地位とは,社会学的には,集団の中で置かれている立場のことをいいます。
役割とは,地位に伴う期待です。
ある地位にいる人は,その地位に合った役割を担います。
役割は,誰かから教えられることもあるかもしれませんが,多くの場合,生まれ育つ中で身につけていきます。これを「役割取得」といいます。
それでは今日の問題です。
第22回・問題21 地位―役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会的地位の中でも世代から世代へと継承されるような地位を,獲得的地位という。
2 いったん就いた社会的地位が変わることがないことを,地位不変の法則という。
3 同じ社会の中で,人々が他者の役割期待を察知できるのは,共通の社会観範を内面化しているためである。
4 一つの社会的地位には,一つの対の役割が対応し,教師という社会的地位は,生徒に対する役割と対になっており,保護者や校長に対する役割を含まない。
5 伝統的社会でも近代的社会でも,業績主義的地位が重視され,属性主義的地位は軽視されてきた。
面白い問題です。
これももしかすると,前回紹介したタクソノミーⅡ型(設問で与えられた情報を理解・解釈してその結果に基づいて解答する問題)の問題かもしれません。
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/09/blog-post_25.html
それでは,解説です。
1 社会的地位の中でも世代から世代へと継承されるような地位を,獲得的地位という。
獲得的地位とは,自分の力で獲得した地位のことです。
世代から世代へと継承されるような地位は,生得的地位といいます。
2 いったん就いた社会的地位が変わることがないことを,地位不変の法則という。
いったん就いた社会的地位は,変わることがないということはありません。
絶対的権力をもって地位を築いたとしても,革命が起きれば失脚します。
そんな過激なことではなくても,家族の中での妻や夫といった地位も伴侶を失えば,役割は変わります。
それでは「地位不変の法則」とは何でしょうか?
実は,こんな用語はありません。近年は,このような存在しない用語を出題する言葉遊びのようなものを出題することはなくなりました。
意味がない出題は避けるようになったのではないかと思います。
ただし,存在する用語の説明をでたらめなものにして出題することはよくあります。
3 同じ社会の中で,人々が他者の役割期待を察知できるのは,共通の社会観範を内面化しているためである。
これが正解です。
役割期待とは,地位に対する人々の期待です。
社会規範とは,社会の中のルールのことです。法や規則なども社会規範に含まれますが,社会規範はそういったものだけではなく,社会の中で自然と作られていくものです。
「言わなくてもわかる」というのは,社会規範を共有しているためです。社会規範を共有していないと「言わなければわからない」ということになります。
世代が違う人や外国人労働者などは,同じ社会規範を共有していないので,「言わなくてもわかる」といった甘い期待は許されません。
4 一つの社会的地位には,一つの対の役割が対応し,教師という社会的地位は,生徒に対する役割と対になっており,保護者や校長に対する役割を含まない。
地位に対する役割は,いくつもあるのが一般的です。
5 伝統的社会でも近代的社会でも,業績主義的地位が重視され,属性主義的地位は軽視されてきた。
業績主義とは,実力によって地位が変わることです。
属性主義とは,生まれたその地位を引き継ぐことです。
伝統的社会では「属性主義的」,近代的社会では「業績主義的」なものを重視する傾向にあります。
日本の江戸時代をイメージするとわかりやすいでしょう。
家柄によって,仕事や地位が決まります。