際疾病分類)です。
DSMは,アメリカ精神医学会が作成したものです。
2 Ⅰ軸からⅥ軸までの多軸診断を行う。
DSM-Ⅳでは,多軸診断を採用していたのは正しいですが,5軸なので,Ⅰ軸からⅤ軸です。
3 Ⅴ軸では心理テストの所見を記載する。
Ⅴ軸に記載されるのは,心理的・社会的・職業的機能の全体的な評定(GAF)です。
心理職が行う心理テストを診断の参考にすることはあっても,それをもとに診断することはありません。
なぜなら心理テストは,「こういった可能性があるかも」ということを示すものだからです。
また,心理テストには種類がありすぎます。
4 大うつ病エピソードの診断には,「抑うつ気分」あるいは「興味または喜びの喪失」が重要視されている。
これが正解です。
大うつ病は,DSM-5では「うつ病/大うつ病性障害」に変更されていますが,診断基準は基本的に同じです。
1.抑うつ気分 2.興味または喜びの喪失 3.食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加 4.不眠あるいは睡眠過多 5.精神運動性の焦燥または制止(沈滞) 6.易疲労感または気力の減退 7.無価値感または過剰(不適切)な罪責感 8.思考力や集中力の減退または決断困難 9.死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図 |
このうち,重視されるのは,以下の2つです。
1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失
DSMでは,医師によって診断に違いが出ないように,このように明確な診断基準が示されています。
この診断基準を操作的診断基準といい,この基準を使って診断することを「操作的診断」といいます。
5 統合失調症と診断するには,障害の持続的な徴候が,少なくとも2週間存在することが必要である。
統合失調症の診断基準は,障害の持続的な徴候が,少なくとも6か月存在することが必要です。
<今日の一言>
共通科目は,精神保健福祉士と社会福祉士の両資格で出題されるので,共通科目と呼ばれます。
そのため,精神疾患は,とても重要です。
覚えるポイントは,DSM,主な疾患です。
主な疾患のうち,絶対に覚えておかなければならないのは,統合失調症,うつ病。双極性障害です。
なじみがないとは言わずに,必ず押さえておかなければならない疾患です。