社会福祉士が心理療法を行うことはありませんが,国家試験に必ず心理療法が出題されているのは,それなりの意味があるはずです。
傾向が急に変わるということはないと思いますので,確実に押さえたいものです。
それでは今日の問題です。
第22回・問題14 個々の心理療法の定義や特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 箱庭療法には,変容を必要とする行動を持続させる要因を分析する段階,技法を用いて行動の変容を進めていく段階,終結とフォローアップの段階がある。
2 エンカウンターグループは,心理的な問題をもたない人々に対しても,さらなる心理的成長を目指すグループアプローチとして用いられる。
3 ブリーフセラピーは,遊具などを利用しながら遊びを主な手段とする心理療法で,遊び自体が自己治癒的な意味をもっていることに治療的価値が認められている。
4 社会生活技能訓練(SST)は,障害についての情報の提供といった教育的側面と,障害の体験様式についての情緒的サポートから構成されている。
5 内観療法では,食事とトイレ以外は横になっているが臥褥期,軽い作業を行う時期,手芸などを行う作業期,外出も行う生活訓練期を経る。
勉強不足の人は,正解できない問題です。
しかしポイントを押さえていけば,それほど難しくないかもしれません。
押さえるべきポイントがあります。
それでは,解説です。
1 箱庭療法には,変容を必要とする行動を持続させる要因を分析する段階,技法を用いて行動の変容を進めていく段階,終結とフォローアップの段階がある。
箱庭療法は,箱庭という限定された空間の中に,心の奥底にあるものが表現されると考えるものです。
作られた箱庭を被検者が解釈します。
行動変容を目指すのは,学習理論を取り入れている認知行動療法です。
2 エンカウンターグループは,心理的な問題をもたない人々に対しても,さらなる心理的成長を目指すグループアプローチとして用いられる。
これが正解です。
エンカウンターグループを知らない人も多いかもしれません。
エンカウンターグループのエンカウンターとは,「出会い」という意味です。小規模のグループメンバーが出会い,心の成長などを目指すものです。
一般企業の教育にも人間関係能力を向上させるプログラムとして取り入れられています。
3 ブリーフセラピーは,遊具などを利用しながら遊びを主な手段とする心理療法で,遊び自体が自己治癒的な意味をもっていることに治療的価値が認められている。
ブリーフセラピーのブリーフとは,「短期」という意味です。ブリーフセラピーは,日本語では短期療法と訳されます。
ブリーフセラピーを取り入れたものが問題志向アプローチです。
遊びを使った心理療法は,遊戯療法です。心の奥底にあるものが遊びの中に表現されると考えます。
4 社会生活技能訓練(SST)は,障害についての情報の提供といった教育的側面と,障害の体験様式についての情緒的サポートから構成されている。
社会生活技能訓練(SST)は,社会的リハビリテーションの一つとして,社会で必要なコミュニケーション能力などを身につける訓練です。
ほかのメンバーのやり方を見て,学んでいきます。
障害についての情報の提供といった教育的側面と,障害の体験様式についての情緒的サポートから構成されている,というのは何のことを述べているのかはよくわかりませんが,SSTとはまったく異なります。
5 内観療法では,食事とトイレ以外は横になっているが臥褥期,軽い作業を行う時期,手芸などを行う作業期,外出も行う生活訓練期を経る。
社会福祉士の国家試験で出題される,内観療法,森田療法,動作療法の3つが日本で生まれたものです。
内観療法と森田療法の区別がつかない人もいるでしょう。
内観療法は,今までの人生の中で,身近な人にしてもらったことなどを年齢順に振り返るものです。アルコール依存などによって社会生活が破綻している人の生活改善を目指すものです。
森田療法は,神経症の治療に用いられるものです。ここで出題されている絶対臥褥期,軽作業期,作業期,生活訓練期を経て,不安があるのを「あるがまま」に受け止められるようにしていきます。
<今日の一言>
心理療法の種類は数多くあり,国家試験でも多くの受類が出題されています。
国家試験では必ず出題されているので,なじみがないなどと思うことなく,確実に押さえておきたいです。