2021年9月29日水曜日

厚生省の設置

 現在の厚生労働省の成り立ちです。

 

1917(大正6)年

内務省に救護課設置。

1919(大正8)年

救護課を社会課に改称。

1920(大正9)年

社会局に昇格。

1938(昭和13)年

内務省から独立して,厚生省を設置。

 

救護課を設置したところからスタートします。

 

救護課は,軍事救護法(1917年)の事務を取り扱うために設置したものです。救護法ではありません。軍事救護法です。

 

社会課に改称したきっかけは,米騒動です。

 

内務省から独立したのは,日中戦争に大きくかかわります。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題24 20世紀前半における福祉制度の発達過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 スウェーデンでは自由民主党政権が誕生(1920年)し,同政権によって同国の自由主義的福祉政策の基本的な枠組みが形成されて福祉国家の基礎となった。

2 アメリカではニューディールの一環として,公的扶助,失業保険,医療保険,福祉サービスの4本柱を内容とする社会保障法(1935年)が制定された。

3 ドイツでは第二次世界大戦後の基本法において,ようやくすべての国民に「人間としての尊厳を有する生活」を保障する生存権が確定した。

4 日本では工場労働者の最低就業年齢や最長労働時間など労働者の保護を定めた工場法が,第一次世界大戦後に初めて制定された。

5 日本では1938年に厚生省が設置され,また,私設社会事業への届出義務,改善命令,監督・指示,寄付金募集,補助等を定めた社会事業法が制定されている。

 

下手な選択肢が混じった問題です。

 

そのため,落ち着いて解けば,正解できる確率が上がります。

 

先に言えば「ようやく」と「初めて」です。

 

それでは,解説です。

 

1 スウェーデンでは自由民主党政権が誕生(1920年)し,同政権によって同国の自由主義的福祉政策の基本的な枠組みが形成されて福祉国家の基礎となった。

 

スウェーデンの政権を正しく知っている人は,そんなに多くはないでしょう。

これを正解にするような問題を作るとしたら,その試験委員はバランスを欠いています。

 

つまりこういったタイプの選択肢は正解にはなりにくいということです。

 

この問題を見たとき,「ああ,なるほどね」と思ったことがあります。

 

ちゃんと読めば,正解できるように問題は作られるのだということです。

 

自由主義と福祉国家は,イデオロギーが異なります。

 

ここで「ああ,なるほどね」と思った人はかなり理解が進んでいると言えます。

 

イギリスのサッチャー元首相は,保守党です。自由民主党のような党名をつける政党は,保守寄りの政策を取ります。

 

そういったことが頭に浮かべば,消去できることでしょう。

 

スウェーデンが長く政権を持ったのは,労働者よりの政党です。

 

2 アメリカではニューディールの一環として,公的扶助,失業保険,医療保険,福祉サービスの4本柱を内容とする社会保障法(1935年)が制定された。

 

この問題が出題された時は,難しいと思った人が多かったと思います。

 

しかし,よくよく読めば「医療保険」がおかしいと思えるはずです。アメリカは,公的な医療保障が発達していないのが特徴の国です。

 

社会保障法には,医療保険は含まれていません。

 

社会保障制度の中でも医療保障は,その国の特徴が出やすいものです。

 

これから各国の社会保障を勉強する際には,医療保障について整理しておくと良いと思います。

 

3 ドイツでは第二次世界大戦後の基本法において,ようやくすべての国民に「人間としての尊厳を有する生活」を保障する生存権が確定した。

 

これが「ようやく」です。

 

もしこの選択肢が正しければ,「ようやく」はなくても文章は成り立ちます。下手だと思いませんか。

 

生存権は,1919年のワイマール憲法で規定されています。

 

これが世界で初めての生存権を規定したものです。

 

4 日本では工場労働者の最低就業年齢や最長労働時間など労働者の保護を定めた工場法が,第一次世界大戦後に初めて制定された。

 

これが「初めて」です。

 

もしこの選択肢が正しければ,「初めて」がなくても文章は成り立ちます。実に下手です。

 

工場法が制定されたのは,第一次世界大戦より前である1911年です。

 

工場法は,戦後の労働基準法が制定されるまで存続しました。

 

5 日本では1938年に厚生省が設置され,また,私設社会事業への届出義務,改善命令,監督・指示,寄付金募集,補助等を定めた社会事業法が制定されている。

 

これが正解です。1938(昭和13)年は,これらのほかに,国民健康保険法が成立した年でもあります。

 

社会事業法は,それまで民間の自発的な活動だった社会事業に国の関与を認めたものでもありますが,同時に補助も行うものでした。

 

戦後,日本国憲法の規定によって,社会事業団体への補助ができなくなりました。そのために,新しく作られたのが,社会福祉事業法(現・社会福祉法)によって設立された社会福祉法人です。

最新の記事

ノーマライゼーションの国家試験問題

 今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。 前説なしで,今日の問題です。 第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。 2...

過去一週間でよく読まれている記事